さきほど『贈与論』（こちら）を読み終わりました。おもしろかったです。

ギリシアやローマで法が成立する前の，「アルカイックな」（素朴な）社会では，人とモノのいずれにも魂が込められ，混ざり合い，贈与が繰り返されていました。しかし，法が成立し，人とモノが区別され，人のモノに対する権利が観念されるようになりました。個人の権利も認められるようになり，個人と集団が区別されるようにもなりました。

ただ，行き過ぎた個人主義によって貧富の格差が生まれ，それを是正しようとした共産主義が，粛清と経済破綻というグロテスクな結末を迎えたことは，歴史が証明しています。

この歴史を踏まえて，「じゃあどう生きるか？」が現代人に問われいるのです。

著者は，ロシア革命によってソ連という共産主義国家が生まれた時期をリアルタイムで感じていて，ソ連の崩壊を知っているわけではありません。しかし，↑の「じゃあどう生きるか？」の答えを示してくれています。

著者としても，法が成立する前の社会（集団内や集団同士で贈り物が繰り返されていた状態）が好ましいとは思っていません。法が整備され，人とモノが区別され，個人の権利が尊重されるべきだけれども，個人の権利ばかりを強調するのではなく，自分の行いが社会の利益にもなることを考える必要があるのではないか？という結論で終わっています。

僕なりに要約すれば，「自分のことばかり考えてないで，みんなのことも考えて共存しようよ。昔はそうだったんだからさ！」という感じでしょうか。著者のマルセスモースは，「ドレフュス事件」（フランスの軍人「ドレフュス」が，ドイツのスパイであるとして，確かな証拠もなく逮捕された事件）で，ドレフュス擁護派として活動していて，バリバリの左系のようですが，とはいえ，この本では，社会主義や共産主義に傾倒してはおらず（むしろ，共産主義を批判する記述もあります），近代が確立した個人の権利を尊重しながらも，「お互いに贈り物をし合う」という慣習が間違いなく残っていることを前提に，お互いに助け合って生きていきましょうというメッセージが込められていると思います。

僕としても，「助け合い」というメッセージには共感します。とはいえ，「助け合い」の方法が「贈り物」なのはめちゃくちゃにイヤです。著者が「贈り物しましょうね」と主張しているわけではありませんが，「贈り物する」「返礼をする」というループは，無限に続きます。このループにはまると，精魂尽き果てます。この無限ループで精魂尽き果てるシーンが，昨日取り上げた「凪のお暇」でも出てきます。

今の時代は，「贈り物をしあう」なんてことは流行らないし，適切でないというメッセージが「凪のお暇」には表れています。

今の時代の「贈り物」は，「レターポット」みたいなやつがふさわしいと思います。品質の良いモノが安い値段で買える時代＝モノにあふれた時代なので，モノそれ自体の価値が下がり続けています。「モノを贈る」は「気持ちを贈る」だから，もっとストレートに「気持ちを贈る」を表現すればいいという発想でサービスを始めたのが「レターポット」です。

レターポットとは，１文字５円で文字数＝「レター」を購入し，購入した分の文字数で文章を作成して，それを相手に送るというサービスです（こちら）。

文章を受け取った相手は，その文章と同じ文字数分の「レター」を受け取ったことになり，手持ちの「レター」を使って，新たに文章を作成して誰かに送ることができます。

つまり，レターポットでは，自分の気持ちを表した文章それ自体が「贈り物」として成立します。「気持ちを贈る」という「贈り物」の本質に最大限に近づいたサービスが「レターポット」なのです（ #使ったことがあるとは言っていない ）。

これまでの時代も，「手紙を送る」という方法はありましたが，手紙の中の文章は，いくらでも自分で作り出すことができました。しかし，「レターポット」では，購入した「レター」のぶんしか，文章を作り出せないのです。

こんな風に，「レターポット」では，文章に「金銭的な価値」が与えられているのです。

インターネットとスマートフォンの発展で，自分の気持ちを表した文章に「金銭的な価値」を付与することができるようになりました。この「レターポット」こそ，今の時代に「助け合い」を築く手段としての「贈り物」にふさわしい形態の１つだと思います。

僕としても，欲しいものは自分で買うし，そもそも欲しいモノがないので，何かをもらうと，喜びよりも「お返ししなきゃ」というプレッシャーが迷惑ですし，それだけでなく，「いらないもの」が増えるという物理的な迷惑すらも感じます（ #完全に現代っ子 #完全に悟り世代）

だから，「レターポット」が贈り物だと非常にありがたいし，モノのプレゼントよりも何倍もうれしい。「お返し」も，自分の気持ちをストレートに文章にして返せるし，物理的にいらないモノが増えるという迷惑もありません。

「贈り物による助け合い・結束」という精神が今も生きているのは間違いありませんが，ただ，その「助け合い」の方法は，現代のテクノロジーを使って，もっと合理的なやり方が既に生み出されているし，これからも色々と新しい方法が出てくるでしょう。それを上手く利用して，これからの時代の「贈り物による助け合い・結束」を築いていきたいです。

