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来季はヨーロッパの舞台へ! オナイウ阿道が所属するトゥールーズのドラマ

かつては現鹿島アントラーズ所属の昌子源が所属していたフランス南部の街をホームタウンとするトゥールーズFC。

2019/2020シーズンは成績が振るわずにリーグドゥに降格しますが、1年で復帰したのが今シーズンでした。オナイウ阿道はちょうど2部時代に加入し、10得点の活躍でチームの昇格に貢献しました。

さて、つい先日そのトゥールーズがフランスの国内カップ戦クープ・ドゥ・フランスで優勝という話題はオナイウ阿道が所属していることもあって注目を浴びました。オナイウ阿道が来季も残留することになれば、ヨーロッパリーグを戦う日本人がまた1人増えることになります。

ここからはそのトゥールーズに関するちょっとした話題を綴りたいと思います。



決勝までの道のり

準決勝アヌシー戦

ラウンド64 vs ラニオン(A・5部) 7-1
ラウンド32 vs アジャクシオ(H・1部) 2-0
ラウンド16 vs スタッド・ランス(H・1部) 3-1
ラウンド8 vs ロデズ(H・2部) 6-1
準決勝 vs アヌシー (A・2部) 2-1

ラウンド64の5部相手から5試合を勝ち抜いて見事決勝に辿り着きました。この5試合のうち、注目すべきは2試合。

ラウンド16では伊東純也が所属するスタッド・ランスと対戦。当時のスタッド・ランスはウィル・スティル体制以降無敗が続いていましたが、公式戦初黒星をつけたのがこの試合でした。伊東純也は先発して68分までプレーしましたが、オナイウ阿道はベンチから出てくることはありませんでした。

もう1つは準決勝。対戦したアヌシーは1回戦から登場し、ラウンド32からの2試合をPK戦で勝ち上がると、ラウンド8ではアウェーでマルセイユをまたPK戦で下し、大旋風を巻き起こしました。スイス近郊のかなり静寂なアウェーの雰囲気の中で戦ったトゥールーズは相手のミスに乗じて終盤に勝ち越し点を奪い、決勝へのチケットを獲得しました。



マッチレビュー 決勝 vs ナント

迎えた決勝戦の相手は前回大会チャンピオンのナントでした。両チーム共にリーグ戦ではボトムハーフ以降の順位に位置していたため、勝利すれば順位関係なく来季のヨーロッパの出場権が与えられるという次第でした。したがって、両チーム共にほぼベストメンバーで臨みました。

黄:ナント 白:トゥールーズ

リーグ戦では近い順位に位置している両者のため、かなり拮抗した試合展開になることも予想されましたが、終わってみればかなり差が表れた試合になりました。トゥールーズは立ち上がりに得たセットプレーで、2点を先行。いずれも決めたのはカップ戦で出番を得ていたCBのローガン・コスタでした。

ナントが動揺を隠せないまま試合が進むと、23分と31分に立て続けにエースのダリンガが決めて前半だけで4点もリードしました。WGを軸としたサイドから幅を使った攻撃は大胆なことはやっていないものの、トランジションにおいて相手より集中力の差を見せつけて早くも勝負を決めました。

オナイウ阿道は69分から出場し、1点を返された後のFKに繋がるまでの味方との1タッチの軽快な絡みを披露しました。結果的にこのFKからこぼれたところをアブクラルが左足で豪快に振り抜き、トータルスコア5-1の完勝で1970年のクラブ創設以来初めてとなるメジャータイトルを獲得しました。

*同じ名前の「トゥールーズFC」は1956/57シーズンにクープのタイトル。レッドスターに買収されて現在は解散状態。すなわち同じトゥールーズをホームタウンとするクラブとしては2度目の制覇。

