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「お一人様アートツアー:2023/10/2〜10/3 弘前・十和田・三沢  その2  :大巻伸嗣  地平線の行方   Before and After the Hrizon」


お目当ての展覧会。
大巻伸嗣さんって、画家なの? 彫刻家なの?
そういうカテゴリーが陳腐になってしまうくらい、振り幅の大きな作品が毎回楽しみ。
今回、東北地方では初めての個展、青森についていろいろリサーチをされたそうだ。

キービジュアルとして、柏の葉っぱ・・・葉脈に作家・大巻伸嗣さんの手・・・血管が葉脈に沿うように合わせてみたそうだ。
柏の葉は、次の葉が育つまでその葉を落とさないと言われるそうで・・・
いろんな想いを伝えるものとして、今回の展覧会の最初と最後に柏の葉をデザインされて描いている・・・

入り口入るとまず真っ暗・・・写真作品「A Blink of Eternity 2011」もすごく素敵で意味深だった・・・暗い・・・大きな雲の渦の合間にオレンジ色の星? 放射状にスターを放っていて、すごく印象的だった。
そして「Sink,2023」
暗い暗い空間、床に敷き詰められているのは「スラグ」・・・ゴミを焼却した後に残る廃棄物の滓(かす)・・・そして、天井から一つ、また一つと、白い大きめのシャボン玉みたいな玉・・・そこだけスポットが当たっていて、乳白色に光る玉は、スラブの積もった床に落ちる、落ちる直前、あるときは最初から・・・それが割れて中から白い煙がふわ〜と舞う。羽を広げた鳳凰のようにも見える、その一瞬の煙の動き・・・球が割れる微かな音すら聞こえてくる。

また一つ、また一つ・・・最初から煙だけが落ちてくることもある・・・これはある意味「現象」でもあって、いつ球が割れるかは偶然性が高いものだし、球に煙が入ってるとしても、それは作家の労力というより、機械的な装置的なものだろう。
作家の作ったものを見るというよりは、現象をずっと追ってる・・・そんな体験だった。

次の空間には、「Echoes Crystallization」
白いパネルに修正液と水晶の粉で描いたたくさんの植物・・・
よく見ると絵は一本の水平に引かれた線の上と下で分かれてる・・・最初は水面に映ったってこと?と思ったけど、対照じゃない・・・似て非なる? どこかで世界が変わってる? どこか現実にはない植物のようにも思えた。
そして、その白いパネルの絵の対面の壁には、「Depth of Shadow -Vanishing Point」真ん中あたりに歪な・・・何か山のようにも見える形があり、それは近づくと窪みの中の一点に集約されてるような消失点がある。解説には、現実にはない物語上にあるという桃源郷や蓬莱山などをイメージした植物であると・・・そしてその窪みも蓬莱山をかたちどっているとのこと。床にも映る影も、じっとして見るより、動いて観る方が印象的で視点の移動にそって、変わっていくように見える・・・飽きないし、いく通りにも意味が重ねられているようだった。

次の空間に行くと、「KODAMA」
まさしく「れんが倉庫美術館ならでは!」の天井の高い空間で実際にこの建物の柱とともに床から天井に伸びる大きな木が何本もあり、暗い空間にところどころ、木の根本にあるものは、彫刻?って思ったんだけど、近づいてよく見ると流木とか海岸に流れ着いた漂着物・・・そしてず〜っとキツツキが木を叩く音が断続的に、あちこちからしている。実際の音と木霊?  立ち止まったり、歩いたりしながら、ずっと没入していく・・・音がついてくるような感覚・・・誰かに見守られている? って気分になっていった。

今までがメインか・・・と思っていたら、次に続く大きな空間で、度肝を抜かれた。
「Liminal Air Space Time 事象の地平線」

これについては、後ほどじっくり、たっぷり書きます。

2階に上がると、「Liminal Air 天」と「Liminal Core Sky」と「Flotage 2004-2006」
白い大きな円盤上に描かれている何か渦?のような上を、金属の尖ったもの・・・がゆっくりと動いてくる作品や、
青森で多く出土している縄文土器のような、大きな黒いツボの表面に描かれているヒビ・・・人の営みなのか痕跡なのかを問いかけるような平面作品も印象的だ。

さらに明るい場所に「Echoes Infinity -trail」
床一面のフェルト布の上に描かれた色彩豊かな花や鳥のプリントのような繰り返しのデザインの、その作品の上を通っていく・・・大巻さんの作品の上を歩いていくという、ちょっとおもしろい試みもあった。

また出口のところでは、地元の言葉で語り歌うような不思議な歌が流れていて、そこに大巻さんがこの弘前で撮影した写真や映像が流れていく映像作品があった・・・独特の節回し、曲はボサノバ、そして歌詞は津軽の言葉・・・不思議な組み合わせだが、何か土と水の香りが感じられた・・・
そして、また大きな柏の葉を染め抜いたのれんがかかっていて、出口となる。
葉の葉脈が確かに血管のようで、作家・大巻さんの手と重ねられているそうだ・・・

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