長谷川健太監督作品 東京横幅35メートル 2019 J1リーグ第17節マリノス VS FC東京 プレビュー

ついに折り返しを迎えるJ1リーグ。早いよ。順位表の上をFC東京が走り出してから、この17節を迎えるタイミングで、首位を狙える位置にいたいなと思っていたサポーターの方は多いのではないだろうか。特にゴールデンウィークらへんから。

ここまで、取りこぼしたなと感じるのは鳥栖戦と清水戦くらいで、怪我人が多い中でもチームはよくやっていると感じます。積み上げてきたものは勝ち点30。首位にいる相手は勝ち点33。前半戦のラストは、日程くんに仕組まれたような『大一番』です。

矛盾対決とか正直どうでも良いのです。去年の結果もどうでも良いのです。目の前の相手を圧倒して勝つマリノスを、現在首位の相手にも見たい。ただそれだけで、この一週間プレビューの用意をしてきました。タイトルは遊びです。内容は真面目です。では、行きましょう。

1,【FC東京の特徴】

今シーズンのFC東京は、言わずもがな、8節から首位に立ち続けているチームです。圧巻なのはその守備力で、ここまで10失点。12節までリーグ戦負けなしは素晴らしいスタートダッシュでした。しかし、直近の4試合を見ると1勝3敗。分岐点は13節セレッソ大阪戦。ポジショナルな守備に苦しみ、知ってか知らずか、東京の守備の弱点を突く様なゴールを挙げたセレッソに軍配。

建英の移籍は大きな痛手ではありましたが、どちらかと言えば攻撃面での痛手であり、失点し始めた事とはリンクしないと考えます。どちらかと言えば、しっかり分析するチームが増えてきた事と、ポジショナルプレーのチームが続いた事が要因ではないかなと。

FC東京のスタイルは守備からの速い攻撃であり、スピードのある2トップを活用したカウンターが持ち味です。守備の形は変幻自在で、相手のやり方に合わせる柔軟さがあります。そして、陣形をコンパクトにする事に関しては、リーグ随一です。その中でも、守備時の横幅は非常にコンパクトに布陣します。これは中央を塞ぐ事を目的としていますが、フットボールラボのデータを見ると、なんとその幅は35~6メートル。Jリーグのピッチ規格は横幅68メートルであり、4バックがすっぽりペナルティエリアの中に入ってしまいます。

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また、昨年ほどプレスをしてくる印象はありません。これはプレスを躱されるリスクを嫌ってのものだと思いますし、ブロック守備からのカウンターが上手く行っている間は、わざわざプレスをして、リスクを冒す必要がないという判断でしょう。

トランジションは速い方ですが、極端に速いわけではありません。速いというよりは、攻撃時には守備の事を、守備時には攻撃の事を考えた適切なポジショニングを取っており、セカンドボールの回収を、CHを中心にした中盤が実行出来ている事が大きいです。もちろん速さの要因には、ロングカウンター主体のサッカーである事もありますが、やはりゾーンディフェンスを実行するために、適切なポジションを取っている事が大きいと見ています。

ここら辺は、ゾーンディフェンス大好きな長谷川監督らしいチームだと思います。

2,【FC東京の守備】

では、FC東京の守備です。基本は442ブロックでゾーンディフェンス。それも、ただのゾーンディフェンスではなく、かなりの練度です。もちろん、連係してスライドします。しかし、必要以上に人に付いてはいきません。マークはするけど、パスコースを消すことが第一です。完璧ゾーンディフェンス。

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基本は442と書きましたが、相手のビルドアップが3枚ビルドアップの場合は、ボールサイドのSHを上げて、433ブロックになることが多いです。SHが空けたスペースをSBが埋め、SBのスペースをCHが埋めます。

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これは、プレス時も同じ考え方で、 前から順に相手に当てはめるプレスをしてきます。ただし、深い位置までのプレス時は2トップが先行気味になるため、2トップの裏は空きやすく、プレスバックもそれほどしてこないので、こちらが誘って釣られてくれるなら、むしろチャンスです。

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まあ、基本はブロックだと思って構いません。

そして、このブロックですが、前述のように横幅35m前後で行われており、縦幅においても30m前後と極端なまでに中央密集をしてきます。ボールがサイドに出なければ、相手がいかにサイドの幅を取ろうと、お付き合いしてくれません。

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この様に、ペナルティエリア内には最終ライン4枚が入ってしまいます。では、ちょっとサイドにボールを出してみましょう。

ボールがサイドに出ると、FC東京のSBが凄まじいアタックをかましてきます。この時、距離としてSHの方が近ければそこがアタックに出ます。仮にSBが出てきた時、チャンネルが空くのは想像出来ると思いますが、この場合はCHが最終ラインに落ちて、スライド幅を小さくしてきます。

