見出し画像

#348 そんなに難しくない法律の話:仮差押え(差押えについても少し)

どうも,こんにちは。

古田博大(ふるたひろまさ)です。

このブログを初めてご覧になる方は,はじめまして。

いつもご覧くださっている皆様,いつもアクセスありがとうございます。

僕は,1990年生まれで現在30歳。2017年1月から弁護士として働き始め,ちょうど2年半が経過した2019年7月10日にうつ病を発症し,それから今日までずっと休職しています。

うつ病発症からしばらくは,眠ったり食べたりすることもままならず,生きることそのものが苦しい時期が続きましたが,長い時間をかけて少しずつ回復することができました。今は,週2日の休みをはさんで毎日出勤練習(慣らし勤務)を繰り返しながら,復職への準備を進めています。

うつ病をきっかけに「自分も何か行動したい!」と思い,2019年12月から,この毎日ブログを始めました。とはいえ,このブログでは,うつ病に関することだけでなく,日々考えたことを自由気ままに書いています。

書きたいことがたくさんあって,文章が長くなってしまうことも多いですが,ブログの負担が大きくなりすぎてうつ病に悪い影響を与えないよう,書き始めてから1時間程度でアップロードすることにしています(#ほぼ毎日時間オーバーしていることはナイショです

「書きたいがたくさんある」と「1時間でアップする」は両立が難しく,そのため,文章がつながっていなかったり,文章自体がわかりにくかったりと,弊害も多々あるんですが,どうしても「毎日ブログ」を続けたいので,毎日綱渡り状態ですが,アクセスしてくださる皆様のおかげで,今日までなんとか続けることができています(;^_^A

僕のうつ病の経過については↓でまとめています。

それでは,今日も書いてきます!

今日は,「そんなに難しくない法律の話」と題して,「仮差押え」について説明したいと思います。

「仮差押え」という言葉を聞いたことがある人がどれくらいいらっしゃるのでしょうか。

「差押え」なんて言葉が含まれていて,めちゃくちゃに恐ろしい感じがしますよね。

確かに「恐ろしい」んですが,ただ,「恐ろしい」と思う理由は一般的に2つあります。

1つめは,「得体が知れないから恐ろしい」というやつです。人間は,本能的に「知らないモノ」「理解できないモノ」を怖がる習性があります。これは,長い進化の過程で遺伝子に組み込まれているので,自分ではどうすることもできません。

人間(ホモサピエンス)は,最初の1人がこの地球に生まれ落ちた日から今日まで進化を続けてきました(=環境に適応した個体のみが子孫を残してきました)。

その過程では,「知らないモノ」「理解できないモノ」を怖がった個体が優先的に子孫を残すことができたようです。だからこそ,僕を含め,多くの人たちは,「知らないモノ」「理解できないモノ」を怖がります。

これが,「恐ろしい」と思う理由の1つめです。

2つめは,「きちんと理解したうえで怖がる」というやつです。「得体が知れないから怖い」といって,「得体の知れなさ」を「得体の知れないまま」で放置することなく,「得体の知れなさ」にきちんと真正面からぶつかって,「得体の知れないモノ」を理解し,理解した上で,「ここがこういう風におそろしいよね」と冷静に怖さを分析する。

これが,「恐ろしい」と思う理由の2つめです。

「仮差押え」なんてワードを持ち出すと,「よくわからないけど怖そう」と考える方が大半だと思います。

かつて,弁護士を含めた専門家の職業は,「よくわからないけど怖そう」と思う人たちを相手に,独占した知識を説明することでお金を稼いでいました。

よくわからないワードを用い,知識の漏洩を防ぐことで既得権益を形成し,知識をお金に変換していたんです。

でも,そういう「知識の独占→既得権益」という時代は既に終わりを迎えています。

専門家集団は,知識の独占によって富を得ようとする態度を改めなければいけません。

インターネットとスマートフォンによって知識(情報)の民主化が進んでいますから,知識を独占できなくなり,知識の独占によってお金を稼ぐというビジネスモデルが崩壊しつつあります。

