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モーラムとルークトゥンの違い

「ルークトゥンとモーラムの違いって、何ですか?」
 昔からよく聞かれることなのですが、タイの大らかさが、この素朴で単純な疑問への答えをややこしいものにしています。今のルークトゥンもモーラムも、様々な要素をそれぞれに取り込んで、その垣根も非常に曖昧に見えますからね。

 まず、ルークトゥンとはポピュラー音楽と言っていいでしょう。いわゆるポップスと思って間違いないです。ただ、世界標準的なポップスと違うのは、音楽的な基礎として、発声、発音、歌唱方法に一定のタイ独自のルールと技術を要求される事。今は、タイの一般的なアイドルやポップス歌手たちもそこそこ上手ですが、ちゃんとしたルークトゥン歌手は、ほとんどがそのルールと技術を学んでいます。それは、生歌を聞くと初めての人でもハッキリとわかると思います。

https://youtu.be/czXQo6yCxbY

ナクローンバーンノーク(田舎者の歌手)
プムプアン・ドアンチャン
<ルークトゥンの女王>


 次に、モーラムですが現在一般に聞くことができるのは、全てと言っていいくらい、ルークトゥンとしてアレンジされた物です。純粋な古典的モーラムは、イサーンでも何か伝統的なイベントなどでしか見聞き出来ないものになっています。なので、それを分ける呼称として私は歌謡モーラムと呼んでいます。この歌謡モーラムは、言わばイサーン語のルークトゥンと言っても過言ではありません。時々、ラムと言われる古来の歌唱技法を取り入れた曲もあり、古くはシリポン・アムポイポンが歌ったボーラックシーダムがその典型です。

https://youtu.be/B_5yxqR-1kE?t=30
シリポーン・アムパイポーン
当時は、モーラム最初の大ヒットと言われました。


 長くなるので、一旦この辺で結論を出しますが、ルークトゥンはタイ全土。歌謡モーラムは、イサーンで発信されている音楽です。つまり、ルークトゥンという大きな括りの中に、モーラムが含まれているイメージです。もちろん、モーラムにも独自の歴史と技法があるので、あくまでも俯瞰的な意味での結論です。

こうした意味では、現在流行りのインディーも、モーラムではなくルークトゥンの一種。いわばルークトゥン・イサーンになるのですが、流行っているが故に、ルークトゥンの基本すらできない歌手が出て来ているのも事実です。また、地方ごとの文化や歴史を持つタイ。北部や南部、中部にもその地方のモーラムと言える音楽があります。次回は、その辺をご説明しましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=fIp4Ee3mVEg

ペンソッタンマイ
スラポン・ソンバッチャルーン
<ルークトゥンの父>

上の写真は、ルークトゥンの女王として没後25年以上経ってもなお、毎年追悼コンサートが開かれ、多くのタイ人に慕われているプムプアン・ドゥアンチャン。

そむちゃい吉田(バンコク在住20年のライター) Facebook:https://www.facebook.com/SomchayYoshida Youtube:https://www.youtube.com/LoogthungThailand