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「Waltz for Debby」と「Sunday at the Village Vanguard」

今回は、ビル・エヴァンスの名盤、「Waltz for Debby」と「Sunday at the Village Vanguard」から何曲かご紹介します。

この2枚のアルバムは、1961年6月25日の日曜日、ニューヨークの「Village Vanguard」というライブハウスで行われたビル・エヴァンス・トリオのライブを収録したものです。午後(マチネ)2回と夜(ソワレ)3回、それぞれ30分位づつのライブから曲が抜粋されて、2枚のアルバムとして収録されました。

ビル・エバンストリオ
ピアノ:ビル・エヴァンス
ベース:スコット・ラファロ
ドラム:ポール・モチアン


まずは、「Waltz for Debby」からご紹介します。

「Waltz for Debby」

「Waltz for Debby」

アルバムの名前にもなっているこの曲は、ビル・エヴァンス自身の作曲です。ビル・エヴァンスの代表曲にして、JAZZと言えばこの曲を浮かべる方も多い名作です。このバージョンが有名ですが、この後もこの曲を何度も演奏しているので、いろいろなヴァージョンがあります。女性ボーカルの歌付きのものも存在します。初めて録音されたのは、ビル・エヴァンスの初リーダー作のアルバムで、1分強程の長さの曲として聴く事ができます。
姪のために書かれた曲と言われており、とても可愛く優しい感じの曲で聴いているととても穏やかな気分になります。
JAZZを聴いてみたいけど、どんな曲から聴けば良いかわからないという方には、ぜひお勧めする1曲です。

「My Romance」

リチャード・ロジャース作曲のこの曲は、ミュージカル「ジャンボ」のために書かれた楽曲で、たくさんのJAZZミュージシャン達がカバーをしているので、JAZZの名曲としても有名です。
とても爽やかな曲でなんとなく春のイメージがある曲です。(私の勝手なイメージですが。)
いろいろな方の演奏や、ビル・エヴァンスの演奏自体でも他のバージョンがたくさんありますが、私はこのバージョンが一番好きです。

「Milestones」

マイルス・デイヴィスの名曲です。
マイルスの演奏と違って、ピアノが主となるこの曲はマイルスの演奏とはまたイメージが違ってくると思います。JAZZ初心者の方には、こちらの方がもしかしたら聴きやすいかもしれませんが、どちらもかっこいい曲です。こちらの曲もたくさんのミュージシャンがカバーしています。
余談ですが、ビジネス用語の「マイルストーン」という言葉を知る前に、この曲を覚えてしまった私は、「マイルストーン」と出てくると、どうしてもこの曲とマイルス・デイヴィスが浮かんでしまいます(笑)。
おそらく曲名を付けるときに、「マイルストーン」という言葉に掛けたのだろうと思いますが、曲名としての「Milestones」は、マイルス(Miles)の音(tones)という意味かと思われますが、曲名については諸説ある様です。


「Sunday At The Village Vanguard」

続いて、「Sunday At The Village Vanguard」から数曲ご紹介します。

「Gloria's Step」

ベースのスコット・ラファロ作曲のこの曲は、素敵なメロディを奏でるピアノと、スコット・ラファロのテクニックが冴え渡る曲です。ダンサーの恋人をイメージして書いたと言われています。ダンサーがステップしている様子が眼に浮かぶ様なメロディがとても素敵です。
後年もビル・エヴァンスはこの曲を演奏しています。

「My Man's Gone Now」

ジョージ・ガーシュウィン作曲のオペラ「ポーギーとベス」からの1曲です。夫の死を嘆く歌ですが、もともとJAZZの要素が強いガーシュウィンのメロディが、さらに妖しい雰囲気をまとっていて、とても魅力的な演奏です。

「Alice in Wonderland」

ディズニー映画「不思議な国のアリス」の主題歌として有名な曲ですが、ビル・エヴァンスによって、とてもおしゃれで大人な雰囲気の曲になりました。お酒を飲みながら聴く音楽にぴったりな演奏となっています。


それぞれのアルバムから3曲づつご紹介しました。
アルバムには、発売当時はそれぞれ6曲づつ収録されていました。現在販売されているものは、版によって曲数が違うと思いますが、もともと収録されている曲の違うバージョンの演奏がボーナストラックとして収録されています。
今回ご紹介出来なかった曲もとても素敵な曲があり、興味があればぜひ聴いていただきたいと思います。特に、JAZZをあまり聴いた事がないという方にはおすすめの2枚です。(もちろん、各サブスクでも視聴可能です。)

このライブのあと、ベースを担当したスコット・ラファロが交通事故で亡くなり、このトリオでの演奏はこのライブが最後となりました。
スコット・ラファロを気に入っていたビル・エヴァンスは、大きなショックを受け、しばらく演奏活動ができなかったと言われています。


「The Complete Village Vanguard Recordings, 1961」

このライブは、全収録されており、2005年に完全版「The Complete Village Vanguard Recordings, 1961」として3枚組のCDが発売されました。5公演が演奏順そのままで聴く事ができます。(現在製造中止となっているようですが、販売はされているので、入手は可能です。)
ただ、前出の2枚で慣れ親しんだ方には、この完全版を聴くと、もしかしたら違和感があるのではないかなと少し思います。レコード会社がライブの演奏をピックアップして、順序も変えて出すというのは、それなりの意味があるという事だと思います。ただ、完全版はハプニングなどもそのまま残っており、その時の臨場感などが感じられる貴重な版でもあります。(どんなハプニングか興味がある方は、ぜひCDを手に取って聴いてみてください。)
こちらの完全版は、貴重な音源として、2009 年に全米録音資料登録簿に追加されました。


今回ご紹介した2枚は名盤中の名盤ですので、多くの方がレビューしています。(note内でもたくさん見かけます。)それでもレビューが後を立たないのは、それだけ魅力的なアルバムという事なのでしょう。ただ、それぞれ感じ方は違うと思いますので、人それぞれのレビューを楽しむのも良いかもしれません。

素晴らしい音楽が後世の時代にも聴き継がれていくというのは、とても素敵な事ですね。それが自分の大好きな音楽だと尚更です。
これからも素晴らしい音楽が誕生して、聴き継がれていくことを期待したいです。



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