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放送大学 面接授業越境受講のススメ

はじめに

こんにちは。放送大学で社会人学生をやっているlumpsucker(ごっこ)です。この記事では放送大学のスクーリングである「面接授業」を所属の学習センターとは違うところに越境受講すると結構おもしろいよ!という話をします。以下の記事の通り2019年に放送大学に入学し、卒業後の延長戦含めて足掛け4年在学しています。

面接授業とは何か

放送大学では(放送しかしていなさそうな大学名とは裏腹に)面接授業と呼ばれるいわゆるスクーリングの科目が多数開設されています。放送大学の学生は47都道府県に57か所(分室相当の「サテライトスペース」を含む)存在する「学習センター」に所属することになりますが、各学習センターには(場所によって設備には大きく差がありつつも)講義室や実験室が存在し、学期が始まると面接授業という名のもと対面での授業が行われます。

学部の縛りがないので科目もバラエティに富む

この面接授業、所属している学習センターの科目しか履修できないかと思いきや実はそんなことはなく、新型コロナウイルス流行下でも近隣の(大学からの公式アナウンスの言葉を借りれば「近距離移動圏内」の)学習センターであれば所属外センターでの履修が推奨はされずとも許容されていました。そして2022年度2学期からは制限緩和により多くの学習センターで特に近隣でなくとも越境受講が可能となり、コロナ以前の全国どこでも受講できた形に徐々に戻りつつあります。

全国各地の学習センターにはそれぞれ(よく見ると)特徴があり、開講される面接授業にはその土地に特徴的な科目や地元の大学と連携した科目などがあります。興味関心によってはわざわざ遠征して受講する価値のある経験となると思います。私は東京足立学習センターの所属ですが、2022年2学期に青森学習センター(八戸サテライト)と山形学習センターに越境受講しに行きました。そのあたりの経験も踏まえ、越境受講の面白さと留意点などについて記事にしようと思います。せっかく放送大学に所属しているのであれば、47都道府県にキャンパスがある利点を生かさない手はないです。

※大学公式のアナウンスに準拠し、この記事では「近距離移動圏内」を超えた居住地外都道府県での学習センターでの面接授業の履修を指して「越境受講」とします。なお筆者が東京在住なのでこの記事は若干「東京から地方に越境する」方に偏っているかもしれません。

最重要:越境を許容するかは要確認

大前提として、2022年度2学期は(2022年1学期まで実施されていた)大学として一律の越境受講制限措置は撤廃されましたが、越境受講を受け付けるかどうかは面接授業を開講する各学習センターの判断に委ねられました。大多数の学習センターでは越境受講可能でしたが、例えば北海道学習センターや静岡学習センターは依然として越境受講を禁止していました。

静岡学習センターは2022年度2学期も原則越境受講禁止だった

2023年度以降の方針がどうなるか現時点(この記事は2023年2月に書いています)では不明ですが、情勢次第で何らかの制限がかかる可能性は十分にあります。越境受講を検討する際は(特に科目登録の段階で)可否についてよく確認するようにしましょう。

越境受講のいいところ

当然ですが越境受講となると所属学習センター外の学習センターに出向くわけですからお金も時間もかかります。しかしそのコストを踏まえても所属外学習センターの面接授業を受けに行く価値が多々あると思っており、若干雑多な感じになりますが私が思う越境受講のいいところを以下にまとめます。

①受けたい授業が受けられる

何はともあれこれが一番重要なことだと思います。全国の学習センターではそれぞれ異なる科目を開講しており、学生が各々関心のある科目を受ける貴重な機会が散在しています。せっかく日本最多クラスの科目数とキャンパス数を抱える放送大学に在学しているのであれば、このリソースを活用しない手はありません。これについては、次のセクションでどんな授業が越境受講向きと考えられるか掘り下げてみます。