これは,間違いなく良い方向です。

インターネット・スマートフォン以前は,知識を得るにも,専門家集団にお金を払う必要がありました。

しかし,今は,専門家集団にお金を払うことなく,インターネットとスマートフォンによって知識を仕入れることができるようになりました。

知識(情報)の民主化によって,「知識の独占」という金脈が崩れ去ると,これまで,専門家集団への報酬のうち「知識の対価」のぶんがまるまる全部なくなることになります。

つまり,「知識(情報)の民主化」は,専門家集団に支払う報酬を減らす機能を果たし,これは専門家集団に頼ろうとする人たちにとって良い知らせです。

だから,「知識(情報)の民主化」は,どんどん推し進めなきゃいけません。

ただ,僕みたいな「専門家集団」の一員が知識(情報)を発信しても,それが受け手に理解されないと,結局,「知識の独占→既得権益」という構図は崩れません。

必要なのは,専門家でない素人が,発信されている情報を理解し,「知識の独占→既得権益」という構図を崩壊させることです。

僕も,この構図を崩壊させたいと思っています。だから,日々専門的な知識を,なるべくわかりやすく発信しています。

そして,僕にも「発信者側」だけでなく「受信者側」の役割があります。僕だって,あくまで「法律業界」の「専門家集団」にすぎませんからね。他の分野では完全に素人です。

素人分野の知識を理解することは,その分野の知識を民主化することに役立ちます。そうすれば,既得権益の崩壊を導くことができます。

こんな感じで,「素人が知識を理解する」のは,めちゃくちゃ大事です。より安く,より安全に専門サービスを受けるためには,素人が専門知識に食らいつくのが大事です。

さて,そんな感じで今日は専門的な知識である「仮差押え」についてお話したいと思います。

「仮差押え」というのは,いったい何をしているんでしょうかね。

よくよく「仮差押え」というワードを見てみると,「仮」と「差押え」という2つの言葉が隠れています。

「仮」と「差押え」に分けてみると,「仮差押え」というのは,どうやら,「仮に」「差押える」ということらしいとわかります。

「仮に」というのは,「暫定的に」という意味ですよね。「確定じゃないけど,とりあえず押さえておく」くらいの意味が「仮に」というワードにはあります。

「スケジュールを仮に押さえておく」なんて使いますよね。これは,「確定じゃないけど,予定が入る可能性があるから,スケジュールを空けておいて」という意味ですよね。

「仮差押え」の「仮」という言葉も,この「スケジュールを仮に押さえておく」と同じ意味です。

「確定じゃないけど差し押さえておく」というのが,「仮差押え」です。

じゃあ,「差押え」とは何なのか。

よく「差押え」って聞きますが,「差押え」たら何が起きるのか,きちんと理解されている方は少ないと思います。

「差押え」たら何が起きるのか,不動産(土地と建物),預金,給料,家財道具に分けて説明します。

まずは不動産(土地と建物)です。

そもそも,「差押え」って何のためにやるかというと,差し押さえた財産を売ってお金に変えるためにやるんです。

だから,厳密に言えば,「差押え」って不動産や家財道具などの財産そのものには興味なくって,その財産を売って手に入るお金に興味があるんです。

ただ,当たり前ですが,普通は,不動産や家財道具を売れるのは持ち主本人だけです。

赤の他人が不動産や家財道具を売れるわけありません。ある日,見ず知らずの人がやってきて,「あなたの持っている土地売りましたから」なんてことが起きる心配はしなくていいんです。

自分の不動産を売れるのは自分だけなので,知らないうちに誰かに売られて代金もネコババされるなんてことにおびえながら生きる必要はありません。

ただ,「差押え」られたらそうはいきません。

不動産が差し押さえられた場合,その瞬間は,差押えの登記が入るだけです。「登記が入る」というのもよくわからないかもしれませんが,「差押え 登記」でググってみてください(こちら)。

こんなふうに,自分の持っている不動産の登記事項に「差押え」と書かれた欄が付加されるだけです。それだけですから,「差押え」があったからといって,誰かが家にやってきて「お宅は差押えられましたから家から出ていってください」となるわけでもない。

ただ,「差押え」の登記が入ると,その不動産は競売にかけられることになります。先ほど,「差押えって不動産自体には興味ない」「売って手に入るお金に興味がある」と説明しましたよね。

「売ってお金を手に入れる」ことができるのは,普通は持ち主だけですが,「差押え」があると,差し押さえた人(銀行や取引先など)が,持ち主より先に売却代金を手に入れることができます。

