インテリ知識人になるのに必要な肩書について考えてみよう

 早速だが、知識人として認められるのに必要な肩書は何だろうか。ここでいう知識人とはテレビのコメンテーターで読んでもらえるような人間である。人間は肩書が好きなので、やっぱり肩書があると自分の話を人に聞いてもらいやすい。例えば高学歴難民が注目を集めるのは高学歴だからだろう。もし普通の「難民」だったら興味すら持たれれないはずだ。

 今回は知識人としてそれなりに説得力をもたせることができる肩書について論じてみたいと思う。

知識人としての権威付けに使える肩書

大学教授・およびそれに準ずるアカデミック系の地位

 これが最も効果大だろう。「〇〇に詳しいナントカさん」といってテレビに出るのは大体がこのカテゴリの人間だ。大学教授は会社員と違って職業上の肩書を使って自由に発信が可能なので、知識人には持ってこいだ。

 ネット上を見ても、アカポスに就いている人間は自由に発信をしているし、それなりの説得力を持っていることが多い。もちろん知識が深いのは間違いないが、専門外の分野についても意見を求められることが多い。これは「知識人」という肩書が属人的なものだからだろう。単なる専門家というコマではなく、その人自身に尊敬が集まっているのである。

 なお、准教授や講師と言った肩書でもそこまで障壁は無さそうだ。それよりも話がうまいかどうかの方が重要だ。

医師・弁護士

 これまた強い肩書である。医師か弁護士を持っていればそれなりに自分の意見に説得力を持たせられる。健康番組に出ている医師とか、ワイドショーに出ている弁護士は数えきれない。橋下徹のようにタレント色が強い人物もいるが、多くはもう少し穏当である。

 このような芸当が可能なのは医師と弁護士にそれなりの権威があり、かつ独立自営が可能だからだ。テレビの健康番組で勤務医を見ることは殆どない。医局に入っていたらそんな芸当は不可能だと思う。

 本を書くときにも医師や弁護士といった肩書は大いに使える。やはり高度専門職として彼らの知識には需要があるし、社会的地位も抜群だ。やっている仕事がわかりやすいという強みもある。

東大

 これも結構使える肩書である。日本人は本当に東大が好きだ。林修の権威付けも東大の肩書にかなり依存しているように思える。なお、学部は関係ない。東大王なんて番組も存在するくらいだ。山口真由のように弁護士を廃業している人間でも、東大の肩書があるとそれなりに言っていることに説得力がある。ホリエモンはもはや社長では無くなったが、東大の肩書は威力を発揮している。三浦瑠麗も社会的な肩書は怪しげだが、知識人になれたのは東大のお陰だろう。

 個人的な感想だが、東大の肩書が威力を発揮するのは副業や私生活ではないかと考えている。普通の会社員の仕事の場合はわざわざ大学名を名乗っても嫌われるだけだし、労働市場でも東大の肩書が使えるのは第二新卒くらいまでだ。しかし、それ以外の場面では東大の肩書は大いに使える。100歳になっても東大は東大であり、一生舐められないで済む。

 なお、パックンはハーバード大卒なので、東大と同じカテゴリに入っていると思う。

起業家

 これまた使える肩書である。会社の規模にもそこまで寄らないようだ。日本人は社長という肩書も好きだ。起業して成功した人物には大抵の人間がリスペクトを持っているし、本を書いても権威付けに使えることが多い。実のところ、よくわからんコンサルタントも多いが。

 この肩書を大いに利用しているのはひろゆきだろうか。他にもアベマなどにはこの手の起業家が沢山登場する。岡田斗司夫もこのカテゴリに入れて問題ないかもしれない。

国会議員・知事

 これは強力な肩書である。起業家の上位互換と言っても良い。東国原元知事は典型例で、芸人という扱いはされなくなった。橋下徹も最近は元政治家枠のようだ。希少性という観点では後述するメダリストを除けば非常に強い。杉村太蔵はこの肩書一本で生き抜いている。

単独では弱い肩書

ジャーナリスト・報道関係・出版関係

 テレビではしばしば見かける肩書であり、言論活動も盛んに行っている人々がジャーナリストだ。彼らは情報発信こそが仕事なので、知識人として振る舞おうとするのは当然だ。

 しかしジャーナリストは名乗ろうと思えば誰でも名乗れるし、社会的な権威付けもそれほど強くない。従って、ジャーナリストとして知識人ムーブをしたい場合は激しい競争を勝ち抜かないといけない。テレビに出てくるジャーナリストは何らかの形で大学のポストを手に入れた人間が多い。池上彰は典型例である。絶妙に肩書がないのは、一応早稲田を出ているが、田原総一朗だろうか。

作家・映画監督など文芸系

 ジャーナリストと性質が似ている。典型的な知識人の職業ではあるが、名乗るのに特に資格が必要なわけではないので、競争が激しい。芥川賞などを取ると非常に強いと思う。文化人の場合、東大に限る必要はないが、それなりに学歴が高いことが望ましい。司馬遼太郎や石原慎太郎辺りは典型例だろうか。ジャーナリストと同様にやや自由業寄りの印象となる。絶対数として学者に次いで多い。

