ケイタ、レイチェルを釣る。 2019 J1リーグ第18節マリノスVS大分トリニータ プレビュー

さぁ、後半戦の開始。対戦も2週目という事で、今までのプレビューの形から少しだけ変更して、前回対戦の振り返りを導入部分に使います。それでも、これまでの様に戦術というよりは、原理原則を基にプレビューをします。

現在、マリノスは暫定3位。首位との勝ち点差は6。すぐ下に大分がいる状況です。常に上を目指すには下との距離も意識しておきたいので、出来るだけ序盤で勝ち点を稼いでおきたいところ。

大分の失点数14は5番目に少ない数字ですが、直近の5試合でその半分の7失点をしており、この5試合に堅牢な大分の守備を突破するためのヒントが隠されているでしょう。まずは、前回対戦を振り返ります。

1,【4節アウェイ大分戦の振り返り】

アウェイ4節の前回対戦は、2-0の敗戦。今シーズンリーグ戦での初敗戦となりました。
大分はマリノスを意識した532の布陣を採用し、マリノス前傾布陣の4123に上手くあてはめてきました。

大分の守備の仕方はゾーンディフェンスではありますが、普通のゾーンディフェンスとは違うやり方を取ります。そのやり方は、フットサルやバスケではこう言われます『マッチアップゾーン』と。
簡単に言えば、ボール保持者にはマッチアップ(マンツーマン)するものの、他はスペース(エリア)を守るゾーンディフェンスを行うという事です。

このディフェンスは、マッチアップするマークマンの受け渡しに練度が必要とされ、かなり高度な守備です。
上手く行けば、スペースを常に埋めながらもボールには人が付くので、普通のゾーンディフェンスよりも能動的なボール奪取が見込めます。

この守備方法だと、人を動かしたいマリノスがいくらローテーションをしようとも、お互いの選手の配置は変わらないため、常に大分のゴール前のスペースは埋まっている事になります。

大分が長い時間をかけて醸成したこの守備を、対策などと言う言葉で括ってはいけません。おそらく、リーグの中で最も相性の悪いプレー原則です。そして、見事にこのマッチアップゾーンに嵌まりました。この試合、マリノスは決定機を作る事が出来ませんでした。

またマリノスは、守備時においても大分の攻撃の代名詞となった疑似カウンターに手を焼きます。

この様に前回対戦は、攻撃も守備もハードな状況でした。

とはいえ、失点の形は疑似カウンターでもロングカウンターでもありません。なんとか、マリノスはこれらの大分の攻撃を凌いでいました。じゃあ、どんな形から失点したか。
まず1失点目は、ティーラトンからのパスをレイチェルに引っかけられてからの、鮮やかなショートカウンターでした。
実は、大分攻略の鍵になる事象がこの時に起きていましたが、上手くひっくり返された形でした。この事象に関しては後述します。

2失点目はその4分後。マリノス右サイドを押し込まれた後に、いったん中央に下げられ、空いている逆サイドのスペースで、岩田→レイチェル→岩田→ニアクロスを藤本ヒールでゴールされました。

完璧に崩されました。これは大分のデザインされた攻撃で、大分はマリノス戦後にも、何度かこの形で相手守備を崩しています。最後尾からのHVの上がりはフリーになりやすく、幅を取ったレイチェルに出すことで、SBはマークに行き、チャンネルは空きます。そこにHVがまっすぐ進む。
最後にニアクロスを選択しているのも、クロッサーからターゲットまでの障害が少なく、最短のコースであるからであり、とても合理的な判断です。
実にスピーディー。見事にやられました。

こんな感じで、攻では持ち味を出され、守では封じこまれての完敗でした。片野坂監督のサッカーに驚いた方もいると思いますが、基本構造はJ2の時から変わっておらず、柔軟な戦い方が出来る良いチームが、昇格してきたなと感じた試合でした。これを前提に話を進めましょう。