持ち主は,どれだけ不動産を売りたくなくても,強制的に売られちゃいます。売られた後は,自分の持ち物じゃなくなりますから,その不動産に住み続けることはできません。立ち退かなきゃいけませんし,立ち退かずにいると,新しい持ち主から訴訟を提起されて,その判決に基づいて強制執行が実施されます。「強制執行」とは,「執行官」という公務員が家にやってきて,中の荷物を全部外に運び出してカギも変えちゃうことを意味します。

こういう風に,「差押え」それ自体ですぐに何かが起きるわけではありませんが,そのうち不動産が売られてしまい,立ち退かなきゃいけなくなります。だから,「差押え」は怖いんです。

次は,預金です。

預金を差し押さえられた場合,その預金口座が銀行によってロックされます。中にどれだけお金が入っていても,一切引き出せなくなりますし,もしその銀行から住宅ローンなどの借入金があれば,差押えの通知が銀行に届いた瞬間,住宅ローンの残債務と預金残高が相殺され,借入金のぶんだけ,一気に預金残高がなくなることになります。

「差押え」ができるのは,債権者に対して自発的に支払わないからなので,きちんと払うべきものを支払えば,差押えは解除され,引き出すことができるようになります。

預金残高が残っていればの話ですが(汗)。

次は,給料です。給料の差押えもよくあります。

給料を差し押さえられちゃうと何が起きるかというと,会社が給料の全額を払ってくれなくなります。会社が,給料の4分の1を,自分にではなく,差し押さえた債権者に対して直接払うようになります。

ただ,これは手取りが44万円までの人の話で,手取りが44万以上の人は,33万円を超える分全額が,債権者に直接支払われます。

だから,例えば,手取りが50万円の人は,給料を差押えられると,50-33=17万円が,自分ではなく債権者に直接支払われることになります。

これはかなりの衝撃ですよね(笑)。職場にも差押えの通知が届くので,自分が何かしらのお金を自発的に支払っていないことが会社にバレますし,大ダメージをくらってしまいます。

最後に家財道具です。

よく,テレビで「差押え」のシーンが出ると,テレビやタンスなどに「差押え」のシールが貼られ,身ぐるみ全部剥がされるような感じがしますよね(笑)。こんなシーンを見ると,テレビも洗濯機もタンスも電子レンジも,全部奪われてしまうのか・・・なんてイメージがついちゃいます。

でも,実際は違います。

そもそも,差し押さえられた人にも生活があります。当たり前ですが,差し押さえられても生きていていいんです。国家が国民の命を強制的に奪えるのは,死刑判決だけです。死刑判決を受けない限り,どんな人でも生きていていい。

それが,この「日本」という国家の大原則です。

ただ,「生きていていい」といくらタテマエを言っても,洗濯機も電子レンジもテレビも差し押さえられて売られてしまったら,人間らしい生活ができませんよね。

洋服や冷蔵庫内の食べ物も差し押さえられてしまったら,生きていけなくなってしまいます。

そこで,生活必需品は差押えが禁止されています。テレビも冷蔵庫も洗濯機もタンスも差し押さえることはできません。スマートフォンやパソコンも,1人1台までは差し押さえることはできません。

現金も,99万円までは差し押さえることはできません。だから,現金99万を金庫に保管していても,それを差し押さえられる心配はないんです。

ただ,宝石や,2台目のスマートフォンなどは「生活必需品」じゃないので,差し押さえることができます。差し押さえられると,その場で,執行官が持っていっちゃいます。多すぎで持っていけない場合は,「差押え」のシールを貼りつけていきます。

差し押さえられた物品は,後で売却してお金に変え,債権者に配分されます。

こういった理由で,「差押え」は「怖い」んです。

で,「仮」の話に戻りますが,こういった「財産をお金に変える」が後々待っている「差押え」を「仮に」やるのが「仮差押え」です。

「仮」なので,「仮差押え」をしても,不動産などの財産をお金に変えることはできません。つまり,「仮差押え」は,「差押え」と違って,「売ってお金に変える」という手続きが後に控えてはいません。

じゃあ,何のためにやるかというと,相手の財産を確保するためです。

繰り返しになりますが,「仮差押え」だろうが「差押え」だろうが,欲しいのはお金です。

相手がお金を自発的に払ってくれれば全て丸く収まりますが,そうならないからこそ,裁判を起こして判決をもらうわけです。

ただ,裁判を起こして判決をもらっても,手に入るのは判決書だけです。判決書では一銭にもならないので,その後に強制執行(=差押え)して,相手の財産をお金に変えなきゃいけません。

