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色んな愛がある

優しくて、美人で頭の良い友人がいる。
15年以来の付き合いだ。
知識豊富で好奇心旺盛な彼女は話もむちゃくちゃに面白い。

ただ、彼女はとんでもなく自分に対してネガティブだ。
謙虚のレベルを突っ切っている。

そんな彼女に私は思った事を口にしてしまう。

「優しい!」
「むっちゃキレイ!」
「ほんまに頭が良い!」
「スタイル良すぎ!」

その都度、彼女は申し訳無さそうに苦笑いしている。

いくら私が賞賛しても彼女は、「いや、私なんか…」を繰り返す。

彼女の夫は有名国立大学出身のエリート。
高学歴、高所得に加えてパワハラ、モラハラももれなく付いている。

とにかく否定から入るらしい。
…嫌な奴。
私からすると正直ウンコだ。

私が彼女を賞賛したら、何故だが彼女は夫にそれを伝える。

「そんな言葉を真に受けてるとは信じられない」
「本気で自分はそれに値する人間だと思うのか?」
「君はやっぱり馬鹿だな」

そんな言葉を投げかけられた事を、わざわざ私に教えてくれる。

私は一体どう反応したら良いのか分からない。
夫婦間のこと以前に、無関係の他人の私まで何故か否定されている。
とばっちりに流れ弾だ。

長年不思議だった。
何故わざわざ否定されるのを分かっていて、夫に言うのか。

ある時、彼女はこう言った。

「褒められたり、肯定されると嬉しいけど、そういう私でいないといけないって思ってしまう。でないと嫌われると思ってしまう」

なるほど。

私はそんな素晴らしい人間じゃない。
そんな下等な私だと分かっていても、夫は私を見捨てない。 

否定されて蔑まれることで安心するのか。

こういうのって、何かの名前が付いてるんだろうな。
ナントカ症候群みたいななつ。
なんかアカンやつの様な気がする。
現に彼女は精神的な治療を受けている。

でも、これも彼女の一部なんだなぁと。
性癖とか特性とか。
そういう持って生まれた、生とともに拒否権なく備え付けられたやつ。

良いとか悪いとかじゃなくて、この関係でないと安心感を得られないだと思った。
この関係でないと、自分はこの自分で良いんだと思えない。

歪んでいるけど心地良い。
辛いけど安心する。

色んな愛があるなぁと、しみじみ感じた。





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