ハイライト動画




クラブ史上初のタイトルに導いた名将モンタニエ

トゥールーズFC監督 フィリップ・モンタニエ

現在のトゥールーズの監督を務めるのはパリから北西部の町、ヴェルノンで生まれたフィリップ・モンタニエです。現役時代はGKとしてカーンでキャリアをスタートさせ、ナントやトゥールーズ、ギャンガンを経て最後にサンテティエンヌで引退しました。

監督としてはブローニュで2004年からキャリアが始まり、2011年には初の海外挑戦となるスペインのレアル・ソシエダで2013年には4位でチャンピオンズリーグ出場権獲得に導きました。その後レンヌでクープ準優勝の後はイングランドのノッティンガム・フォレストやRCランス、ベルギーのスタンダール・リエージュなどの国内外の挑戦を経て2021年から当時2部にいたトゥールーズFCの監督に就任します。

トゥールーズもすぐに1部復帰の仕事を果たし、現在もリーグで魅力的なアタッキング・フットボールで来季のリーグアン残留も時間の問題といったところですが、各クラブで偉大な功績をおさめてきた手腕は見事としか言いようがありません。

ちなみに今回のクープ・ドゥ・フランスのタイトルはクラブにとっても初めてでしたが、モンタニエにとっても監督キャリア初となるタイトルでした。GK出身の監督というのは珍しいかもしれませんが、緻密な戦術によって成功へと導くかなり頭のきれる人物であることは明らかです。



出番が少なくとも腐らずに 来季はヨーロッパリーグで戦う日本人がもう1人

トゥールーズのオナイウ阿道

決勝でも69分からの出場と、カップ戦においても出番が限定的なオナイウ阿道。2部時代はウェールズ代表のストライカーのヒーリーと共に攻撃を牽引し、2部では10ゴール2アシストという結果を残しましたが、1部に上がった今季は31試合で2ゴール1アシストという結果になっています。

そのヒーリーが上層部と揉めて放出候補になっていたものの、十字靭帯を断裂して売り物にできず、オナイウの出番がさらに増えるかと思いきやクラブは早急にオランダ人のダリンガを補強。見事この補強が当たり、33試合で12ゴール1アシストという結果を残した一方で、オナイウは彼の完全なバックアッパーとなりました。

試合の70分ほどからという少ない時間で毎試合出番は与えられていますが、それでもピッチ内では腐らずに献身的な守備やフリーランニング、味方との連携などといった場面が多く見受けられます。

彼がもっと出番を望むというのならば話は変わってきますが、2部時代に昇格に貢献した彼をクラブやサポーターが愛してないはずがなく、彼のキャラクターも含めて来季もトゥールーズで活躍してほしいです。



来季のヨーロッパ出場は可能? ミランと共有する株主問題

RedBird グループ

クープを制したことで一応来季のヨーロッパリーグの出場権は獲得したということになりますが、参加するにあたって少しばかり問題になっていることがあります。

それはクラブの株を保有しているのはRedBirdというアメリカの投資ファンドですが、イタリアのミランの株も保有しているグループです。UEFAの同コンペティションにおいて株主を共有する2つ以上のクラブが参加してはならないというルールがあります。つまり、ミランが来季ヨーロッパリーグに出場することになった場合、トゥールーズの出場権が確保されないのではないかという不安の声が集まったということになります。これについては会長のダミアン・コモリが明言しました。

「我々は金曜日に、規定に従ってUEFAクラブ申請書をFFF(フランスフットボール連盟)に提出し、FFFが我々にUEFAライセンスを与えてくれることになりました。すべての書類を提出し、資本、財務、インフラ、コーチのディプロマ、トレーニングセンターなど、連盟と交わしたすべての話し合いで、非常にポジティブなものだった。私自身は、来シーズンもヨーロッパでプレーすることを約束します。」

クラブとして来季のヨーロッパリーグへの出場への準備を進めていることを明言し、断固として出場に関しては問題ないという姿勢を見せたコモリ会長。何事もなく事態が穏便に進めば幸いですが、UEFAというめんどくさい組織が控えているだけに慎重に物事を進めるべきでしょう。

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