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23/24 リーグアン 前半戦総括

1年の最後の月である12月は「師走」という表現を持っていますが、実は12月にはたくさんの異名があるのです。

冬の最後の月を表す「季冬」・弟が末を意味することから「弟月」・春を心待ちにする「春待月」・年の終わりを示す「歳極/年果つる月(年果)/限月/極月/成終月」などなど。

ことば遊びは一種の遊戯としてもうんちくとしても楽しむことができます。1年はあっという間。思えば8月に始まった今季のリーグアンも前半戦が終了しました。今回は「前半戦総括」と題して約4ヶ月を振り返りましょう。



全チーム寸評

1位 Paris Saint-Germain

12勝4分1敗
総得点42 総失点14

PSMの体たらくと治安の悪化が懸念された補強面により誰もが不安な気持ちを抱えて始まったシーズンは、リーグ戦では最低限の結果を維持。そのリーグ戦で顕になっているボロが強度の高いCLに表れている。今季は改革の第2章に取り組んでいる状況ではあるが、ここ数年""で終わっているため、リーグ優勝を前提に最低でもCLベスト8は狙っていきたいところ。



2位 OGC Nice

10勝5分2敗
総得点19 総失点9

数字が全てを物語るように、34歳のイタリア人指揮官が堅守速攻で培ってきたチームを改革し、イタリアンチックな戦い方で白星を積み重ねてきた("ウノゼロ"勝利は5試合)。保持段階では最終局面のクオリティ不足が懸念であり、敗北を喫した2試合はいずれも先制を許した試合である。「先に取れば天国、取られれば地獄」の綱渡りのような状況が今後も続くかは1つの注目ポイント。



3位 AS Monaco

10勝3分4敗
総得点33 総失点22

恩師の元で復活した南野拓実を中心にロケットスタートに成功。PSGに次ぐ総得点数を誇る一方、先制点を奪われたのが10試合・総失点22という数字はアンバランス。まさに"諸刃の剣"であり、乱打戦は得意ではあるが、監督は疎かな守備対応を嘆いている様子。本気で優勝を狙うのであれば、多くの選手が離脱する1月に向けて積極的な補強を敢行する必要がある。



4位 Stade Brestois 29

9勝4分4敗
総得点25 総失点15

この順位にいることに驚きを隠せない人もいるだろうが、昨季の主力のほとんどを残留させたスカッドはリーグアンの中では"中の上"にあたるレベル。ビゾット、ブラシエ、レース・メルー、デル・カスティジョが支える強固なセンターラインを軸に昨季は失敗したスタートダッシュに成功。上位に対する成績が全く振るわないのが懸念点だが、下位相手に安定した戦いぶりを続けたい。



5位 LOSC Lille

7勝7分3敗
総得点21 総失点14

新戦力がフィットせず、得意のムービングスタイルが研究された序盤は苦しんだが、フォンセカ監督の柔軟な采配でほぼ安定した順位にいた。第17節で敗れるまでは公式戦15試合無敗を維持していたのも流石。要のデイビッドも本来の状態を取り戻し、チームとして目標のCL出場圏内に向けてギアを上げたい。個人的にはECLも含めてカントリーランキングに貢献してくれることを期待。



6位 Olympique de Marseille

7勝6分4敗
総得点25 総失点14

騒がしい外的要因によりチームが崩壊する可能性もあったが、忠誠心を示した会長と人心掌握術に長けたガットゥーゾによって、後半戦への望みを繋いだ。ピッチ内ではガットゥーゾが本来やりたいスタイルとは遠ざかっている印象ではあるが、このもどかしさをどう解決するか。AFCONにより層が薄くなる1月の補強面においては、ベナティア新SDの腕の見せ所。



