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羽生結弦選手の選択と絵本GIFTに思うこと

 書き初めが羽生結弦さんのことになるとは思ってもいなかった。

 正源宗之は次行く世界の住人だけれど、きっと憂えているだろう。彼を苦しめるもの、報道の自由という権利を振りかざし続け、そのもとに集う心無い言葉の全ての悪意が一掃されてしまうことを祈っているだろう。
 
 今年2月26日東京ドームを満杯にしたアイスストーリー『GIFT』の羽生さんの語りはすべて自身が綴ったものだ。その『絵本GIFT』が12月20日に発売になる。4ヶ月近く発売日が延期されたときには落胆したが、偶然なのだろうけれど今となってはその決定が正解だったと思う。前々から羽生さんには人とか事とかモノとかを引力のように正解に結びつける力があると感じている。
 羽生さんはどの選択も意味あるものになるように生きたいと、その選択を続けて行くのだと話されたことがあった。その思考が導いているのかなと思う。

 『GIFT』には自分へ厳しいがゆえの計り知れない努力と苦悩が語られ、一方他人や擬人化されたモノには優しすぎるほどの愛情が溢れている。羽生さんが語ることは過去の自分をさらけ出してのことだけれど、未来に起こってしまった現実を見ていると、狭い世界から羽ばたいて自由になった人になお試練を与えるのかと辛くなってしまう言葉が連なる。

 今回のことに当てはめちゃだめなのだろうけれどやるせない気持ちでいっぱいになる。

「大切なものだけ選んできたのに 何処に行ったの?
どうして無くなったの?
大切にしてたのに
なんで 
一人は嫌だ」

 今年11月5日 さいたまスーパーアリーナ公演2日目アイスストーリー『RE_PRAY』。その日1番程に会場がどよめき立った羽生さん自身のコレオ作品『阿修羅ちゃん』を初めて観たのは『GIFT』だ。『GIFTの阿修羅ちゃん』を演じる前に語られた言葉。

「運命にひたすら抗ってきた
誰も傷つけないように
誰かが傷ついてしまわないように
誰も失望してほしくない
僕のあるべき姿になるために
だから強くなるんだよ
僕が僕で在れるように
こんな僕のこと誰がわかる
一生わからない 
わからない」

 求めるスケートを生み出すためにもがいてきたことへの言葉なのだろうけれど、世の人にほんとうに真っ直ぐで、優しい人の苦しみを見てほしい、感じてほしいと思う。

 羽生さんが苦しい時、楽しい!と自分に念をかける姿を先日テレビで見た。同じように寂しい時も、楽しいよね! と念をかけてきた少年時代がある。

「なくしたくないものをずっと大切にして
ぎゅっと掴んで絶対に離さないんだ
だって叶えたい夢があるから
それがかっこいいから 
それが僕なんだ」
 
「それが僕なんだ 
僕なんだ 
僕なんだ
涙がこぼれ落ちた
周りが一気に崩れていく
何もできないまま 
ただ怖いだけで」

少年から青年への過程で経験してしまった震災。
彼が負った傷、抱えた傷、背負ってしまった傷。

 もう一度言う、やっとここまできて自由を手に入れてまさに羽ばたこうとしている人に、これ以上傷を負わせないでほしいと思う。どうかどうかどうか彼を鋭い言葉で傷つけないでほしいと願う。

 もうここからは責任感ゆえのプライベートは何一つ話してくださらなくていいのでと伝えたい。黙っていることは騙すことではない。いつか幸せすぎてご自身から話さずにはいられないような羽生さんに会える日を待ちながら、私は私たちファンは応援し続けるので、安心して思うがままに暮らしてほしいと望むのだ。

GIFT絵CLAMP(クランプ先生)



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