2,【大分トリニータの守備】

まずは大分トリニータの守備です。大分のやり方で気にして見るべきなのは、とりあえず3つで構いません。布陣、マッチアップゾーン、WBのボールサイドケアです。

まずは布陣。前回は4123に対して532でしたが、今回も同じ可能性があります。532の場合は、マリノスCBと同じ数だけ前線に残す事になるので、プレスも意識した攻撃型守備です。

もう一つ可能性があるのは、マリノスの4231の2に対応するための541です。こちらはまずはスペースを埋めきる事を意識しているので、より守備に比重をおいた守備です。

どちらも可能性としてあります。

続いて、マッチアップゾーン。これは前述しましたが、弱点を挙げるとすれば、サッカーにおいてはピッチが広く、縦ずれを起こされた時に脆弱さを見せます。例えば、HVが前方につり出された時を見れば一目瞭然です。


これを起こさないために、大分のCHは後ろのスペースも担当しています。

そのため、縦ずれのケースを引き起こすには、まずはCHを釣り上げる必要がありますので、スペースメイキングの素早い連動性がマリノスには重要になります。

これを意図的にマリノスがやれたら、完全な大分対策です。ただし、大分が541になるとボールサイドのSBにもマークが付くので、よりパススピードが求められます。

最後にWBのボールサイドケア。WBは他のポジションに比べて、ケアする領域が縦に長く。幅いっぱいのところでボールを受けようとすれば、マークに出てきます。

この守備は、FC東京の中央を固めながらサイドケアする考えとそれほど変わりません。SBを上げてサイドをケアし、CHを落とし4バックは維持する東京。5バックからWBを上げてサイドをケアし、最終ラインの4バックは維持する大分。形は違えど、4枚最終ラインは維持する事で、サイドもケアしながら、真ん中は割らせない守備です。

ここまでの説明だけで、いかに固い守備か分かって頂けたかと思います。でも、弱点はあります。全失点パターンを見た上で、大分がやられるパターンは4つに分けられます。

[大分の失点パターン]
①ふんわりクロスは見ちゃう
ゾーンディフェンスのチームが陥るパターンの1つで、死界からの飛び込みに弱いと東京戦では書きましたが、これも原理は同じです。ふんわりしたボールが最終ラインに飛んで来ると、ボールの落ちるゾーンと自分のゾーンの確認をするためにボールを待ってしまうので、ボールウォッチャーになってしまいます。
とても狙いどころなのですが、ちびっこの多いマリノス前線にあって、ふんわり名人はいないので、この形は意識的にはやらないでしょう。

②ビルドアップ失敗
自陣でのポゼッション指数がNo.1の大分ですから、多くのチームはプレスをかけて、ここを狙ってきます。そのため必然的に失点パターンとして多くなります。これは、大分の攻撃の項目で後述します。

③押し込んだ大分DFラインの前のスペースで、大分CHとヘッド勝負

後ろから上がってきた人を使うので、捕まえづらいのは当然ですね。しっかり押し込む必要があるので、これを意図的に突くのは難しい。これが失点パターンに出てくるほど、堅牢だと言うことです。

④WBを釣って4バックにしてからのクロスゴール
WBのサイドケアを解説しましたが、これを利用するのが、マリノスにとっては一番突きやすいかなと思います。
これは5バックのチームの弱点ですが、特に大分は、レイチェルが穴です。釣られた後の守備意識がそれほど高くありませんので、彼を釣ってから、4バックになりSB化したHVとの勝負に持ち込みたいです。

ケイタには、見事にレイチェルを釣り上げて欲しいです。
実は前回対戦でも、この形は作れていました。1失点目のひっくり返された時も、ブンちゃんがレイチェルは釣れていました。他にも試合中に何度かこの形を作っていましたが、WB裏やハーフスペースへ抜け出しても、ボール保持者からボールは出て来ず、チームとしての狙いがなかったと思います。でも、今のケイタとブンちゃんであれば出来るはず。この形が見たいです。


