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大人二人のミュージアム・クルーズ in TOKYO 3「梅田哲也 Wait this is my favorite part: 待ってここ好きなとこなんだ」@ワタリウム美術館


これが今回の一番の目的の展覧会!!
完全予約制で、約50分ぐらいのツアー形式、1回6人まで という、かなり変わった展覧会です。
梅田哲也さんの作品を知ってる人・・・なら「うわ、何やってくれるんだろ、楽しみ、楽しみ〜」となる、かなり「通向け」の展覧会です。

写真撮影がNGとなってたのですが、会期も終了したので、目一杯、言葉を尽くして語りたいです。

ワタリウム美術館・・・実は結構、金沢と縁があるんですよ。初代館長で設立者である和多利志津子さんは、金沢市の玉川公園の近くの町家に「ワタリ・ミュージアム」を構えていたことがあり、そこに、ベルギー・ゲントのキュレイター、ヤン・フートさんが金沢に来られ、それが後に「ヤン・フート IN 鶴来」へとつながった・・・これを私は、鷲田めるろさんのお話や「キュレーターズノート」などの文章を読んで知っていたこともあり、また、長谷川祐子さん(現・金沢21世紀美術館館長)のトークや、アートグミで美大の先生のお話の中からも何度も聞いたお名前であり、美術館でもあった。私自身も3度ぐらい訪れている(でも、そのたびに道に迷う・・・ああ、方向音痴!!)

だけど、今回の展覧会では、まさに「初めて知る、ワタリウム美術館の姿」でした。

梅田哲也さんの今回の展覧会は・・・・作品を鑑賞する・・・だけじゃなかった。
「ワタリウム美術館」という「劇場」で、演じられる「演劇」に自分たち鑑賞者も「演者」の一人として参加する形式。
3人のキャストさんに誘導されながら・・・でも、謎めいた言葉をたどり、そこここに点在する梅田哲也さんの「ひそやかな作品」が、その「劇場」に与える「効果」を味わいながら進んでいく・・・
普段なら鑑賞者が立ち入れない、スタッフオンリーの場所さえ、「場面の一つ」になっていきます。

そうだ、「金沢ナイトミュージアム」で図書館の中をめぐりながらダンサーのパフォーマンスに没入していった、あの時間を思い出しました。

いくつかキーワードを、キャストさんが何回かセリフとして放っていきます。
「こちらが北、南、東、西、このラインがこの建物の中心線」と・・・ワタリウム美術館って確かに三角を中心として両翼に広がるようなイメージがある建物だったよなぁとか、「今、私が言ったのは、あなたの10分前・・・・これから私が言うのは、あなたの10分後」とかとか・・・

  普段ここへは入ってないぞ?という通路に組み立てられた工事現場にあるような足場と階段を降りて次へ、また次へ・・・地下のカフェまで使う見事な設定。
ところどころに、建物の歴史を伺わせる設計当時のボードとか、よぉく見ると、あれ?これって梅田哲也さんが何やかんや書いてる??と思ったドアの枠があったり・・・あちこちに、梅田哲也さんの作品にある代表的な、電球がついたり消えたりする水の入ったガラス球体や、扇風機、ろうそくの火とか・・・
   学芸員さんしか入れない資料室や、今までの展覧会の記録がびっしり入ったファイル棚とかとか・・・もちろん、学芸員さんの勤務時間内のツアーだから、そこにお仕事されてる学芸員さんもいる・・・彼ら・彼女らも舞台の演者ってことか。
  そして、最後は台の上に参加者全体が乗ると、そこは船・・・どこか新天地に旅立つ船・・・キャストさんが押して台が動いていきます。本当に舞台の大道具、回り舞台に乗ったみたいに・・・そこは開くとは思ってなかった、黒っぽい窓が開くと、そこは通りに面していました。
 その場面の直前だったかに、「前の道は、原宿幼稚園前交差点・・・信号が変わるとざわめく音が聞こえる」みたいなセリフがあったよなぁ・・・

そして窓が開いたら、通りの向こうの空き地に何か組んであって、ずっと前? 昭和の頃?のその場所に建っていた家とか街並みの写真を大きく引き伸ばして貼り付けたボードと、その先に、あれ??人の姿がある・・・
それは、私たちの一つ前の時間にツアーに行ってた人たちのようです。
「10分後の未来」であり、そこにいらっしゃる人たちにとっては「10分前の過去」

すごい・・・!!
あの謎めいたセリフは、ここでちゃんと繋がるんですよ!!

私たちもツアーの続きで、横断歩道を渡ってそのもう一つの舞台に上ってみると、そこには、ちょっとしたお茶が飲めるようになっていて(しかも、あったかいお茶)、冬の寒い外だから・・・ってことかな。
そして、また、あの窓が開く・・・あれは、もしかしたら、普段は作品搬出・搬入用のドアなのかもしれない。そして黒いガラスなので、開くまでは内部は全く見えないです。

そこで10分前の自分たちに再会するんですよ、すごいなぁ。
そして、あの舞台(船)に乗ってる人たちにとっては、10分後の未来の自分たちなんですよ。

そこに何故かプラスチックカップの糸電話がある・・・なぜ?
誰かと会話できるのか??
私もそこで何か言葉を発してみました・・・

帰ってから思ったけど・・・あそこで話すのに一番ドンピシャなセリフは、キャストさんが言ったセリフ「あなたの10分後の未来です」という言葉なんだろうな。
 また、私とまるびぃ仲間、当初、予約した時間が前後してたのを「じゃ、一緒に行くんだったら一緒の時間にしようか」とキャンセルを入れて、同じ時間になるよう取り直したって経緯があったのですが・・・そのままだったら、私が彼女の「未来」になり、彼女が私の過去になる・・・そんなおもしろいシチュエーションもできたのかもしれないね。

こういう「美術館そのものの魅力、建物そのものを存分に使っての、表も裏も全部使って劇場のような展覧会」は、なかなか難しいと思う。これは、観光目的で訪れる人には、まず、向かない・・・けど、もっともっといろんな人に、こういう展覧会の魅力を知って欲しいとも思うし・・・
X(Twitter)でも「一期、二期、両方楽しんだ」という方の書き込みもあったし、「これは絶対行きたいと思ったら既に予約いっぱいだった〜」という書き込みも多かった。
私にしても、平日に仕事がなかったから、さっと決めて予約とってスケジュール組めた・・・って思いもあって、思い切って行動できてよかったなぁと思ってます。

 この東京からの帰りの新幹線でネットニュースで、TCAA(Tokyo Contemporary Art Award)の第5回目受賞者が梅田哲也さんと呉夏枝(オー・ハジ)さんに決まったことを知りました。実にタイミング・ドンピシャでしたね。

PS : お笑いが一つ!(苦笑)
 地下のショップに「あれ? これ見たよね」「あ、そうだ、知ってる、え〜っとどこで見たんだっけ? いつ見たんだっけ? 誰の作品だったっけ?」とか二人して「思い出せない〜」とかやってたんだけど、なんのことない、ちゃ〜んと目の前にありました。「SCAN THE WORLD」 @金沢21世紀美術館
ショップの人が「これって、21世紀美術館でやってましたよ」と。
私たち二人とも「そこ!」から来たんですよ〜!って大笑い。
彼女はこのZINEを作成するワークショップに参加してたのに・・・ね。
でも、6部?セットで10000円もしてました〜、びっくり!!

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