マリノスの装置は、Jリーグのピタゴラス。スター軍団?マリノスはギャラクシーですけど。2019 J1リーグ第20節マリノスVSヴィッセル神戸 プレビュー


去年はこの時期にワールドカップの中断が明け、9月1日までの間にリーグ戦10試合と天皇杯1試合を消化するという、夏場になかなか厳しい日程でした。それに対して今年は、8月31日までに消化されるのが、リーグ戦6試合と天皇杯1試合、マンチェスター・シティ戦1試合となるため、我らがマリノスは、相手チームの対策にもしっかり時間が取れる日程になるでしょう。ボリスタの記事を見ると、この準備がしっかり出来るというのは、マリノスにとって追い風だなと感じます。

さて、J1リーグもついに20節。あっという間です。梅雨明けも間近。そんな時に迎えるアウェイ神戸戦。夏場の短い中断期間の前は、気持ちよく勝利で終わりたいです。翌週にシティと戦い勝つつもりでいるのであれば、イニエスタやビジャに負けるわけにはいきません。

神戸は今シーズン3人目となるフィンク監督就任後から5試合、2勝2負1分と持ち直した様に見えますが、攻撃陣の戦力を考えれば、満足出来ない内容だと思います。この期間の得失点は、得点10失点10。得点に関してはそこまで驚きませんが、失点は意味を持ちそうなほど多いので、注目したいところです。現在の神戸の順位は、ギリギリ残留ラインの15位。死に物狂いで、ホーム戦を取りにくるでしょう。では、前回対戦の振り返りから。

1,【12節ホーム神戸戦の振り返り】

ホーム12節の前回対戦は、4-1でマリノスの完勝。神戸が3点差以上離されて負けたのは今シーズン初でした。その試合のマリノスはというと、前節セレッソ大阪に3-0で完敗した後の試合という事で、大胆にシステムをいじって来ました。皆さんご存知の4231型『マルコスシステム』です。

セレッソ大阪戦までの4123の布陣を変えての戦い。せっかくなので、この『マルコスシステム』の簡易的な説明をしてから、神戸の話に入ります。

私が思う『マルコスシステム』は、相手の4バック又は5バックに対して、数的優位又は数的同数で突破するための形を作る装置です。
神戸相手であれば4-4-2のブロックを、段階的に数的優位を作って攻略するのが原則です。
原則ですので、相手のディフェンス強度やポジショニングによってやり方は選手に任せ柔軟に変わります。つまり、こういう考え方かぁ位に思って貰えれば有り難いです。

まずは、4-4-2の2のブロックから。

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必ず3VS2の形になるので、ボールを前進出来ます。この時に大事なのは、相手のCHが落ちた選手について来ないように、マルコスが下がる事です。
次の展開は分かりやすくパスではなく、ドリブルで持ち上がったとしましょう。

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この様に、ファーストブロックの攻略と同じように、数的優位が出来ます。こうなれば、最後は。

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これで最終ラインでは、5対4の出来上がり。スムーズにこれが出来なければ、また最初からやれば良いだけですので、とても合理的。
そして、注目して見て欲しいのが、完成形の布陣。こうなります。

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もう、分かりますね。シーズン序盤の4123の布陣でSBが絞った時の形と同じです。
この様に、最終的には4123と変わらない235という形になります。どちらもやろうとしている事は、ハーフスペースを攻略するという事です。

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原則さえ掴めば、人数を後ろにかけた方が、前に行くだけの選手が増えるため、より攻撃的になるわけです。実際はもう少し細かな動きがあるんですが、原則理解としては充分でしょう。

という事で、このビルドアップを始めるにあたって、初戦が神戸になったのは、とても良いタイミングだったと思います。神戸の布陣は攻撃時はウェリントンが落ちてくる4231、守備時は442でした。

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神戸の守備は、12節プレビューでも書いた様に、選手間が広くプレッシャーも緩いため、隙間にポジショニングしようとするマリノスとの相性は悪く、『マルコスシステム』を行うにあたって練習通りの形を出せたのではないでしょうか。図は前回対戦のプレビューで使った図です。

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選手間が広く、間で受けたいマリノスのポジショニングが、まぁ生きます。また、この守備の問題を抱えたまま、攻撃的なやり方をして来てくれました。こちらも前回対戦のプレビューの図を引用。

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SBの裏がガラ空きです。
1点目は見事に、そのSBの裏を使う事が出来ました。神戸SBへのパスをティーラトンがカット。ボールを拾った遠藤がガラ空きのSBの裏を突き、マルコスへパス。ダイレクトでミドルシュートを放ったマルコスの一撃で先制でした。

2点目は右サイドで密集オーバーロードから。左サイドでアイソレーションしていた遠藤へのプレッシャーが緩く、中央に絞っていたティーラトンからのパスを受け、ビューティフルトラップでマークに来た相手SBの選手を置き去りに。サイドを独走し、ハーフスペース奥深くから中央チュンソンに完璧なロークロス。

3点目は遠藤のサイドでの粘りから、上がっていた前方のティーラトンへ。ブンちゃんがファーサイドにクロスを上げて、ダイレクト三好ゴール。

4点目も右サイドオーバーロード。パスワークでも崩せており、ミドルを打つAJ。こぼれを押し込むのは、アイソレーションをしていた三好でした。

この様に、しっかりマルコスシステムの初陣を飾る事が出来ました。失点シーンの言及はいらないかな。神戸がこの守備と攻撃をしてくれるなら、あの時よりもマリノスはシステムに磨きがかかっているため勝てると言えますが、さて、フィンク監督はどんな事をしてくるでしょうか。

