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#119 理想の家を30余年考えるわたしの愉しみと哀しみ

我が家共通の趣味に、「家の紹介番組を観る」というのがある。
「建もの探訪」や「住人十色」「隣のすごい家」などなど
撮り溜めたものを休日に好きなこと言ってわいわい見る。

出てくるのはなぜだか鎌倉・湘南地区のお家が多い。たまに「これは家なのか?」と疑いたくなるほど斬新なファザードだったり「夫婦のパワーバランスはこうなのね…」と一目でわかるような内装だったりして楽しい。
違う番組で同じ家が紹介されることもある。なんでだろう?取材しやすいのかな。番組によって撮り方が違ったり、前は映らなかったお部屋も映ったりする。「建もの探訪」では家族が食事するシーンなんかもあったりして、「この家はこんな風に生きているんだなぁ」と一瞬垣間見るのも良い感じ。

自慢の家を紹介する家主は皆生き生きしている。
こだわったポイントは?とか、どなたの希望でこの素材を?とか、随所にストーリーがあってすてきだ。希望を言うならば、建築・設計士さんの説明とともにみてみてみたい。デザインした当時と違った目的で受け入れられている場所とかがあると、どんなコメントをするんだろうか。

贅を尽くした家もすごいけれど、住む人が馴染んでいて、居場所がたくさんある家が良いなぁと思う。
美しい家具が、そのカタログをなぞった様に鎮座していなくて、思いがけず「こんな風に置いてある!」と発見することができる様な家がすごーく心ときめく。

雑誌も好きで、MODERN LIVING、 KINFOLK 、ELLE DECOR、Casa BRUTUS なんかで取り上げられるのは、もはや家っていうか歴とした建築やんと思って眺める。なんの知識もない素人だけど、めちゃくちゃ目の保養になる。絶対寒いよね?っていう吹き抜けの石の廊下とか、エントランスからリビングまで伸びるライトアップされた水盆とか、全方位鏡張りのウォークインクロゼットとか。バブリーでハイセンスでとことん無駄で、そこがたまらなくワクワクする。


総じて言えるのは、夫婦の好みがある程度傾向が似ていて、建築家にほとんどを委ねた家が美しい、ということだ。


一生に一度あるかないかの大きな買い物、マイホーム!気合いだって入るよなぁ。わたしだって毎回「わぁこのアイデアいいな、真似したい」とか家を建てる予定もないのに思うんだから。
だけど、「たくさん希望を言って叶えてもらいました!」と満足そうな家主さんには申し訳ないのを承知で言うと、どうもバランスが、、と僭越ながら思ってしまう。外観から、そして玄関を入ってすぐ、言葉が出てこないほど素晴らしいお宅は大概「設計士さんにお任せしました」と言う。

夫とわたしは、家を建てる予定はないのだけれど(2回言った)「建てるんなら、全信頼をおける建築士を探すことにエネルギーを使って、あとはお任せしよう」という事で一致している。

長いことこのシュミを続けていると、「自分の理想の家」の断片が見えてきた様に思う。好きだなと思う家は録画リストから消せずに残っている。
ライフスタイルを住みたい家に合わせるのか、
はたまた家をライフスタイルに合わせるのか、
殆どの場合「ライフスタイルに合った家を建てる」と思うけど、それだと理想の家というか「今できる最大限譲歩した家」になってしまう様な気もする。

結局のところ、わたしの理想の家は、理想郷なんだな。限りなく空想に近い。
理想の家に住むためには理想の自分でいなくてはならなくて、
理想の自分はいつだってちょっと遠いところにいるから、
きっとまだ会えなさそう。としょんぼりしつつ、懲りもせず録画予約する。

るる



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