7位 RC Lens

7勝5分5敗
総得点21 総失点17

絶対格を抜かれ、21年ぶりに参戦するCLは並行不可能との見立てが圧倒的に多かったが、リーグ戦では11戦無敗・ELプレーオフ進出と予想以上の粘りを見せた。エーズ監督が探し続けたサメドの相棒が固まりつつあり、残るは前線のワイが結果を残すだけ。8試合でわずか1敗という、圧倒的な強さを誇ったホームの大声援を背に2年連続のCL圏内も夢ではない。


8位 Stade de Reims

8勝2分7敗
総得点22 総失点23

引き分け数2というリーグ最小の記録が示すように、「勝つか負けるか」の波が大きかった前半戦。多くの視聴者はモヤモヤが溜まっていると思うが、昨季の躍進を支えた主力が退団して層が薄くなった状態を踏まえれば、ここまでやれたウィル・スティル以上の適任者はいない。両翼を担う日本人の離脱と共に、監督のお目に叶う適材適所の人材が冬のメルカートで見つかるかが焦点。



9位 RC Strasbourg

6勝5分6敗
総得点18 総失点22

夏にオーナーが変わり、若返りかつ多国籍集団となった序盤はヴィエラ監督の理想が強すぎるがあまりに低迷していた。しかし、4-2-3-1の布陣が固まった11月以降は3勝3分1敗と持ち直した。技術が稚拙な分、約束事を決めたことで戦い方がはっきりした印象がある。その4-2-3-1のシステムを陰ながら支えるのは36歳のガメイロであり、彼の勇姿を中山淳氏以上に注目したい。



10位 Stade Rennais FC

4勝7分6敗
総得点23 総失点22

周囲の期待を裏切ってしまった感は否めない。ジェネジオは新戦力を含めたスカッドの整理ができず、心身の疲労も溜まって途中退任。舞い戻ったジュリアン・ステファンは守備面の整備から着手したが、我の強い監督がウィンターブレーク期間中にどのような施しをするかが鍵。ELも墓穴を掘るような始末となり、上位に安定してきた近年に比べれば最悪のシーズンになる可能性も。



11位 Le Havre AC

4勝7分6敗
総得点16 総失点19

開幕前の不安感に比べればよく粘ったと評価すべきかもしれない。当初はリーグアンで戦うだけの力はないと予想していたが、エルスナー監督が相手に応じて布陣を変更するのは相当リスキーだったが、まずまずの結果を残した。前半戦のハイライトはなんと言ってもニースに今季初・唯一の複数失点を喰らわせた第16節。主軸のクジャエフ、アリウィ、バヨあたりがもうひと頑張りしたいところ。



12位 Montpellier HSC

4勝7分6敗
総得点19 総失点21

爆竹投下事件、バス襲撃事件、監督に対する選手の暴行事件という残念なニュースが多かった前半戦。攻撃的な選手の守備負担を減らして脳筋的にカウンターで攻め切る戦術は、前線の選手がスランプに陥るとトーンダウン。攻守のバランスを整えるために後ろの枚数を増やしても結果は向上せず。現在離脱中のノルダンが復帰すれば攻撃の脅威は増すはずだが...



13位 FC Nantes

5勝3分9敗
総得点19 総失点28

積極的に投資して獲得した新戦力の活躍と得点源モハメドの覚醒により、良いスタートを切ることはできた。しかし、そこは我らがキタ会長。暗雲が立ち込めるとすぐに監督を交代し、ギャンガンで一時代を築いたグルヴェネクを招聘。初陣でニースに今季初黒星をつけたものの、その後は3連敗。冬に複数選手を失うリスクがあり、昨季の二の舞になってもおかしくはない。



14位 FC Metz

4勝4分9敗
総得点16 総失点27

誰が何と言おうとも、低いブロックと共にアフリカの強靭なデュエルを活かしてボールを奪い一発に繋げる戦術を貫いた。断トツ最下位の支配率に加えて攻撃面のスタッツはリーグ低水準。その勢いが持続するかは不安ではあるが、かねてより昨季リーグドゥ得点王に輝いたミカウタゼが出番を求めて復帰するとの噂がある。彼が復帰すれば一発の精度は間違いなく向上するだろう。