前置きはこれくらいにして，今日もうつ病の経過を記録していきます。（第１回目はこちら。第２回目も大事なのでこちらからどうぞ）

【過去のこと・思い出したこと（発症７１日目）】

・９月１７日㈫：この日は，熊本の実家から刈谷の自宅へ戻る予定でした。両親と言い争いすることも出てきたので，実家療養に限界を感じ，「ひとりで暮らす」という最終目的を達成するため，いつ復職できるかはわからないものの，とりあえず，傷病手当だけで一人で暮らす練習をしてみようと思い，刈谷の自宅に戻ろうと思っていました。

しかし，ふたを開けてみたら，この日に搭乗予定だった飛行機が欠航となり，戻れませんでした(笑)。結局，９月２７日まで実家暮らしが続くことになりました(;^_^A。

人生って，予定通りには進まないものですね。

正直，今から振り返ると，この日の時点でも，僕の調子はあまり良くありませんでした。もちろん，うつ病を発症した７月と比べれば，だいぶ眠れるようになってきていたし，メンタル面も安定していました。とはいえ，まだまだ回復途中で気分も移ろいやすく，実際に，この日に受信した上司からのＬＩＮＥメッセージを読んで，大きく調子を崩してしまいました。内容としては，「直接会って話を聞きたいんだけど」という程度もので，特にプレッシャーをかけられたわけでもありません。

でも，やっぱり恨んでいたのです。「お前のせいでぇぇぇぇおれはぁぁぁぁぁこんなに苦しい思いをぉぉぉ！」と思っていました。心の中の，一番奥底で，ドロドロしたヘドロのような感情がうずまいていたのです。日頃は意識していませんでしたが，このドロドロと折り合いをつけるには，かなり長い月日が必要でした。まだ折り合いをつけられていないかもしれません。

しかし，少なくとも，うつ病を誰かのせいにするのではなく，「自分の病気」として責任を受け入れることはできるようになりました。上司に法的責任があるかどうかは別として（多分ありますが），現実問題として，病気になっているのは自分ですから，自分がこの病気に向き合うしかないのです。誰かのせいにして病気が回復していけば，ずっとそう思い続けたいですが，実際はそうじゃない。

自分の病気を治すのは，自分以外に存在しないのです。とても残酷です(涙)。

こんな残酷なことは，すぐに受け入れなくていいです。というか，すぐには受け入れられません。時間が必要です。「気持ちの整理」なんて手垢まみれの言葉は使いたくありませんが，それが必要だと思います。

だんだんと，「自分で治すしかない」という事実を受け入れていけばいいのです。正しいからって，何でもかんでもすぐに受け入れなきゃいけないわけじゃありません。

ただでさえ苦しいんだから，無理に正しいことを受け入れて苦しまなくていい。自分が苦しくない範囲で，徐々に「正しいこと」を受け入れていけばいいのです。

大丈夫，そのうち回復してきますから。

回復したら，回復したぶんだけ，受け入れましょう。

僕の過去のブログを読んでみてください。もうね，恨みつらみを書きなぐっています(笑)。恨みつらみを書きなぐってもいいんです。回復すれば，少しずつ現実が見えてきます。

調子が悪いときは，現実から目を背けましょう。現実から目を背けても生きていけますから(笑)。僕だって，現実から目を背け続けながら，１年以上も生きながらえています。生きながらえていれば，そのうち回復してきます。ゆっくり過ごしましょう。

話を戻しますが，この日は，刈谷（一人暮らしの自宅）へ戻れないことになったので，僕を空港まで送り届けてくれた母を呼び戻し(笑)，途中で買い物して，午前１１時２０分には実家に戻っています。午後からは，映画なんか見に行っちゃったりしています。

飛行機が欠航しましたが，結果オーライです(笑)。

→今日はここまで

【今日経験したこと・経験して考えたこと（発症３７０日目）】

・今日できた仕事・勉強

今日は出勤しました。午前９時～午後６時２０分まで滞在しました。冒頭で書いたように『贈与論』を読み終え，その次に『マシュマロ・テスト：成功する子・しない子』（こちら）を読んでいました。

・仕事・勉強以外に今日やったこと

特にありません！

【今日のうつ病】

昨晩は午後１１時１０分に布団に入り，すぐに寝つけました。朝は７時１０分に目が覚めました。よく眠れています。ただ，もう少し遅い時間にアラームを設定しているのに，いつもそれより早く目が覚めてしまうので，少しだけ気がかりです。よく眠れていますが，朝から身体が重く，絶好調ではありません。７時４０分頃までベッドでゴロゴロした後，バーピージャンプ２０秒×１回だけしました。調子はぼちぼちといったところです。

今日もブログ書けてよかった！

それではまた明日！

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※うつ病への負担を考慮し、「書き始めてから１時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。

※このブログの内容は，僕の所属する企業や団体とは一切関係ありません。あくまで僕個人の意見です。