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武藤の頭の中を覗いてみる。 - 大人アガル犬山編 -


おはようございます。minoriです。


LUCKIISのフォトグラファー武藤健二 @luckiis_mutoh
撮影の裏側を聞いてみよう企画の第4回目がやってまいりました。

今回私が話を聞いたのは、犬山の魅力を発信するシリーズ広告「大人アガル犬山」の撮影についてです。私が言うのも何ですが、こちらのシリーズ最高なんです!犬山で過ごす時間と空気感が1枚のポスターからじんわり伝わってくる感じ…ずっと見てられます…

そこで、武藤さんはどう考えてこのビジュアルを作っているのか詳しく知りたくなったのが、今回こちらを選んだ理由です。

私も携わらせていただいている、大人アガル犬山シリーズ。
今回はこのシリーズとして最初に撮影した第一弾の2枚について当時の話を交えながら聞いていきたいと思います!


ー 大人アガル犬山シリーズの話をもらったとき、率直にどう思いましたか?

今までは、スタジオでもロケでもライトをしっかり組んでゴリゴリにやるのを求められることが多かったんだけど、元々アートワークでは”ランドスケープ”を撮っていて、それに近いものをいつかやりたいとは思ってた。そしたら犬山の話をもらって、アートワークに近い、いつもとは違うベクトルでやれるっていうのは楽しみだったかな。広告だからもちろん企画はあるんだけど、要素が少なければ少ないほど、写真は自由になれるからね。


ー 当時、武藤さんが楽しそうにしていたの私も実は感じていました…!というのも、この犬山の撮影からライカデビューでしたよね。犬山の撮影が決まる前からライカを買おうと考えてはいたんですか?

そうだね。ライカはずっと使いたいと思ってた。
今まで使わなかったのは、35*サンゴー で撮るのがけっこう苦手だったから。
*カメラ本体のセンサーサイズのこと。
でもこの撮影に関しては、35でコントロールした方が成功しやすいし、色んな色んな面から考えてもライカにした方がいいと思ったのが1個。

あとは、35で自分が求めるようなラチチュードのレンズって使ってはなかったけど、ライカの色々な写真を見て信用できると思って試してみたいと思ったのも、ライカを選んだ理由だね。


ー ライカが仲間入りする裏には色々な理由があったんですね。私の素人目ですが武藤さんにライカとても合っていると思っています!では、ぞれぞれのビジュアルについて詳しく聞いていこうと思います。



ー まずは、オープン直前のホテルインディゴ犬山有楽苑で撮影されたこちらのカットについて。このカットでのこだわりはありますか?

こだわりはない。


ー ない!!武藤さんらしいはっきりとした答えですが、もう少し詳しく聞いてもいいですか?

このカットに関しては、求められる要素が決まっていたからこだわりはないかな。バックに城が見えて、尻尾が見えて、人の顔もちょっと分かるアングルで…となったらカメラ位置も決まるし、ここしか置いちゃいけないと言われているようなものだね。じゃあ、そのまま地明かりで撮ればいいかと言われたら、地明かりでは撮れないから、結局照明は必要だしね。

あとは、こだわりというか全部に共通して言えることなんだけど、例えば犬山に関しては、観光客も多くてみんなが写真を撮ったりする中で、犬山のポスターってここで撮ってるんだ、となったとき同じように撮ろうと思っても絶対一緒にはならない。絶対だと言い過ぎかもしれないけど、撮れる可能性は低い。誰でも撮れる場所だけど、そうじゃないものを表現して欲しいというところを求められてる。


ホテルインディゴでの撮影中の一コマ


ー その求められている部分の表現をできるかがフォトグラファーの力ですね。室内に3、4灯ライトを組んでましたが、これは全部バーの雰囲気を作るためのライトですか?

そう、バーの雰囲気。
普通に裸眼で見て、あ、なんかいい空になってきたね、城もライトアップされてきたね、じゃあ撮ろうかとそのまま撮ったら中は暗いとか明るいとかそう言うことが起きる。目に見えているものとカメラで映るものは当然違うから、人物が立ちつつ、バーの雰囲気も分かって、城も見えてくるように光のバランスを整えていく。


ー 武藤さんずっと空を見ていたじゃないですか。あれは、太陽が落ちるタイミングを見ていたんですか?

空の感じ。濃度だね。
室内は照明でコントロールして、あとはその室内の設定に対しての空の濃度が持っていきたい明るさになるタイミングを見てた。明るすぎてもダメだし、シャッターを切るタイミングはあの現場では気をつけなきゃいけない点だったね。


ー 実際、この空の濃度だ、と思ってシャッターを切れる時間はどのくらいあるんですか?