15位 Olympique de Lyon

4勝4分9敗
総得点16 総失点27

新オーナーのいい加減な財政面から始まり、ブラン解任、OBグロッソ招聘&解任、バス襲撃事件とクライシスな状況がピッチ内外で続いた。誰もが残留の希望すら薄い中、11月に就任したピエール・サージュ暫定監督のもと最後は3連勝。DNCGとの折り合いがついて補強制限が緩和された1月の市場ではどれだけ実力者を獲得できるか注目。一気に目標は残留→トップ10入りに。



16位 Toulouse FC

2勝8分7敗
総得点15 総失点23

新監督に期待を寄せる者は多かったが、リーグとの並行は難航(10試合勝利なし)。ELでは感動を与えてくれたが、残留争いに巻き込まれるのは一番避けたいこと。昨季の主力がごっそり抜かれた苦しさはあるが、一番責任を感じるべきなのは、昨季のこの時期に無理やり前監督のアシスタントコーチを解雇して、現監督を連れてきた上層部であるのは間違いない。



17位 Lorient FC

2勝6分9敗
総得点21 総失点35

昨季途中から主力を抜かれている分、厳しい戦いが予想されたが、まさにその事態に。リーグワーストかつ唯一の総失点30点台という醜態を晒し、前半戦を終えた。フェーヴル頼みの攻撃は相手に構えられると何も生み出せていない。最後に最大のライバルに0-4の敗北を喫し、ル・ブリ監督は地元にゆかりのある人物で愛着はある一方、年明けは別の監督がベンチにいるかもしれない。



18位 Clermoet Foot 63

2勝5分10敗
総得点11 総失点26

昨季の躍進に貢献したほとんどのメンツの調子も悪くなく、総失点26も平均に近い数字。ならばなぜ最下位なのか原因を探るならば、得点源のキエイの不調(総得点はリーグワースト)と監督が今季限りで退任を公言したことにより、モチベーションの低下が考えられる。内容は悪くないが、本来であれば残留争いの方が納得の戦力であり、むしろ地元民は感謝の方が多い一面もある。



リーグアン順位表
Prime Video Sportより



前半戦を終えての雑感

今季視聴した試合は91試合(当然全てフルです😤)。18クラブ制に変更したことで、いち視聴者としてはミッドウィーク開催が1節しか無かったことはありがたかったです。

普段はA5のノートに隅々までメモするようにしながら試合を視聴してます。内容は恥ずかしいのでモザイクをかけますが...

質問があったのでこちらに画像載せました
スタッド・ランス×リヨンにて


さて、18クラブ制にしたことでまず取り上げたいのは競争率を増したことです。順位表にも表れているように、中位のクラブは密集状態にあり、毎週毎週入れ替わる状態が続きました。ほとんどのクラブが試合に向けて1週間の猶予がある分、充分な体力の回復と共に入念な対策を練りやすくなり、戦術レベルはともかくオープンな試合は昨季に比べれば減った印象です。おそらく後半戦もこういった抗争が続くでしょう。

さらに、試合までの間隔が変わったからこそ、逆に調整が難しくなったチーム・選手もいたかもしれません。とりわけヨーロッパ戦線に挑んだチームはこの半年において、順風満帆にリーグと並行できたチームはありません。全てのチームが次のステージに駒を進めたものの、構図は昨季とほとんど変わっておらず、自分は4月まで残っているのはクラブはあるのかしら😅というスタンスです。

今季の話題性としては、サポーターの愚行が大いに目立ったことが残念でした。1部と2部合わせて計9件のサポーターによる事件が発生しました。LFP(リーグ連盟)はナント×ニースの殺傷事件が起こったタイミングで、長距離移動を伴うアウェイサポーターの入場禁止という策を講じましたが、それならアウェイスタンド創設の意味とはという問題が生じてしまいます。ただでさえ日本では注目度の低いリーグなのに、悪い話題ばかりが人気メディアに取り上げられて、イメージダウンさせてしまうのは心苦しいです😭



そして、注目したいのが得点王争い

リーグアン得点王争い

エンバペが独走していますが、他リーグに比べれば2位以下はかなり拮抗しています。これも先述の通り、1週間の猶予を活かして対策が練りやすくなった分、特に得点に絡みやすいストライカーたちは厳しいマークが寄せられていました。(誰かが独走するのは今に始まったことではないですが...)



