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オリンピック開会式の入場曲がビデオゲームミュージックで嬉しかった話

東京2020オリンピック。

メダルラッシュに沸く開催中の今でも、開催の是非については個人的にいろいろと思うところはある。開催について賛成か? 反対か? と言われると私は賛成だ。普段の仕事でもプロスポーツイベントの運営に携わっており、感染症対策を施し運営すれば、大規模スポーツイベントの開催そのものに感染拡大の危険性があるとは思えないという理由からだ。

まぁ、こういうお祭り的なイベントが開催され人々の気持ちがアガり、感染症対策を忘れてしまう。オリンピックは世界各国から多数の人々がやってくるというところまで考えるとそう単純に是であると言い切れないところはあるが。二者択一でどちらだ! と言われれば賛成なのである。

それ以外では開催に至るまでの東京都、日本政府の開催に関して反対勢力からの圧力に弱腰で、ハッキリさせずになんとなく、しれーーっと過ごし「開始すれば盛り上がるでしょ?」みたいなやり方にはこの国のTOPはどうなっているのだ? と呆れ返ってしまったものだ。

と、オリンピック開催に関する私の考えや偉いひとたちのことはさておき本題に入ろう。

リオの閉会式で日本のPOPカルチャーであるアニメ・マンガ・ビデオゲーム。とりわけ、ビデオゲームは土管から出てくる安倍マリオや、PVでのパックマンなど日本を代表する文化、コンテンツとして紹介された。

リオでの日本を世界にPRするする約9分間のショーは圧巻だった

この流れから東京2020での開幕式の演出もビデオゲームは日本発の文化として大きくフィーチャーされると期待された。しかし、新型コロナウイルスの猛威で2020年の開催は叶わず延期に。延期の影響や式典の簡素化を理由に演出チームは解散し、新たな演出チームはチームのTOPが失言を放ち辞任など二転三転したことは大きく報道され、開幕式の式典はどうなるのだ? と不安になる事態となった。

そして、実際に行われたオリンピックの開会式はホスト国の文化レベル最高峰の演出とは言えない残念な出来で、ツギハギだらけの演出となった。やっぱりこうなるか…。落胆する私の気持ちはよそに式典は進み、選手入場前のVTRパートとなる。画面には入場行進曲を担当するオーケストラが映し出される。そして、試奏で流れてくる旋律…

「ドラクエだ!」

画面に釘付けになる。指揮者の少女がタクトを振ると『ドラクエ』といえばこの曲の序曲のファンファーレが流れ出した! 各国の代表が行進をするそのBGMにビデオゲームミュージックが流れてくる。

Twitterタイムラインの速度が上がる! イントロクイズ状態、ゲーム制作者や流れる曲の作曲者、製作者も歓喜の声を上げる。ビデオゲームミュージックが日本文化の代表としてこの檜舞台で流れた。

この事態を目の当たりにし、私は単純に嬉しかった。この入場行進で流れている時代の曲にはそういう色付けは少なかっただろうが、ビデオゲームサウンドが音楽ジャンルとして確立されようとした80年代、ビデオゲーム開発者の中でサウンドの専門職が現れ、当時のコンピュータで奏でる音楽はとてもチープだったが、その環境でも特徴的なサウンドを作り、当時のビデオゲーム愛好家たちには一生心に残る名曲を生み出していた。

だがそのサウンドクリエイターたちは音楽業界では傍流の存在で、異端児であった。音楽の主流である、ポピュラー音楽やクラッシック音楽などの音楽家の道からドロップアウトしたものや、主流の音楽家から「ゲームミュージック? 子どもの遊び用でしょ」「あのピコピコね」くらいの扱いを受け、音楽界での地位の低さに負い目を感じていた人も少なくはなかった。

それから30年以上経ち、オリンピックの入場曲としてオーケストラアレンジではあるがそのままの旋律でビデオミュージックサウンドが採用された。ここに至る過程というのは、想像でしかないが演出の担当者が様々なジャンルの楽曲から、ビデオゲームミュージックで行く! と決め、それを演出チーム内にプレゼンをし、承認を得たはずだ。

ビデオゲームミュージックは商業音楽であり、ビデオゲームの重要な要素でもあるがそれはメインの要素ではなく、総合芸術であるビデオゲームの1要素に過ぎないものだ。そして、その曲は主にゲームを発売したゲーム会社に権利がありJASRACなどにも管理されている。演出の担当者はビデオゲームミュージックで入場行進を行おうと思った際に様々な曲をピックアップしていたのではないのか? だが、度重なる演出の変更やタイトな期間ということで使える曲にも縛りがあったのではないか? とも推測される。

その中であの選曲となり、オーケストラの収録を行ったと考えると演出の担当者もビデオゲームを刺身のツマ程度に考えていたわけではなく、熟考した中での使用だったという風にも考えられる。このあたりは実際に演出を担当した人に聞かない限り真相はわからないが、少なくとも私にはこの舞台でビデオゲームミュージックが流れたことに感動し、長年ビデオゲームを愛してきてこんなに嬉しいときはなかった。

曲がループし始めた頃、もっとたくさんの曲用意したらいいのに! と思ったが、ビデオゲームミュージックは何度もループして、プレイヤーの心に刻まれる、そんな音楽だから全然OKじゃない! と入場する各国の選手団の晴れ姿を見ながら、コロナがない世界での東京2020オリンピック開会式を見てみたかったなと思ったのであった。

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