カレンダーガール日記8

カレンダーガール日記8
Facebook時代の作品です

「マヂかよ」
それが僕の正直な感想だ。
東日本大震災の津波で非常電源が止まってメルトダウンしかけた時の大事故でさえ笑い話でしか思えなくなるほどの大惨事になるのは免れない。
下手をすれば近畿から東北までのエリアで通常火力電源も従業員などの避難のために使えなくなりストップすることになる。
それで話が済めば良いが問題は原発銀座と言われている原子力発電所が若狭湾周辺に密集している一帯の原子炉を誰が面倒を見るのか?という問題だろう。
「当然避難命令は出るだろうね」
リナはあっけらかんというがボク達としてはそれじゃあ困るわけで。
「きっと総理大臣が先導して原子炉を停めて非常電源などとか、冷却水がないなら海水を導入してでも解決してくれるよね?」
ボクは微かな期待を込めてリナに言った。
「ゆきりん、あの時の総理は誰だったと思う?」
その時の頃のボクは幼すぎてよく知らない、けれどその当時野党だった今の政権の、その後総理になった男がその当時の総理に関するとんでもないデマを流して自分が津波対策を怠っていたのを誤魔化したばかりか責任転嫁さえやってのけた話は聞いている。
「でもいい間はその人では無いからちゃんと対応してくれるのでは?」
と有希の希望的観測。
「いい?ちゃんと私の話を聞いて」
リナは真剣な眼差しでボクと有希を見つめていった。
「あの当時の総理は理系大学の出身者だった、だから専門的とまでは行かなくても原子力発電というものがどういったものかある程度は理解できていたしだからこそ現地に乗り込んで適切な指示を出せた、だから最悪の事態は免れたの」
あれ?でもそこはボクが聞いた話とは少し違ったような
「海水を冷却数位に導入したから事態が悪化したって話でしょ」

リナはそういうと深くため息をついた。
「それデマだから」
実際海水導入の検討もしたらしいけれど結果的にはそれをやらずに済んだから、それに真水が使えなければ海水を使うのは危険だからといって何もしないのはもっと間違った選択だから」
そういうとリナは右手の拳でボクの机の天板を思いっきり強く叩いた。
「原因は冷却用の水を流す配管がいたる場所で破断されてそこから大量の冷却水が漏れていたせいなんだけど真水が足りなくなければリスク覚悟で海水使うしか他に手段がなかったっほど追い込まれてたの、それをどうこう言うこと自体が最悪の悪手だって気がつかないほどのアホだったというのはいつぞやの布マスク大量発注とか未曾有の大雨による大水害で国民が苦しんでいたっていうのに赤坂亭でどんちゃん騒ぎしていたことからもわかるでしょ」
確かにそんなこともあったかもしれないそれでも、そこまで酷い対応はしないと思っていた。
「あなた達国民は知らないでしょうけれど、いいえ、野党のほとんどの議員さん達も知らないでしょうけれどあの時、その時、現場にいた私だから言えることがあるの、あの党はやっぱり根本から腐っていたって」
リナはスマホに大雑把な原子炉の図を表示した。
「原子力発電所というのはね、発電所という名前を持ちながら外部電源がないとその制御や冷却さえできないものなの」
それは聞いたことがあるでもだからと言ってそう簡単に外部電源が喪失する事態なんてあり得るだろうか?