②目的をもってその土地を訪れられる

これは授業そのものとはあまり関係ないですが、「授業を受けに」行くことで、単なる観光ではなく少し違った角度からその土地を理解できると思いました。講師の先生も受講者も学習センターのスタッフも基本的には地元の方が多く、うまくコミュニケーションを取れば観光客然として過ごすより濃密な時間を過ごすことができます。実際私が行った山形や八戸ではおすすめの居酒屋を教えてもらったり、地元の産業・社会事情を教えてもらったりと貴重な経験ができました。ありがたいことに遠くから行くだけでそれなりに歓迎してもらえます。

八戸ではイカの美味しい店を教えてもらいました

③地方に越境受講しに行くと放送大学にあるまじき少人数教育を受けられる可能性がある

ほぼ科目による気がするのでおまけ程度ですが、やはり地方に行くと東京より受講者が少なく、超マスプロ大学であるところの放送大学とは思えないくらいに少人数な授業を受けることができます。八戸で受講した「機械設計とシミュレーション」は学生4名に対して先生1名・スタッフ1名・TA2名というすさまじく手厚い布陣でした。特に演習・実習系は密にコミュニケーションが取れると学びも多いと思いますので、大教室嫌いな方は地方に越境受講してみるのも一つかと思います。

特に地方の学習センター×理系っぽい科目は少人数になりがち

面接授業勝手に分類

入学以来5年ほどシラバスとにらめっこし続けた結果、(100%私見&独断ですが)放送大学の面接授業はいくつかの分類に分けることができ、特に以下のカテゴリはわざわざ越境受講する甲斐があると思います。

※もちろん最終的には所属学習センターでも越境でも自分が興味のある科目を履修すればよく、興味関心によって自身にとっての授業の価値が決まるのは言うまでもありません。下記は私が考える一般論としての参考です。

①ご当地ネタ系

だいたいどの学習センターにもその地域の歴史や自然を扱った「ご当地ネタ」と呼べるマニアックめな科目が1科目は存在します。例えば(以下具体的な科目名は2023年1学期のものを拾っています)栃木学習センターは「下野国から中世日本を考える」という宇都宮氏にフォーカスした科目があったり、青森学習センターは「白神学-白神の動物と植物」という白神山地の自然観察を行う科目を開講したりするようです。

「白神学-白神の動物と植物」シラバスより

この手の科目はその学習センターから外に出ることは考えられないため、関心があり受講しようと思ったら越境受講一択です。特に「白神学」のようなフィールド系は現地に行ってこそ意味がある内容のため、越境受講の価値は高いと思います。

②地元大学の先生が担当講師だよ系

次点で越境受講が意味を持つと思われるのが、地元大学(や稀に地元企業)の先生が担当講師の授業です。私が2022年度に遠征した山形学習センターの「巧みな機構によるロボット工学」はこれにあたります。放送大学の学習センターは地元の大学のスペースを間借りしていたり、間借りはしないまでも客員教授の招聘等含め地元の特定大学と強いつながりを持っているケースが多数あります。例えば宮城学習センターは東北大学と関係が深く、開講されている面接授業を見ても東北大学の先生が講師を担当しているものが多いです。

2023年度1学期の宮城学習センターの開講面接授業(抜粋)

このようなケースで特定の先生の授業が受けたい・特定の分野の話が聞きたいとなった場合、越境受講する価値は大きいと思います。

「巧みな機構によるロボット工学」は山形大学工学部の先生が講師でした

③その分野の第一人者が担当講師だよ系

②と重複する部分もありますが、研究や仕事等の過程で関心のある分野がクリアになってくると、その分野の第一人者に近い人が誰なのかアタリがつくようになると思います。放送大学の面接授業は全国各地での膨大な開講数ゆえ、そんな分野の第一人者が担当講師の面接授業がある!というケースがしばしば発生します。

例えば2022年度2学期には千葉学習センターで「菌類の生物学」という授業が開講されていたようですが、この科目の担当講師は国立科学博物館の植物研究部長で、ちょうど2023年2月現在科博で開催されている特別展「毒」の監修トップを務めている方です。(私の専門とはあまりにも距離があるので正確なところはわかりませんが)おそらくこの界隈では第一人者で、そんな人の授業を丸二日にわたって(しかも5,500円で・・・)受けられる機会はそうないのではないでしょうか。