3,【大分トリニータの攻撃】

続いて、大分の攻撃です。最初は5221からはじまり、相手のプレスに合わせて、ビルドアップで4バック、3バックを使い分けます。
まずは4バックでしょう。5バックから4バックにするときは、両WBが上がり、CHの片方が落ちます。

守から攻が速いので、カウンターを狙うサッカーではありますが、ロングカウンターでの攻略が難しければ、しっかりと低い位置からポゼッションをしてきます。前述したように、疑似カウンターと呼ばれる方法です。自陣でボールを回して相手を誘いだし、マークのずれを作ってワンツーパス。前進配置になる斜めポジショニングが出来れば必ずやってきます。

このポジショニングが、相手が邪魔で難しい場合は、ワンツーが出来る様にSB化したHVやWBが中央の選手の横にポジショニングをし、簡単にワンツーパスをしてきます。
これで素早く前線にボールを届けます。とにかくスペースが空くまで後ろでボールを回すチームです。それがダメであれば、ゆっくりビルドアップをし、最終ラインをゾーン2に入れられるまで押し上げようとします。ここまで、来ると3バック気味になります。

というのが、大分の攻撃モデルです。良く統率されてます攻撃も。超合理的。
マリノスは基本的にプレスをすると思うので、試合の導入は疑似カウンターVSプレッシングの構図になるでしょう。
ただ闇雲プレスは危険なので、基本はマンツーマンプレスを実行し嵌める事。相手が4132であれば、マリノスの4231と噛み合わせは良いです

より詳細なプレスの仕方としては、

もし大分が4141で来た場合、CBのどちらかがしっかり前に出ることが大事です。

では守備と同じ様に大分の得点パターンを4つほど挙げてみましょう。

[大分の得点パターン]
①単純に最終ラインの裏に藤本抜け出し
これは、よろしくチアゴとパギのポジショニングで何とかなるでしょう。

②オナイウか藤本に当ててシャドーの連携で崩す
①よりも嫌なのはこちら。落とした後に受け直されるので、 食い付き過ぎない事が大事なのですが、うーん、東京戦をみる限りだと無策。やはりプレスで嵌めるしかないか。喜田が落ちれば解決しそうだけど、プレス前提だと厳しい。

③レイチェル抜け出しニアクロスに藤本
これは攻略してくるスペースが決まっているため、大分がやってくるスペース埋めをこっちもやるだけです。レイチェルの位置が高い時は、予めペナルティエリアのニアスペースを埋めてしまいましょう。

④HV(岩田)の上かりからクロス アーリーとニアの使い分け
マリノスが前回対戦でやられた形です。一番威力がある攻撃なのですが、岩田がいない事もあって、やって来ないと思います。

本当は、前回対戦のプレビュー記載のように、ミドルブロックを組み網を張るか、引いて守ってしまえば戦いやすいのですが、マリノスは絶対にそんな戦い方をしないでしょう。 プレスの方法とニア埋め。ここら辺は是非やって欲しいです。


4,【最後に】

さて、スタメン。

メンバーで言えば、マリノスはAJに変えて大津との事。和田に変えて広瀬。強度を上げる狙いかな。
大分は岩田が怪我で出場出来なさそうなので、確実に武器が1つ減ります。マリノスとしては、出来るだけ守備ブロック攻略に注力したいところです。

今回も色々書いてきましたが、一番の攻略法はサッカーの根源的な理。1VS1に勝つこと。難しい事は要らない。相手はマッチアップゾーンなので、ボールを持ったら目の前の相手をぶち抜く事。とってもシンプルなんじゃないかと。こっちの方が分かりやすくって良いじゃない。応援しがいがあるじゃない。仕掛ける選手に拍手を贈ろう。

ここまで読んでいただいた方、読後に何かのアクションを行っていただいた方に感謝いたします。

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