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親友との不協和音3


思い返せば、彼女の座右の銘は、「他人は変えられない。でも自分は変えられる」

「他人を変えることはできないから」とよく言っていた。自分から変わろうとする、この言葉は素敵だなと思うけど、個人的に100パーセントの賛同はしていない。


私の場合は、真摯に伝えることで変わることもあると信じている。「こういう部分を直してくれるとありがたいな」と言われたら、私なら可能な範囲で修正したいと思う。

だって、人が何を嫌に感じるかって気づいていないこともあるし、それを知らせずに勝手にフェードアウトするのって勿体ないから。

もちろん、伝わらなさそうだと判断したり、そこまでの魅力が相手になければそうする時もあるけれど。



私は腹を立てようが傷つこうが、これからも彼女と一緒にいたいと願っていた訳で。今思えば少し依存していたのかもしれない。

それまでにここまで価値観が合って、趣味が合って、思考が似ている子が稀だったから。彼女の私と違うところは、私よりもタフで、恋愛気質。

旅行中、秒速で眠る彼女と、なかなか寝付けない私。彼氏が途切れない彼女と、やや男性が苦手な私。あまり周りのことは気にしない彼女と、繊細で傷つきやすい私。



そんなタフでパワフルな彼女が、あんなに疲れているなんて、相当忙しいのだろう。残業も多いと聞いていた。

ラインでしか繋がっていない私たち。いつブロックされるかもわからないと恐れた私は、とりあえず全力で謝罪の文章を送った。既読はついたけど、23時になっても返信がない。



仕事終わりに申し訳ないという気持ちもあったけど、やっぱりこのまま終わりたくない私は電話をかけた。

これまでも、彼女は電話に出なかったことがない。程なくして、繋がる。それでも、いつ切られるかわからないから、恐る恐る話し始めた。

「もしもし?」

「もしもし…」

「わ! ごめんね、夜遅くに。仕事でお疲れだと思うんだけど、ちょっとだけ話してもいい?」

「いいよ…」

出だしはそんな感じ。そして、5分ほど話した。想像以上に彼女の声は疲れていて、今にも消えてしまいそうだった。「そんなに疲れている中、電話に出てくれてありがとう」と素直に思えるくらいに。


彼女と最後に会ってから、色んな思いが巡って、色んな感情と向き合っていたけど、彼女はそれどころじゃなかった。そんな気がした。

「うん… 別に… 怒ってはない…よ…」

怒ってはないけど、今遊んでも楽しめなさそうだから、という理由で約束を断ったらしかった。本当にそうだと思った。


一秒でも早く会話を切り上げないと可哀想だと感じた私は、こんなヒットポイント1みたいな彼女に自分の気持ちをあれこれぶちまけるのも野暮だと察し、「また落ち着いたら遊びに行こうね、ゆっくり休んでね」と言って切った。


でも、数分話せただけで、心がとてもほっとした。今の彼女がいかに余裕がないかが痛いほどにわかった。

そうして数ヶ月、彼女と連絡を取ることはなかった。



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