前半戦ベストゲーム3選

ニース×トゥールーズ(第13節)

2023/10/26
ニース 1-0 トゥールーズ

横長の六角形のような布陣でビルドアップをする今季のニースですが、本当の意味で苦しめられたのがこの試合。トゥールーズの4-4-2の外切り中嵌めプレスがハマり、前半は膠着する展開となりました。ニースが1点リードした後半は立て続けにトゥールーズが猛攻を仕掛けますが、理不尽的な固さで1点を死守。両監督の先読みの攻防含めてレベルの高い試合となりました。

この試合を載せた「週刊リーグアン」がこちら


リール×PSG(第16節)

2023/12/18
リール 1-1 PSG

当時の状況は、公式戦15戦無敗のリールとリーグ戦10試合無敗のPSGによる「天王山」の位置付けになる一戦。それにふさわしいスタジアムの熱狂のもと、互いに探り探りの状態だったことも否めませんでしたが、非常に内容の濃い試合になりました。PSG側はうやむやが残る試合だったと思いますが、個人的には何度も見返したくなる試合です。

この試合を載せた「週刊リーグアン」がこちら


モナコ×ストラスブール(第2節)

2023/08/21
モナコ 3-0 ストラスブール

「南野様々」だったこの試合。昨季はリーグアンの強靭なデュエル・フィジカルについていけず、再起を図った今季。恩師ヒュッターのもと、開幕戦のアシストに続いて2ゴール1アシストと全てのゴールに絡んで汚名返上の一歩を進めた試合。昨季との違いをまざまざと見せつけ、我々が見たかった「モナ王」こと南野拓実が復活の狼煙をあげました。

この試合を載せた「週刊リーグアン」がこちら



順位予想

開幕前にも「本気の順位予想」と題してチーム状況を踏まえて予想してみました。

比べてみると...?
結果は以下の記事にて🤭


質問箱でも頼まれたので、後半戦の順位予想をします(本気かどうかはさておいて...)
→一応申し上げておきますが、こういったことはあくまでも個人の遊びなので!(占い🔮と一緒)

理由は書きません!仮に気になる方がおりましたら、気軽にルシアン宛にお問い合わせください!



おわりに・今後の予定

親友に勧められ、リーグアンの布教活動をさらに発展させるべくYouTubeチャンネルを8月に立ち上げました。

1人では心許ないため、パートナーを探していたところ、🇫🇷語ネイティブかつ現地からの情報を提供可能な方がいて、無理やりお願いして一緒に活動してくれることになりました(相方には頭が上がりません🙏)。

編集者を集い、4人体制で始動したものの最初の企画収録後から連絡が途絶え、新たな編集者を探す運びになりました。現在は新たな編集者と共に様々な企画を練っている段階です。

収録に関しては多くの方にご協力いただき、順調に進んでおります。ただ、少々忙しくて編集作業が追いついていないのはお許しください、年末にかけて投稿するので🔜

相方は既にフランスに在住していますが、いずれ私も現地からの情報をお届けすべく、準備している段階です(詳しくは個人情報なので🙅‍♂️)。noteも含めて多くの方にリーグアン及びフランスのフットボールを知っていただけるように邁進します。(前半戦ベスト11企画はYouTubeでやるのでお楽しみに🤗)


最後は少々外れた話題になってしまいました😅
皆様今年も1年間ご苦労様でした、良いお年を!

Merci d’avoir regarder!
Je vous souhaite une bonne fin d'année!

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