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週刊リーグアン#7

ミッドウィークにイングランドではカラバオカップ、スペインとイタリアではリーグ戦が行われ、改めて今季から18クラブ編成による日程緩和のありがたみを感じたリーグアン。

ちなみに今季は17節以外(12月中旬予定)は全て週末に行われる予定になっています。昨年度に比べて4試合も減った影響は大きく、上位陣はヨーロッパのコンペティションも並行しやすくなったのは間違いないです。

今回は「ストラスブール×RCランス」、「モナコ×マルセイユ」、「スタッド・ランス×リヨン」の3試合について前回に引き続き戦術ボードを使って振り返っていきましょう。(投票してくださった方々ありがとうございました、低クオリティーながら頑張ります😭)



①CLを見据えた新機軸と戦い方による勝ち点3

まずは先週最初に開催された「ストラスブール×RCランス」から。ストラスブールは内容は最悪ながらアビブ・ディアラの虎の子の1点でダービーを制した前節。RCランスは苦しみながらもトゥールーズとの接戦を制して今季初白星をホームで飾り、両者共に良いムードの中で臨むことができたと思います。

しかし、この試合で光ったのは、ミッドウィークのCLアーセナル戦を見越してのフランク・エーズ監督の采配でした。

前半はボールを握る展開が多かったRCランス。この日の中盤はアンディ・ディウフとナンパリス・メンディというどちらも新加入の選手でコンビを組みましたが、目立ったのはメンディをアンカーにしたRCランスの新たな配置・取り組みでした。

RCランス(黄)の攻撃時の配置とストラスブール(青)の守備時の配置

この図から現れているように、中盤の1人をアンカーにしてもう片方は前に出るボランチの配置を取りました。今季序盤はA・ディウフとサメドを横並びにする配置をとっていましたが、この試合では縦関係を築きました。

そして相手最終ラインの前に4人を並べる、3-1-2-4という斬新な形でビルドアップ・フィニッシュワークを構成しました。サメドより配給能力の高いメンディをアンカーにしたことで、3バックを含めた縦パスの供給+前線は動きすぎずに、周囲の状況を見て背後を狙ったり降りてきたり。

とはいえ、この試合では被カウンターの起因になる縦パスの供給は消極的でした(理由は後述)。そのため、4-5-1の低いブロックを敷くストラスブールの守備に攻め手を欠く時間がほとんどでした。それでも、序盤のセットプレー崩れの際(16分)に先手を取ることができたのはかなり大きかったと思います。

前回の記事と変わらず、攻撃時はI・ドゥクレをアンカーに上げるヴィエラ監督得意の4-3-3に取り組んでいるストラスブール。この日は左肩上がりの3バックにしてみたり、純粋な4バックにしてみたりと試合中に何度も布陣を変えて打開策を練りましたが、明確な攻撃のオプションが無く、保持しても蹴らされて回収されるというサイクルに陥っていました。

4バックにすれば、WGとインサイドハーフとSBのトライアングルを形成していこうという試み、左肩上がりの3バック気味にすれば、前節の得点時のように大外アンジェロが内側に運び、空いたスペースをディアラが突こうという試みも垣間見えましたが、継続性が無く、この試合は結局ネットを揺らすことができませんでした。

試合が動いてから、目立ったのはCLアーセナル戦を見込んでのRCランスのアプローチでした。特に後半からは自陣で低い守備ブロックを敷きながら、カウンターは前線へロングボールを放り、手数をかけずに少数人数で攻めていこうという構え。大事な1点を守り切って勝ち点に繋げるという戦い方は、圧倒的にボールを支配されるのが予想されるアーセナル戦のシミュレーションにはうってつけだったでしょう。

両チーム合計で総シュート本数17本(枠内わずか4本)というなんとも塩試合の構図ではありましたが、3-1-2-4の新機軸と共に大一番を見込んでのエーズ監督の采配・マネジメントが大いに実った試合でした。私はまだ試合を見れていませんが、この戦い方をシミュレーションできたRCランスは見事アーセナルに逆転勝利🎉
しかし、うかうかしていられないのも事実です。次節は引き分け以下では許されない試合が待っています(後述)。

