マガジンのカバー画像

フランス詩を訳してみる

45
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

ひよこのるる訳詩目録

2018年11月以来発表してきたぼくの訳詩約70編の、作者別の目録です。もし気に入った作品を見つけたら、同じ作者や時代の他の作品も読んでみていただけたらとてもうれしいです。

 *

作曲家・ミュージシャン別の索引も用意しております。

 *

以下、作者の生年順に並べています。

Marcus Valerius Martialis/マルクス・ウァレリウス・マルティアリス(ローマ)
c.40-c.

もっとみる

ヴェルレーヌ「夜の印象」(フランス詩を訳してみる 40)

Paul Verlaine (1844-1896), Effet de nuit (1866)

(堀口大學の訳を参考にした。)

ヴェルレーヌの第1詩集『土星人詩集』Poèmes saturniens の「銅版画」Eaux-fortes という章に収められている一編です。

ジャック・カロの連作銅版画『戦争の惨禍』、特に「絞首刑」に影響を受けた可能性があると言われています。

カロといえば、アロ

もっとみる

ヴェルレーヌ詩集(未完) 目次

これまでフランス語やドイツ語の詩の翻訳をしてきましたが、中でもヴェルレーヌの詩が多くなってきました。はじめの5つの詩集に収められた作品だけでもいつか網羅したいという思いを込めて、穴だらけの目次を作っておくことにします。

Poèmes saturniens/『土星人詩集』(1866年)Les sages d’autrefois
Prologue

MELANCHOLIA/憂鬱

I. Résign

もっとみる

ヴェルレーヌ「諦め」(フランス詩を訳してみる 39)

Paul Verlaine (1844-1896), Résignation (1866)

(薄井歳和の訳を参考にした。)

ヴェルレーヌの第1詩集『土星人詩集』Poèmes saturniens で、2つの序詩に続く「憂鬱」Melancholia という章の最初におかれた詩です。伝統的な4行・4行・3行・3行のソネ(十四行詩)をひっくり返した sonnet renversé という詩形で書かれ

もっとみる

ルコント・ド・リール「夜」(フランス詩を訳してみる 38)

Leconte de Lisle (1818-1894), Nox (1852)

(安藤俊次の訳を参考にした。)

『古代詩集』(1852年)で、代表作「真昼」の直後にくる詩です。

「六月」「真昼」「夜」の3編で、「拾遺詩集」Poésies diverses という連作となっています。

 *

シャルル・ケクラン(Charles Koechlin, 1867-1950)による歌曲(1900年

もっとみる

ボードレール「通りすがりの女に」(フランス詩を訳してみる 37)

Charles Baudelaire (1821-1867), A une passante (1855)

(馬場睦夫、堀口大學、鈴木信太郞、金子光晴、高橋邦太郎、矢野文夫、佐藤朔、大宰徹雄、村上菊一郎、齋藤磯雄、福永武彦、粟津則雄、阿部良雄、安藤元雄の訳を参考にした。)

初出は1855年で、後に『悪の華』第2版(1861年)に収録されました。

 *

レオ・フェレによるシャンソン(1967

もっとみる

ヴェルレーヌ「秋の歌」(フランス詩を訳してみる 36)

Paul Verlaine (1844-1896), Chanson d'automne (1866)

(上田敏、永井荷風、川路柳虹、竹友藻風、堀口大學、松山敏、金子光晴、中込純次、窪田般彌、橋本一明、薄井歳和の訳を参考にした。)

上田敏の『海潮音』(1905年)における翻訳があまりに有名なので、これも引用しておきます。

 *

非常に多くの作曲家がこの詩に曲をつけています。

まずはフラン

もっとみる

ルコント・ド・リール「真昼」(フランス詩を訳してみる 35)

Leconte de Lisle (1818-1894), Midi (1852)

(上田敏、安田保雄の訳を参考にした。)

フランス高踏派の詩人ルコント・ド・リールの代表作です。1851年、まだ無名だった彼がこの詩を朗読するのを聞いて、著名な評論家サント゠ブーヴが感動して涙を浮かべたといいます。翌1852年にサント゠ブーヴが評論の中で全行を引用して紹介しています。同年末、この詩を含む最初の詩集

もっとみる

ヴェルレーヌ「しずむ陽ら」(フランス詩を訳してみる 34)

Paul Verlaine (1844-1896), Soleils couchants (1866)

(川路柳虹、堀口大學、松山敏、鈴木信太郎、金子光晴、橋本一明、野村喜和夫の訳を参考にした。)

『土星人詩集』(Poèmes saturniens)の「悲しい風景」(Paysages tristes)からの1編です。

「しずむ陽」といえばふつうは夕方ですが、この詩では1行目にいきなり「夜明け

もっとみる

ヴェルレーヌ「願い」(フランス詩を訳してみる 33)

Paul Verlaine (1844-1896), Vœu (1866)

(川路柳虹の訳を参考にした。)

『土星人詩集』(Poèmes saturniens)からの1編です。

日本ではあまり知られていないようですが、手元にあるJean Orizet編のフランス詩アンソロジーでは、「よく見る夢」と「秋の歌」と並んで『土星人詩集』からこの詩が取り上げられていました。

原文は、ギリシャ語由来の

もっとみる

ヴェルレーヌ「Nevermore」(フランス詩を訳してみる 32)

Paul Verlaine (1844-1896), Nevermore (1866)

(永井荷風、川路柳虹、堀口大學、鈴木信太郎、中込純次、橋本一明の訳を参考にした。)

ヴェルレーヌの処女詩集『土星人詩集』(Poèmes saturniens)からの1編です。

タイトルの Nevermore は、エドガー・アラン・ポーの詩「大鴉」(The Raven, 1845年)から採られました。

4

もっとみる

ラヴェル「三羽のきれいな天国の鳥」(フランス詩を訳してみる 31)

Maurice Ravel (1875-1937), Trois beaux oiseaux du Paradis (1915)

第一次世界大戦中の1915年に、モーリス・ラヴェルが『3つの歌』(3 Chansons)の第2番として作詞作曲した合唱曲です。

アンリ・ド・レニエ「抒情小曲 Ⅰ」(フランス詩を訳してみる 29)

Henri de Régnier (1864-1936), Odelette I (1897)

ちいさな葦の葉ひとつあれば
背の高い草を
いちめんの野を
やさしい柳の木を
歌う小川を ふるわせることができた。
ちいさな葦の葉ひとつあれば
森に歌を歌わせることができた。

通るものらはそれを聞いた、
夜の底に 心のうちに
静寂のなか 風のなかに
はっきりと またかすかに
近く また遠くに……。

もっとみる