「名古屋港や三重県の津市などにある火力発電、無人で一体誰が動かすんでしょうね?」
リナはそう言ってスマホを指差した。
そこはついさっき南海トラフ地震で壊滅状態になることが予想される地域だった。
「人がいても発電できなくなる状態も想定しておかないとね」
リナはそういうとさらに続けた。
「今のうちの党には残念だけど理論的な政策を取れる政治家なんてほとんどいないわ」
どうしてそう言い切れるのか疑問に思ったがリナは続けた。
「感情的にしか発想することしかできない連中ばかりなの、それは先回の伝染病対策でもあなた達学生だって嫌というほど痛感しているはずなんだけど」
確かにザルだって気を悪くするんじゃ無いかってスカスカな検閲体制にただ単に飲食業者イジメをして楽しんでいるかのようにしか見えない経済支援の足りない規制。
「断言できるのはあの党からは、いえその取り巻きの党からも命を張って現地に向かい仕事をする議員はいないだろうってこと」
リナはそう言ったが原子力発電に関してど素人の議員たちが行ったところで何もすることがない、かえって邪魔になるのがオチでは無いかって思う。
「これは愛や秋子、彼女達と同期の学生議員らと話し合ったことがあるんだけどさやることがない、とか完全に邪魔になるだけっていうのは単に行きたく無いための言い訳に過ぎないんだよね」

リナはそういうと今度は机から離れて腕組みをしながら話し始めた。
「例えば現場の技術者が資材とか専門の技術者がいないために始めたい作業もできずに困っていたりしたらどうする?」
そんなことは電話か何かで反射と連絡を取って取り寄せて貰えば。
「もしも関西の電力会社本社や中部圏の電力会社でも入手が不可能な品物だったら?国の許可なくして持ち出せないものだったら?」
確かにそう言った事例は存在するかもしれない、でも。
「それこそ携帯電話なり固定電話で通話して要求すれば済むことじゃ?」
少し怖い表情になって来たリナに怯えながらボクは言ってみた。
「国から見たら電力会社の一従業員の言うことなんて単なる戯言よ、まともに相手をしてもらえるとでも思っているのかしら?」
「じゃあ電力会社の上司や社長を通じて」
ボクの声は多少震えていたかもしれない、だってリナがあまりにも凄まじい形相でボク達を睨みつけていたから。
「だからそれも諦めた方が健康にいいわよ、誰だって国や上司と作業員の板挟みになるのは嫌だからね」
返す言葉もなかった。
「愛が言うにはそんな時だからこそ自分達国会議員が出向いて党本部との中継を担う(になう)べきじゃないかって」
リナはそう言ったが愛も秋子も所詮は駆け出しのアイドル議員、やれることは変わりがないんじゃ無いかって思う。
「そうやってすぐに諦めるの君たち若者の悪い癖だよ」
リナはそう言ったが愛だって秋子だってボクと差して歳が離れていない若造じゃないか?って思った。
「本気でそう思っている?」
リナは真剣な顔でボクを睨み返して来た。
「あいつら、いつもふしだらなギャルのフリしているけどさ、あんたと同じ中坊だった頃ガチで総理や関西地方を牛耳っていた市長に喧嘩を挑んだ事がある娘っ子達だからね」
正直それは初耳だと思っていた。
でも。
「通信手段はどうする気ですか基地局がやられていたら公衆電話もスマホも使えませんよ」

ボクの反論にリナはすかさず天井を指差した。
それが何を意味するのかわからないままでいると彼女は再び喋り始めた。
「地上にある基地じゃなくて人工衛星を基地局にする電話、衛星電話があるじゃ無い」
リナはそう言ったけどそんなもの誰にでも使えるわけじゃない。
ボクがそう言うとリナにあっさりと「バカね」と返されてしまった。
「だからこそ与党国会議員権限で使える衛星電話なのよ」
「なるほど、だからあのふたりはあんなにも高ピーなのか?」
有希が突然に見当はずれなことをいいだした。
それを聞いてリナは不意に『プププ』と吹き出し始めた。
「そうじゃなきゃ総理とか党主とか相手にケンカを売ったりしないしね」
そう言うと彼女はさらに付け加えた。
「そう言う時こそ政治を自由に動かせる総理が現地に赴くべきなんですけどね」
その時ボクの脳裏に閃いたことを思わず口にしてしまった。
「もしかして彼女達の最終目的地は総理の椅子」
リナはそれを聞いた途端に思いもかけず至高の笑みを浮かべて言った。
「御名答」
と。

ちゅぢゅく!


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