ヴィエラのやりたいことが現実にならないストラスブール。彼の理想と現実との間に大きなギャップが生じているようにも感じますが、まだ昨季の序盤に比べればスタッド・ドゥ・ラ・メノーの雰囲気は上々です。DAZNに気に入られてるのか分かりませんが、次節のナント戦も配信されるようです。アンジェロ君が着実に育っているので、チェルサポの皆さんいかがでしょうか笑



②弱点の明るみと今後への期待

スタッド・ルイ・ドゥに多くの観客が集まる数少ない試合の1つ、「モナコ×マルセイユ」のダービーが開催されました。両者共に前節は悔しい内容でダービーマッチに敗れ、立ち直りが期待された試合。前回の記事では、マルセイユが受け身になることを予想していましたが、主体性を持ち続けていたのはマルセイユの方でした。

ガットゥーゾが新監督に就任したマルセイユは、彼が得意の4-3-3の布陣に変更して臨みました。その変更による戦術の狙いは開始1分で体現化することができました。

マルセイユ(青)の1点目の構図

ホアキン・コレアとオーバメヤンとのポジションチェンジは数回しか行われませんでしたが、狙いとして速いテンポの1タッチで繋いでいくこと、これが相手のハイライン守備とマッチして見事に先制点につながりました。

以降も、右サイド中心にトライアングルを形成し、1タッチで攻め上がっていく姿勢を披露したマルセイユ。この試合では、2トップの脇にいるSBにボールが入ったとこから連動し、ボールを持ちすぎることなくトライアングル中心に攻めていきました。さらに、奪われた後の回収も複数人で囲んで回収するための体制が整っていました。

マルセイユの攻撃時の狙い
SB、CMF、WGのトライアングルを1タッチの繋ぎで有効に


最終的に逆転勝利という形で勝ち点3を獲得したモナコでしたが、前節に引き続き課題が徐々に明確になってきた試合であると振り返りました。

まずは攻撃面から。4-3-3のやや重心が後ろにあるマルセイユの守備に苦労していた印象です。この試合ではかなり左肩上がりのつくりで、左サイドに人数を集めて打開を図りました。

モナコ(赤)の攻撃時の配置

トップ下のアクリウシュはやや左寄りのポジションを取ることが多かった印象ですが、圧倒的に支配してチャンスを作り出したシーンはほとんどありませんでした。1点目はスローイン、2点目は素早いリスタート、3点目はGKのFKというように、全てリスタート(流れの切れ目)からの得点でした。

ゾーン守備の限界と切り替え時に集中が切れるマルセイユの課題でもありますが、得点はできたもののいつも通りの遅攻は南野やゴロヴィンがいてこそのコンビネーションであったことを痛感しました。ただ、メンバーが揃っていなくとも、違った攻めの手段があるという捉え方もできます。つまり、今後は相手に応じて複数のオプションを併用できるというポジティヴな一面もあります。

しかし、もっと不安を感じさせたのが守→攻のトランジション。前節ニース戦では、中盤と前線の間を取り持つ南野や、球出し役のカマラが徹底的に潰された印象でしたが、特に今節は南野拓実の不在を痛感したでしょう。

モナコの守備の課題

この図を見てもらうとわかるように、モナコは基本5バックと中盤の2枚で耐える守備網を形成しますが、前線との間には大きなギャップが存在します。通常であれば、このギャップを活かして南野拓実がターンして前線に繋ぐという明確な役割がありましたが、これを行える選手がこの試合には現れませんでした。

バログンもベン・イェデルも競り合いにめっぽう強いわけでもなく、ある程度守備免除を許されている立場ですので、自陣深くで回収した時に前線まで送れない・ミドルゾーンで回収されてしまうという懸念点が存在します。ニース戦の教訓のように、このゾーンを相手に徹底的に潰されたら何もできなくなるように、これはチームとして徐々に明るみになってきた弱点であると分析しました。