2,【ヴィッセル神戸の守備】

では、ヴィッセル神戸の守備ですが、基本的な部分は大きく変化はありません。442ブロックで、ボールサイドに人が寄りますが、基本はスペース管理です。スライド型の守備ブロックを敷いてきます。やりたいのはゾーンディフェンスっぽいのですが、決まり事は甘く、カバーやスライドの動きは遅いです。簡単に言えば、自分のポジションを守っているという印象を与えます。

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確かにネガティブトランジションは速くなりましたし、押し込まれたら全員戻るのですが、強度というよりは、気持ちの部分で、皆で守ろうという感じが出てきているかなという印象です。システムとして守る印象はありません。そのため、大筋では変わっていないという結論です。ポジション間の広がりは、山口の頑張りでだいぶ修正されましたが、それ以外の緩さは変わりません。

前回対戦同様に、押し込んでもカウンターでも崩す事が出来ると思います。通常4バックの弱点になるチャンネル空く問題(ハーフスペース空く問題)は、しっかりあるので段階的な数的優位ビルドアップは、そのまま嵌まるはずです。

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そして、イニエスタが戻ってきたことによって、守備時の癖が顕著になりました。2CHの山口とイニエスタは、縦関係を作る事が多く、イニエスタが前、山口が後方で舵を取ります。この場合、山口の脇は当然空きます。

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山口の脇を突かれるから、SHがバランス取って下がる事もあります。

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このケースは名古屋戦で見られたので、押し込まれた時か、中央を崩されている時に発動していると思われます。そのため、マリノス相手にもやってくる可能性がありますが、SHの守備力も高くないので、43守備ブロックも振り回して攻略する事は難しくないでしょう。

これにより、山口はCBの間に落ちたり、

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イニエスタのカバーをしたりと獅子奮迅。攻撃時に山口まで上がってしまう場合は、必ず左SBの初瀬が残っています。3枚は残す様にしてるわけですね。

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西はもともと自由人なのですが、初瀬もそれほど守備力が高くないので、彼が残っていても枚数の問題だけで、カウンター時の対策には成りきれていません。

また、神戸の442守備の場合は、決して運動量の多くないイニエスタとビジャがいる事で、トップのプレスは単発プレスになる事が多く、他の選手がカバーすべき領域が増え、必ずガス欠になっています。前半に点が取れなくても、焦ることなく、攻め切りたいです。

3,【ヴィッセル神戸の攻撃】

続いて、ヴィッセル神戸の攻撃ですが、イニエスタが入った事もあり、大きく改善したのはこちらの方です。

まず、シンプルにウェリントンとビジャを使うようになりました。ウェリントンは落ちてくる傾向があり、ロングボールでウェリントンの落としや、すらしにビジャや絞ったSHが反応するのが嫌です。SHの絞りは健在で、ウェリントンが落ちて、SHがそこを使うのは常套手段です。

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また前述した様に、山口とイニエスタは縦関係になることが多いです。
両SBを上げて山口はCB間に落ちるか、初瀬を残し西が上がり山口をサイドにスライドさせるかして、三枚ビルドアップに中央イニエスタと絞った両SHで334っぽくなります。

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今の神戸の攻撃で一番怖いのはこの形からで、イニエスタから前線4枚にピンポイントパスが飛びます。イニエスタをおとりにして、山口もロングボールを狙ってきます。得点シーンにもなっているので、本当に怖い。

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こうなると4バック対4トップの構図。私なら、ウェリントンと古橋の方を狙うでしょう。
また、前回対戦の様に、サイドからビルドアップして形を作る事もありますが、前線4人の連携はそこまで高くなく、しっかり守っていれば大丈夫だと思います。それに、最終ラインの足元技術はそこまで高くないので、プレスにも弱いです。これは昨年終盤のマリノスと同じ課題で、出来るだけマリノスはイニエスタまたはイニエスタに渡る前に奪い、ショートカウンターを実行したいです。ボールの奪いどころは神戸SBと山口です。

とはいえ、やはりチャンスの鍵を握るのはイニエスタという事になります。
喜田は現在イエロー3枚でリーチですが、出場停止になっても仕方ありません。しっかりイニエスタを潰して欲しいです。潰せないとかなり危険なボールを出してくるので、いくつかの失点は覚悟しないといけないかもしれません。

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後は、前線は個人技があるので、ここを考えてもパスが渡る前に潰したいという事。

神戸は明確に、ウェリントン目掛けてクリアしてくるため、プレスはウェリントンの位置側からかけたいという事。

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4,【最後に】

ではスタメン。

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マリノスは変えないでしょう。連勝してますからね。
神戸は、ダンクレーが戻って来るだけかなと。フィンク監督は、大胆な変更はあまりしないように見えます。

イニエスタによって攻撃力が上がった神戸ですが、対策自体はそれほど難しくないでしょう。もし喜田がノーイエローで、無失点にして試合を終えたら、マンオブザマッチだと思います。

相性は良いはず、必ず勝って皆でシティを迎え撃ちましょう。

ここまで読んでいただいた方、読後に何かのアクションを行っていただいた方に感謝いたします。

https://note.mu/lucyrock/n/n5a38299b6784

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