一橋・東工大・慶応・早稲田など

 東大以外の大学は肩書としての強さが大きく劣る。東大は無条件で注目を集めることができるが、早慶や一橋では単独では無理だ。これらの一流大学の出身者が知識人として振る舞う時は必ず他に補助的な肩書が付いている。先述のアカポスや弁護士はもちろんのこと、村上春樹のように作家として成功したとか、中田敦彦のようにお笑い芸人として売れているなど、別の要素と組み合わせる必要がある。若い人だと元乃木坂の山崎玲奈もいい例だ。

効果があるのか無いのか微妙な肩書

官僚

 官僚の仕事は文系総合職であり、仕事自体にそこまでの権威はない。実のところ、官僚の権威の殆どは東大のお陰なのではないかと考えている。コメンテーターやコラムニストなどで活躍する元官僚は多いが、大体が大学のポストを手に入れている。そうでない人もいるが、彼らの権威性はやはり東大出身ではないかと思う。国家公務員総合職に東大生が行かなくなったら、官僚に医者や弁護士のような権威性は無くなるのではないか。

 大変微妙なカテゴリなのは同志社大⇒外務専門官⇒作家の佐藤優である。全部微妙だが、知識人としては問題なく通用している。

公認会計士

 公認会計士は資格の強さで言ったら医師・弁護士に引けを取らないが、実際に知識人として名の知られている公認会計士を見たことがない。仕事内容がブルシットジョブに寄っているからなのか。企業関係の案件が多いからなのか。このカテゴリで唯一有名なのは勝間和代だが、あの人は公認会計士を半年で辞めたので良くわからない。一応大学講師っぽいことをやっているので、そこのカテゴリにして良いのだろうか。

学校の先生・予備校講師

 教育関係の人間は専門家として一定の強みがあるのだが、高校教師では弱い。大学教授には勝てない。この業界の出身で知識人になった人間はゼロではないが、どちらかというと「夜回り先生」のようなカリスマ教育者という扱いだろう。なお、大学のポストを得た人間は除く。予備校講師はしばしば本を出版していることもあるし、林修のような著名人もいるが、こういう人はかなりの確率で東大卒である。

五輪メダリスト等、スポーツ関係

 凄さや権威性という観点では、今まで上げたどの肩書をも上回る、日本最強の栄冠である。アマスポーツの場合は五輪金メダルが1つの分水嶺で、ここを超えると社会的な肩書としての地位が安泰となる。

 問題はスポーツが知識人と真逆の活動だと認識されていることだ。スポーツ選手には学歴が高くない人が多い。こうなると、知識人としての言説にはしばしばケチが付けられることがある。

京大

 ブランド力という観点で唯一東大に引けを取らないのは京大である。京大の場合はどこまで使えるのか微妙なところがある。宇治原や辰巳琢郎などを見ていると、インテリ知識人として使えなくも無さそうである。気になるのは玉川徹だろうか。

使えない肩書

サラリーマン

 サラリーマンは全く使えない肩書だ。部長や常務といった会社内の肩書もほぼ関心を持たれないし、一流企業の社長まで行っても効果は怪しい(起業家は除く)。副業は禁止だし、仮に可能だとしても権威性があまりない。むしろ会社の悪口だと思われる可能性のほうが高い。医者や弁護士も似たところがあるのだが、彼らは一般視聴者からすると「向こう側」の存在とされるので、バレにくい。

 もちろんサラリーマンで知識人ムーブをしている人間もいる。しかし、大体は大学のポストを手に入れたり、東大を出ていたり、他の肩書を使っている。菊間アナは弁護士になったし、池井戸潤は慶応大卒かつ作家として成功している。出口治明はどうやったのか、大学の学長になった。サラリーマンは本当に有名な人が少ないし、正直社会であまり尊敬されるカテゴリでもないようだ。

大量に持っている人

 こうした肩書を複数持っている人物がいる。米山隆一である。東大・医師・弁護士・知事・国会議員、最強の肩書男だ。彼が政治家になれたのも元をたどれば肩書のおかげかもしれない。

 ただし、沢山持っていれば良いという問題ではない。あくまで足切りをクリアしているだけだ。米山隆一の権威性は普通の知事とか国会議員とそこまで変わらないと思う。あとは能力とキャラクター勝負だ。

知識人って何だろう

 知識人とは曖昧な存在だ。職業とは言えないし、資格があるわけでもない。この領域に行くには最低条件として学識が必要だ。それだけではなく、組織社会から独立していることも重要となってくる。サラリーマンや公務員は属人性が無いし、同僚の目線もあるので、知識人になることは無理だ。この中では大学のポストは起業することなく給料がもらえるので強力なルートとなっている。ある意味で、Fラン大教授は最強の職業なんじゃないかと思う。

 

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