他にもCBが競った際のプレスバック等、気になる点はいくつかありましたが、まずはこのメンバーで前節の黒星を引き摺らなかったことは評価すべきです。内転筋を痛めた南野拓実の出場は叶いませんでしたが、彼の重要度がどれほどまでなのかが改めて理解することができた試合だったと思いますが、その働きが評価されて、カタールW杯以来となる南野拓実の代表復帰が叶いました!コンディションさえ戻ればトップ下等で10番が帰ってくるかと思われますが、まずは週末の日本人対決となるスタッド・ランス戦の復帰・活躍を期待しましょう。

モナコの不安要素以上に今後に期待をもたらしてくれたマルセイユ。4-3-3ができる人材が揃っていたというのもありますが、短期間でここまで仕上げてくるとは正直予想していませんでした。確かに課題は残る新監督初陣だったと思いますが、この連敗から立ち直る強さが今後求められてきます。その強さというのは、肉体的にも精神的にも成長していく必要がありますが、“真っ当な”マルセイエーの不安を拭うべく、ミッドウィークのブライトン戦に臨んでほしいと思います。



③言い訳が許されるのは残り2週間

ミッドウィークのリール戦を制し、中村敬斗の初ゴールも飛び出したスタッド・ランス。今節ホームに迎えたリヨンは、昨年度の対戦で伊東純也のヘッドによるリーグアン初ゴールが飛び出した、日本人にとって思い出深い試合でもあります。

ファビオ・グロッソ新監督2試合目となったリヨン。前節スタメンから外れたシェルキは先発出場を果たしましたが、キャプテンのラカゼットはサスペンドと、またベストメンバーで臨むことが叶いませんでした。

ブレスト戦は相手の猛攻に耐えきれず、終盤に点を入れられてしまった格好でしたが、前節の反省を踏まえてか、グロッソは守備の手入れを丁寧に行いました。

リヨン(青)の守備配置とスタッド・ランス(赤)の攻撃配置
例)右サイドから

トリソをトップ下に置くことで、アンカーのマトゥシワが下がって可変型3バックのビルドアップをするスタッド・ランスに対して前線は3対3の数的同数を作りました。スタッド・ランスはこれに対して、前線の脇のSBから前進を図りましたが、リヨンもこの動きにしっかりスライドして対応していました。

グロッソがどういう采配をしてくるか読めなかったこともあって、ウィル・スティルは前節と全く同じメンバーを採用しましたが、逆にグロッソがスタッド・ランスの前節を分析した上で入念に対策を練ってきた印象がありました。

しかし、守備では相手の攻撃をシャットアウトすることができたリヨンでしたが、肝心の攻め手が全くない状態に。重心が後ろにかなり重く、相手のプレスも左サイドの連携で交わすことはできたものの、フィニッシュに全く繋がらず。

フリーマンとして攻撃を活性化しようと左右に顔を出すシェルキの奮闘虚しく。ボックス内でママ・バルデが孤立する姿が目立ちましたが、これだけ重心が重ければ致し方のないことかと。

最悪なことに、攻撃のオプションは全く無かったが準備してきた守備戦術を褒めようかと思った前半ATに先制点を献上。スタッド・ランスのカウンターを防いだところから、アントニー・ロペスのタグリアフィコへのパスは繋がらず、スタッド・ランスの最大の武器である伊東純也への寄せが甘くなり、ディオマンデは完全にムネツィをフリーにしてしまいました。

こちらも攻め手を見つけるのに苦労したスタッド・ランス。図に現れているように、伊東とフォケで吊り出したスペースにムネツィが突っ込むというシーンはありましたが、限定的でした。されど、守→攻のトランジションから相手の寄せが甘くなったところをついて良い時間帯に先制できたのが何よりでした。アシストした伊東純也は第2節以来のアシスト記録が付きました㊗️ ただ、前節から取り入れている、自陣深くからのダラミーを走らせるカウンターはことごとくオブライエンに潰され、やはり打開策は少なかった印象です。