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CH落としだろうと、スライドだろうと、サイドをケアしつつ、真ん中を固めて来るのは変わりません。狙いとしては、中央が準備出来ている(相手FWを捕まえている)状態で、サイドから苦し紛れのクロスを上げさせ、中央で跳ね返しCHでボール回収というイメージです。回収後は、2トップにロングパスをすぐに出せば、チャンスは作れます。

ここまでで、東京の守備の仕組みは理解したと思いますので、次はこの守備の問題点に入ります。

まず、横幅狭すぎ問題です。選手の距離が近い方が、守備ゾーンの密度は濃くなりますし、スライド時にも動く距離が少なくて済みます。

ただ、近ければ良いというものでもないのです。片方のサイドにボールを動かせば、マークをしなければなりません。すると、35mという幅だと逆サイドのHSから向こうが空く事になるのです。

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こうなれば、こんな形や

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こんな形の方が良いかな

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この時HSに人がいることも大事ですが、中央に相手のDFをピン止めしておきたいので、必ず中央にも味方選手がいる事が大事です。

続いて、アーリークロスはボールウォッチャーになる癖ある問題です。

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これはゾーンディフェンスの特徴でもあります。球技全般で同じ特徴が現れますが、どうしても、ゾーンディフェンスはボールの位置で陣形を変えねばならないので、選手はボールを見ざるをえません。

視野が固まってしまうと、死角が生まれやすく、完璧なゾーンディフェンスであればあるほど陥る現象です。セレッソはまさしくこれで点を取っているので、ここも狙いどころです。
後は、森重のアドリブ守備問題ってのがあるのですが、4000文字を超えそうなので止めましょう。ここまでで充分ですね。

3,【FC東京の攻撃】

続いて、FC東京の攻撃ですが、もっとも怖いのはロングカウンターです。決してロングパスの精度が高くない東京にあって何故怖いかと言えば、2トップが2人とも足が速いためです。1人だけであればチアゴで対応出来ますが、東京の2トップとマリノスの2CBがよーいドンをすれば、高確率で2対1の局面を作られてしまいます。

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仮に、畠中がだいぶ下がり目のポジションを取ったとしても、1次攻撃は防げますが、今度は低い位置で東京2トップのプレスを受ける可能性が高くなります。これも危険です。

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このセカンドフェイズを乗り越えるためには、DFラインに対しての喜田のサポートは不可欠ですし、ゾーン1に入ったら、ディフェンスはチャレンジをしてはいけません。裏のスペースを空けないようにディレイをする事が求められます。東京の2トップはドリブルで剥がせるタイプのため、チャレンジして剥がされると失点を覚悟しなければなりません。

ドリブルとパスを高度に駆使する建英はいないため、ディレイさえしてしまえば、パギがコースを読んでセーブする事はそれほど難しくないでしょう。

もちろん東京の2トップが前へ行く気持ちが強い様であれば、オフサイドトラップも対策方法の一つです。また、それ以外の対策としては、そもそもロングカウンターの出所を押さえてしまう方法もありますが、今までのマリノスを見ているとそれは難しいので、やはり質の高い判断がマリノスの2CBには求められると思います。

ここまで来れば、後は遅攻に備えるだけです。

基本的な遅攻はオーソドックス442のため、SHかSBが絞ったポジションを取り、幅取りした方がクロスを上げます。

最終ラインからのビルドアップは3枚になる事が多いですが、これは相手のファーストブロックが2枚であるケースが多いためで、1枚であれば2CBだけでビルドアップをしてきます。ここら辺は、枚数を見て柔軟に変えてくるでしょう。

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ただ、押さえるべきは前線に上がってくるメンバーなので、ビルドアップにはどうぞ人数をかけてくださいというスタンスで良いでしょう。最後のクロッサーとクロスのターゲットを押さえる事が大事です。試合の序盤であっさりプレスを躱されるような場合は、ビルドアップの入り口には気を配らなくて良いわけです。

建英が抜けて以降は、最後はクロスというのが分かりきっているため、東京が攻撃に人数をかけて押し込み始めると、スペースが埋まり、守る側としては準備がしやすいでしょう。

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4,【最後に】

ではスタメン。

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マリノスはマルコスが戻ってきて、清水戦の形に戻すと思われます。東京は右サイドハーフに誰を入れるかですが、ナサンホが第一候補に挙がります。

ボールを支配するのはマリノスでしょう。色々と書いてきましたが、結構、攻略法は単純です。攻撃はHSを狙い撃つ事、守備はロングカウンターに備える事。しっかりと弱点を突けるならば、東京というチームは怖くはありません。強いマリノスを建英にも見せてあげましょう!

ここまで読んでいただいた方、読後に何かのアクションを行っていただいた方に感謝いたします。

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