全然短い。5分、10分くらい。
そのタイミングにピークを持っていきたいってなると、調整や確認のことを考えて、じゃあ何分前に始めた方がいいかとか、何分でどれくらい太陽が下がっていくから今のタイミングで撮っておいた方が1番いい時間に撮れるんじゃないかとかは気にしてた。日没のタイミングで撮るっていうのは、そういうところがシビアはシビアだよね。



ー 対自然の撮影は1分1秒が本当に重要ですね。では、続いては早朝にみな蔵で撮影されたこちらのカットについて。ロケハンをしたとき、武藤さんこの時間じゃないと、と言っていたじゃないですか。それはなぜあの時間だったんですか?

まず、CMとは90度抜けを変えて違うアングルにした。西向きにアングル切ると言う話をして。そうすると、西日が入るから夕方の選択肢は無くなる。じゃあ朝か昼しかない。室内から見て縁側に座っている2人の後ろ姿の抜けに古民家と中庭があることを考えると、真っ昼間に中庭に光が落ちすぎるとコントロールが効かない。そうなると、時間をコントロールしないといけない。

写真の上がり的に、どっかに強い光とか強い影とか入れたくない、全編で階調がある写真にしたいと思ってて。ってなると、屋根から太陽が上がらない位置で回ってきた光である程度の露出が取れる時間が朝の7時しかなかった。早すぎても暗すぎるし、遅いと光が入っちゃうから。そうなると7時がピークだったね。


ー あのロケハンの短時間でいろんな角度からの思考が巡らされているんですね…!このビジュアルを見たとき、すごくしっくりくるバランスだなと思ったんです。撮影のとき、襖や座布団、湯呑みなどの位置を結構細かく調整したじゃないですか。やっぱりちょっとしたズレがトータルのバランスに関わってくるんですか?

そうだね。まあ、気持ちいい位置っていうのはあるんだけど、広告になると紙面のサイズがあって、デザインがあって。そういった中で、じゃあどういう均整が取れた写真にするかっていうのが大事。均整が取れてない場合の方がいい時もあるけど。ちょっと乱暴な方がかっこいいね、面白いね、ストーリーだねってなることもある。俺はそういうのが苦手だから、なるべく均整が取れた写真にしたい。というのは、意図したリズムが狂うのはいいけど、意図としてないリズムが狂っているのはノイズだと思っていて。

じゃあ、どこまでコントロールするのか。全部がシンメトリーに入っていればいいという訳ではない。どっかにリズムは必要なんだけど、どこにリズムがあった方がかっこいいかな、気持ちいいかな、しっくりくるかなていうのを考えてる。写真で撮ってるときはすごくいいねってなっても、いざデザインに入ると写真の見え方って変わっちゃうから、デザインに入ったときにどこが気持ちいいか、襖はどこにあるといいのか、コピーはどこに入るのかとか、写真以外の色んな要素も考えなきゃいけない。


みな蔵での撮影中の一コマ


ー この大人アガル犬山シリーズの現場、どうですか?

これだけに言えることじゃないけど、綺麗に言えば基本的にみんなで作るもの。朝7時にシャッター切りたいんで、じゃあすみません、4時半集合で。俺のルールとして2、3時間前に現場入るって決めてるんで、すみません。と言ってもみんなわざわざ4時に来たいとは思ってない訳で。って俺は思っているけど、やるって決めたからそういう風にしてもらってる。

みな蔵での撮影のときは、前日に雪が降ってたから朝行けば当然雪が積もってるし、冬のビジュアルじゃないから雪積もってたら撮れないでしょってなっている中で、クライアントが率先して雪を降ろしてくれてて、これって現場を作る上ですごく重要なことだと思うんだよね。みんなで一緒にちゃんと作りたいっていう考えがあって、それをちゃんとやる人たちが集まってる。みんなが前のめりにやれてるっていうのは嬉しいよね。まあ、嬉しい反面すごいプレッシャーはかかるけど。
その時やれることをみんなで協力しあってやれてるのは、恵まれた現場だなって思う。


ー 最後に、大人アガル犬山シリーズに向けての意気込みを聞かせてください!

がんばります!


聞いたことをなるべく削りたくない…!と思って書いたら今回もなかなか長文になってしまいました。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

大人アガル犬山シリーズ、最近も新しいビジュアルが公開されたので、よかったら見てみてください。



次回の更新も楽しみに待っていただけたら嬉しいです!