後半も同じような状況が続きましたが、シェルキと負傷したママ・バルデが下がったリヨンはサイドにボールは入るものの、数的優位も質的優位も作り出せず、ジリ貧の状態が続きました。さらに最悪なことに、71分には途中出場ルプナンのロストから追加点を許してしまい、勝負あり。終盤は悲壮感だけが漂いました。

立て直しが期待されたOBのグロッソの「就任したばかりだから」という言い訳が許されるのはあと2週間ぐらいでしょう。1ヶ月で劇的な変化とまでは言わなくとも、何かしらのメソッドは入れなければならない緊急事態。そんなに焦ることないじゃんという意見もあるかもしれませんが、“あのリヨンが降格圏内なので”。ですから、次節のロリアン戦は何としてでも勝たなければなりません。過去の分析記事を読むと、彼の理想とするスタイルには選手の質が伴っていないようにも感じますが、次節以降は容姿だけではなく何かポジティブな変化をもたらしてほしいと思います。

勝利したスタッド・ランスはやや波はあるものの、連勝を果たしました。今回の日本代表にも中村敬斗と伊東純也は順当に選出されており、また数字という結果を残してくれることを期待したいです。そして、次節は南野拓実が所属するモナコとの上位対決。昨年度のスタッド・ランスホームの対戦では、南野拓実が移籍後初ゴールを決めて勝利に貢献しましたが、代表戦を前に結果を残して、良い状態で帰国してくるのはどちらでしょうか、必見です。



今節の結果まとめ

2023/09/30
ストラスブール 0-1 RCランス

2023/10/01
クレルモン 0-0 PSG
モナコ 3-2 マルセイユ
スタッド・ランス 2-0 リヨン
ル・アーヴル 0-2 リール
ニース 0-0 ブレスト
トゥールーズ 3-0 メス

2023/10/02
ロリアン 0-3 モンペリエ
レンヌ 3-1 ナント

まさかの首位攻防戦となったニースとブレストの1戦はスコアレスドロー。[Derby Breton]で6試合ぶりの勝利を飾ったレンヌ。試合後には恒例のマスコット同士によるコント?も行われなした。


第7節終了時点での順位がこちらです。



次節の注目ゲーム

散々日本人対決を煽っておきながら、RCランスのところでなぜ「次節は引き分け以下では許されない」と綴ったのか。理由は、最大のライバルであるリールとの[Derby du Nord]北部ダービーが第8節に開催されるからです。

同じ北部地方に位置しながら、炭鉱業で栄えたランスと学者が集うリールとの間には歴史的な背景も含めてサッカーを中心としたライバル関係が築かれています。両都市間は36kmしか離れておらず、勝った方が地域の覇権を主張できる、地域性を絡めた熱狂的なダービーです。

個人的にはフランスで一番好きなダービーであり、多くのサポーターが集う両クラブのスタジアムもいつもとは少し違う、どこか殺気じみた雰囲気も含めて見逃せずにはいられないダービーです。対戦成績は117試合で、リールの45勝、RCランスの37勝、35の引き分け。昨シーズンは前年にシーズンダブルを喰らったリールがホームで勝利し、猛犬復活の狼煙を上げましたが、今シーズンはどうなるでしょうか。

RCランスはここにきて公式戦3連勝を飾っており、なかでも強豪アーセナルを撃破したことでボルテージは最高潮に達しています。リールもル・アーブルに勝利はしたものの、まだ波には乗り切れていません。熱気と殺気と狂気に満ちたStade Bollaert-Delelisで開催される[Derby du Nord]はDAZNで配信予定です、お見逃しなく。



23/24 リーグアン 第8節日程(日本時間)

2023/10/07
 4:00 ストラスブール×ナント

2023/10/08
 0:00 メス×ニース
 4:00 スタッド・ランス×モナコ
20:00 マルセイユ×ル・アーヴル
22:00 ブレスト×トゥールーズ
22:00 リヨン×ロリアン
22:00 モンペリエ×クレルモン

2023/10/09
 0:05 RCランス×リール
 3:45 レンヌ×PSG

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