6/3 消して (日記の)リライトして

日記です。2日ほどなにも書かずに過ごしました。おそらく今後もこういう風に2日か3日に一度の更新になる気がします。書くことがある時に書く感じ。
詰め込むことが大事なんじゃない。アイドルマスターシャイニーカラーズでもそう言っていました。詰め込むことよりも、夏が終わった時ムキムキになれてるかどうかが大事なんじゃないか、にちか。

にちか「……うわー、お説教で呼び止めた感じですか」

――にちか。

とりあえず今日は、メモを漁っていたら去年書いたらしい日記が見つかったので、それをリライトして載せます。最近のニュースを見てふと思い出したので。

にちか「ちょっと、それって結局サボりじゃないですかー!」

――にちか。




夢で会った君へ。


お久しぶりです。五年ぶりですか。
成人式ではお会いしませんでしたね。もっとも、顔を合わせたとて何を話すでもなかったでしょうけど。僕にもあなたにももっと仲の良かった友達がいて、僕たちはいわば、同じグループに属しているという程度の関係でしたから。しかし、だったらどうしてあんな夢を見たんでしょう。

普通、夢というものは多少なりとも嘘が混じっていたりするものです。たとえば僕はよく家族の夢を見るのですが、それに出てくる亡くなった祖父は、実際のところあんなに饒舌ではありませんでしたし、もう居ない猫も、あんなに僕に懐いていませんでした。
そういった、現実に自分の望む嘘が数滴垂らされたようなもの。それが夢というものなのだと僕は今まで考えていたのです。それなのになぜでしょう。今の僕は、今日見た君のことを嘘だとは思いたくありません。


あれは教室でした。僕が通っていた高校だったような気がします。そこに、制服を着た中学生の君がいました。色白で、眉が太く、目の下の泣きぼくろが印象的な君が。
思えば僕は、君のことが好きだったようにも、嫌いだったようにも思います。君は僕が告白した子に告白されていて、僕をからかってくるあいつと一緒にいました。君は僕の見る世界の中でいっとう良い位置にいる人間で、妬ましい人間で、憧れている人間で、なのにどうして君は、いつも困ったような顔をしていたのでしょう。
いつだったか、僕は君に八つ当たりをしたことがありますね。たしか、君の友達にからかわれた後だったと思います。内容は忘れましたが、僕はそのことがあんまり悔しくて、たまたま目についた君のペンケースを手に取ると、近くで談笑していた君の顔の前に突きつけて
「これ、きったねーから買い替えた方がいいよ」
と言いました。
僕はそれを、黒の合皮に赤くスポーツブランドのロゴが入れられたそのペンケースを、君が一年生の頃からずっと使っていることを知っていました。そして、もうボロボロになったそれがなぜ使い続けられているのかということもなんとなく察しがついていました。そのうえで君にそんなことを言ったのです。
僕は卑怯者です。やり返す相手が違うのも、これを言ったら相手が傷つくだろうということも承知していたくせに。それでも君は何も言わず、ただ困ったように笑っていました。


夢の中でもそうでした。机を合わせて話しかける僕に対して君はいつもの、目はちっとも嬉しそうじゃないのに頬だけは上がっている笑い方で応えてくれていて。
その顔を見ながら、僕は必死になって喋り続けました。もし君に心から笑ってもらえたら、認めてもらえたら、それで僕の人生はすっかり大丈夫になる気がしたから。
……なのに、夢の中でも自分の体が強ばっていることが分かっているくらい必死で、君のことを笑わせようとしたのに。なのにどうして僕は。


君に、牛宮城の話をしていたのでしょう。

「タンが2枚で3000円するって高くない!?!?しかもこんなよ!?こんな!!(指で牛タンの輪を形作る)」

嘘です。一人前2200円だそうです。夢の中で肉の値段を盛っています。

「芸能人が焼肉屋やるってどうなんかね〜。実際売れないんじゃない?名前だけ有名でもさ。焼肉屋やって成功してる芸能人見たことないもん俺」

たむけんがいます。焼肉屋以外でもいいならから揚げの天才もいます。芸能界には。


僕はもっと、もっと良い話がしたかったです。なんでもいい。「あの時はごめんなさい」でも、「君より格好いい人間になりたかった」でも。せっかく君に会えたんですから。
夢の中でも、現実の精算が出来たかもしれないのに。
もう夢に君が出てくることはないかもしれません。もしかしたら現実の大人になった君とだってそうかもしれない。
そんな貴重な機会を、宮迫の焼肉屋に奪われてしまいました。


それでも、僕達はこの現実を生きていかなければなりません。夢に憧れの人が出てきてもろくな言葉一つすらかけられないような冴えない現実を。
また失敗するんでしょう、やり直すことなんて本当はできないんでしょう。でも、それでも日々を続けていった先にしか、綺麗なものはないのだと信じています。
なんて、賢い君にお説教じみたこと言っても仕様がないのでしょうけど。
それではお元気で。本澤くん。会えて嬉しかった。
いつか一緒に焼肉でも食べましょう。

2022年3月9日

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