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無料の朝食会場

バンコクに着いたばかりの頃、ドミトリーには極貧生活王は誰か。そんなものを競うように皆が安飯を探し、安飲み物を探し、安移動方法を探し。セーブマネー生活に明け暮れていた。

ワンダフル宿。

南京虫が出る、シャワーが水、ティッシュペーパーが散らばるトイレ、良からぬものの香り。

全員が屈強な精神の持ち主、意にも介さずこんなもんでしょ。と。


そんな中で、あるアメリカ人が言う。
朝食の無料会場がある!

このアメリカ人、僕の事を日本人としてしか認識せず名前を言わなかったのが腹立つし、日本の事を一瞬ジャップと言っていたような気がする。

父だか、お爺ちゃんはベトナム戦争に参加したらしい。スキンヘッドで目つきが鋭く、少し怖い印象だった。

まぁでも、その会場がある!と言ってくれたのは嬉しかったので、気にしない事にする。

タイに何年も旅行しに来ている、ヨーダのような旅人の日本人のお方も、これは知らなかったらしい。確か62歳のお方。

宿から歩いて30分ほど。
灼熱の5月。
アメリカ人とヨーダと僕、3人で歩く。

アメリカ人の高速ネイティブ英語にほとんど付いていけない僕は相槌を適当に打ちながら着く。

インド人街の近くにある宗教施設のようだった。
一階に靴を預けるロッカーがあり、係の人に預け裸足になる。

そのままアメリカ人に案内されるがまま2階に上がる。

上がる前にナプキンを渡される。
ここでは髪を出してはいけないらしくそのナプキンを頭に巻く。あまり似合わない僕はバーベーキューに気合いの入った人になった。

アメリカ人1人、日本人2人という我々だったが周りのほとんどがインド人。

彼らはナプキンのような薄い生地ではなく、厚めの生地ターバンを巻いている。

手を洗ってからインド人が並んでいる列に我々も並ぶ。

進むと現れる。
ご飯、カレー3種、ナン、漬物、フルーツポンチ、水、チャイ。
これら好きなだけお椀に盛っていいらしい。

限界生活ランキング上位に食い込んでいた我々は、思い思いに盛り付ける。これが長年の夢だった!かのように盛り付ける。

そのままチャイ、水、両方ともを手に取り食事ゾーンへ移動する。

体育館ほどの広さのそこに胡座をかき3人競い合うように飯を食う。

その姿、誠に恥ずかしいものだったのに違いはないが生きる為だった。久しぶりに満腹というものを味合う。体にエネルギーをねじ込む。

また、そのバイキングのどれもが美味だった。
千と千尋の神隠しの冒頭のような感じで僕たち3人はこのまま豚になってしまうのではないかと思われたが、回避できたようで豚にならずに済んだ。

調べてみると、この施設はシーク教、という宗教のお寺らしい。

その人の持つ宗教、人種、そんなもの関係なく全ての人に食を施しているという。

宗教という目に見えないものの力の強さを思い知った。またこのような施設、世界各国にあるらしく日本の渋谷にもあるらしい。

全員が腹一杯になれる?

その会場には、物乞いのような人も何人かいたりした。だが大半はインドの清潔な服装をしている方々が大半だった。お金持ちのインド人という印象だった。

どこからお金が?
どうやってご飯を?
誰が作っているんだ?
毎日?
タダより怖いものはないの唯一の例外?

色々な疑問が浮かび上がり、宗教というものの強さを思い知らされる。

それからだいぶ時間が経った今だがその疑問を調べられていない。


怠惰な僕は豚になってしまうのかもしれない。


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