でも,強制執行までの間に,相手が財産を全部売り払って一文無しになっていたら,せっかくの判決書もタダの紙切れです。時間と費用をかけて判決書をもらったのに,相手が財産を全部売り払って強制執行できないなんて,そんな結論は回避しなきゃいけません。

そんな結論を回避するため,相手の財産を「仮差押え」しておくんです。「仮差押え」をしても,不動産の場合は,仮差押えの登記が入るだけですし,預金も銀行が払ってくれるわけでもないですが,ただ,不動産に「仮差押え」の登記が入ると,その不動産が売られた後も,強制執行できるようになります。

本来は,売られてしまったら強制執行できませんが(強制執行できるのは相手の財産だけなので),仮差押えの登記を入れとくと,持ち主が変更されたにもかかわらず,強制執行できるようになります。

預金の場合も,「仮差押え」によって銀行口座がロックされるので,その中身が引き出されてゼロになってしまう心配がなくなります。ロックしたまま判決をもらって,相手が自発的に払ってくれれば仮差押えを解除すればいいですし,自発的に払ってこないなら,ロックした預金口座の中身を,銀行から直接払ってもらえばいいんです。

ただ,仮差押えには担保が必要です。「担保」というのは,法務局に現金を預けることを意味します。この「担保」は結構高額で,500万円の請求権があることを理由に,相手の預金口座を仮差押えする場合,180万円くらいの担保が必要になります。

不動産を差し押さえる場合,不動産全体の評価額を基準に担保の金額がはじき出されますから,かなり高額になることもあります。

最後は駆け足になりましたが,仮差押えについて解説してみました。

結構よく使う制度なので,頭の片隅に入れておいてもいいのではないでしょうか。

【今日のうつ病】(うつ病経過まとめ:こちら

まだまだ僕のうつ病は治っていないので,毎日うつ病の経過を記録しています。

今日までに経過した期間↓

・うつ病発症(2019年7月10日~):493日(1年4か月と4日)

・実家療養後の1人暮らし(2019年9月27日~):414日(1年1か月と17日)

・午前中の散歩(2019年11月7日~):373日(1年と7日)

・毎日ブログ(2019年12月3日~):347日(11か月と11日)

・出勤練習(2020年3月30日~):229日(7か月と15日)

今日で,出勤練習を始めて7か月と15日です。新型コロナウイルスの影響で,4月13日~5月11日までの約1か月間,一時中断されていましたが,それを差し引いても,約6か月間勤練習を積み重ねてきました。

今日は出勤しました。今日は結構元気なので,午前9時~午後6時まで滞在予定です。

今日の「SleepCycle」を見ると(睡眠記録アプリ「SleepCycle」についてはこちら),午後11時6分~朝7時までの睡眠が記録されています。SleepCycle独自の睡眠品質も83%/100%と良好です。昨日までとは異なり,寝つきも良く,朝は7時に目が覚めてしまいましたが,久しぶりに熟睡できた気がします。

まだまだボスとの話し合いのことが頭に浮かびますが,2日でそれなりに眠れるまで回復できたのは及第点でしょう。

(なお,僕のうつ病は,主な症状が不眠(①寝つきが悪い②中途覚醒③朝早く目が覚めてしまい二度寝もできない)で,この不眠症状の有無が,その日の調子の良し悪しや,回復の進み具合を左右します。そのため,毎日の睡眠時間や睡眠の質について,睡眠記録アプリ「SleepCycle」に記録されているデータをもとに逐一書き出すことにしています。)

だいぶ調子が良くなってきて良かったです。少しずつ変化に慣れていきます。

今日もブログ書けてよかった!

それではまた明日!・・・↓

昨日のブログ↓

━━━━━━━━━

※内容に共感いただけたら,記事のシェアをお願いします。

毎日記事を更新しています。フォローの上,毎日ご覧くださると嬉しいです。

※うつ病への負担を考慮し、「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。

サポートしてくださると,めちゃくちゃ嬉しいです!いただいたサポートは,書籍購入費などの活動資金に使わせていただきます!