令和の歳時記 ハッチョウトンボ
「小さな世界から人間の未来が見えてくる」
どうして「虫」が好きなのか?
「どうしてそんなに虫が好きなの?」と聞かれることが多い。わたしが虫を好きな理由をあげてみる。まず第一に“カッコいい”がある。カブトやクワガタのように強そうで、しかもデザインがカッコいいのだ。
そして“美しい”というのも重要な要素だ。特に美しいと思うのはタマムシとカメムシ。前者は誰もが頷くと思うが、後者は「はて?」という顔をする人もいる。
いずれわたしはカメムシの美しさについて語ろうと思うが、他を追随しない魅力があるので楽しみにして頂きたい。
さて、次なる好きな理由は“小さい”になる。「虫が小さいって?そんなのはわかっている」と怪訝な顔をしないでほしい。
あれほど小さいのに驚くべきパワーがあるところに惹かれるのだ。アサギマダラというチョウチョウは日本から台湾まで飛来する。ノミも自身の体の数百倍くらいジャンプする。
アリに至っては自身の体重の百倍を軽々と運ぶのだ(仮に60キロの大人の人間だったら6トンを運ぶことになる)
虫の姿に尊敬の念を込めた「一寸の虫にも五分の魂」という言葉を大事にしたい。
ハッチョウトンボは日本一小さなトンボ
虫好きなを“虫屋”と言う。虫屋にはそれぞれジャンルがある。人気があるのはカブト、クワガタなどの甲虫屋。次にアゲハチョウなどの蝶屋。そしてトンボ屋が続く。
このハッチョウトンボは日本に生息するトンボの中で一番小さなトンボとなる。大きさは1円玉大で約18ミリ。オスは真っ赤で太陽の光を一身に浴びて輝いている。
メスと成熟していないオスは黄色に黒の縞模様の地味な姿をしていて一見アブのように見える。
羽化したばかりは天敵に狙われやすい
生息場所は日当たりの良い湿地帯。このトンボは他のトンボの様に広範囲なテリトリーを持たないと言われている。オスは半径1mの中でメスを探し、交尾の機会を伺う。
長時間飛ぶのが苦手なようで、時おり草木に止まって尾っぽを天に突き刺すように休んでいる。その姿は小さいながらも虚勢を張って威嚇している様に見え可愛い。
しかし容易に手で捕まえることが出来るから苦笑してしまう。
体が小さいから天敵も多い。クモやカエル、他の大型のトンボ。
さて、ハッチョウトンボの和名は八丁トンボ。文献で調べると名古屋に因んでいることがわかった。
昔、現在の熱田区に八丁畷(なわて)と呼ばれる街道があり、その付近で発見されたのでハッチョウトンボという名前が付いたという説と、東区の矢田町『矢田鉄砲場八丁目(やだのてっぽうばはっちょうめ)』とか、『矢田河原八丁場(やたがわらのはっちょうば)』という場所で発見されたので、命名されたという説がある。
何れにしても名古屋に由来しているとのこと。
ハッチョウトンボは「カッコいい、美しい、小さい」から人気者だが準絶滅危惧種
しかしハッチョウトンボは現在、準絶滅危惧種に挙げられている。湧き水が豊富できれいな水じゃないと住めないからだ。
先に挙げた天敵は本当の天敵ではなく一番の天敵は生息地を開発という名目で減少させている人間であることを忘れてはいけない。
虫屋は最初こそ大物の昆虫を捕まえて楽しんでいる。最初は捕まえて遊ぶだけが、飼育になり、そして標本制作へと向かう。
こうなると小さな世界をもっともっと知りたくなる。そして顕微鏡でしか見えないような虫に行き着くから不思議だ。
つまり新種の虫を発見したくなる衝動にもかられるのだ。発見して自身で命名するのだ。
ここで忘れてはいけないのが、小さな命から見えてくる世界があると言うことだ。『ミクロは宇宙』このミクロを見つめていると人間の歩むべき道が見えてくる気がするのだ。カッコいい、美しい、小さいって中々侮れない。
尾っぽもあげず羽を畳んでいる時は安心しているのだろうか
分布●青森県から鹿児島県に至る本州、四国、九州(アジア地域にも広く分布)
生息地●平地、丘陵地、休耕田の日当たりの良い湿地に生息する
繁殖期●5~10月
大きさ●体長はオスが17-21 mm メスが17-21 mm
学名●Nannophya pygmaea(Rambur, 1842)
和名●ハッチョウトンボ(八丁蜻蛉)
英名●Weeping love glass
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