私自身、仕事としているUXデザイン分野の著名な研究者である黒須正明先生(人間中心設計推進機構名誉理事長)の「人間中心設計とUXデザイン」を受講し、トップランナーの考え方に触れることができて非常に良かったです(東京だったのでこれについては越境はしていませんが)。

著名な先生と質疑応答できる貴重な機会

もちろんネームバリューがあればいいというものではないですが、授業選びの際の一つの選択肢としては率直にアリだと思います。そして放送大学の面接授業は一期一会感が強く、今年開講されたからと言って翌年も開講されるとは限らないことから、チャンスを生かすためにこうした科目を越境受講することは十分に価値があると思います。というか正直「この1科目のためだけに放送大学に入学する選択をとってもいい」くらいに貴重な授業が多数あります。

④実験・実習・演習系(特に心理学実験)

これは主に学位授与機構での学位申請に演習・実習系の単位が必要な人と、認定心理士向けに心理学実験の単位が必要な人向けです。

まず、学位授与機構に関しては(申請する学位の区分によりますが)下記の別記事に記載した通り、演習・実習系の単位が必須となるケースが少なくありません。

このような場合には何はともあれ申請要件に合致する単位をかき集めなくてはいけませんので、多少越境を試みてでも演習・実習系の単位を集めに行くことを考えてもよさそうです。

「情報工学演習」相当に使った「WAKABAを解体してみよう(千葉学習センター)」

また認定心理士に必要な心理学実験については履修希望者過多による抽選落ちが常態化しており、特に都会の学習センターだと相当厳しい状況になっているようです(これに関しては越境なんかしなくていいようにどうにかしてほしいですが)。その場合越境して地方に心理学実験しに行くのも選択肢かと思います。

なおこれはTwitterでも紹介したちょっとした小技ですが、シラバス検索画面でフリーワード欄に「学生教育研究災害傷害保険」と入れて検索すると、フィールドワーク系・実験系・体動かす系の科目だけヒットします(シラバスの備考欄に書くルールのため)。
※演習でもPC作業メインのものは引っ掛からなかったりするので情報工学演習狙いの方はこれだと網羅できません。あくまでフィジカル系です。

「学生教育研究災害傷害保険」で検索!

⑤放送授業との連動系

最後に、面接授業の中には放送大学の(客員ではない)先生による放送授業との連動が意識された科目がいくつか開講されています。例えば放送授業「コミュニケーション学入門」を担当する大橋理枝先生は、その面接授業バージョンである「コミュニケーション学入門演習」を開講しています。この手の科目は基本的に全国を巡回しているようなので上記の①②③あたりに比べると優先度は落ちる気もしますが、放送授業と同時だったり前後して受講することで相乗効果を生みたいような場合には待つのではなく越境も選択肢として挙がるかもしれません。

面接授業越境受講の注意点

面接授業の(特に)越境受講にあたっていくつか注意した方がいい事項が存在します。私が実際にハマったものも含めていくつか書いておきます。

①出張パックを使おう

越境受講するとなると当然ですが授業が開講される場所までの移動が発生しますので、交通手段と宿泊場所が問題になります。放送大学の学生だし面接授業に行くなら学割使えばいいんでしょ?と思うかもしれませんがちょっと待ってください。学割は罠です

学割は確かに面接授業のための移動であれば使えますが、実際のところあまり使い勝手がよくありません。場所にもよりますが、多くの場合新幹線パックや飛行機パックのような出張向けプランや早割系チケットの方が安かったりします。学割で安くなるのは乗車券分(20%割引)のみで特急券は安くならず、総額でみると実は大して割り引かれないケースが多かったりします。

科目登録決定通知から実際の面接授業まで日がない場合は仕方ありませんが、しばらく空いているのであれば早割やパックの利用を検討した方がいいと思います(逆にあまりにも学期開始早々に開講されるような科目に対して越境受講を狙いに行くのはリスキーともいえます)。放送大学の学習センターは多くの場合JRの主要駅近辺にありますので、出張パックで出てくるようなビジネスホテルであればアクセスは悪くないはずです。2023年度以降どうなるかは不明ですが、2022年度はたまたま全国旅行支援という政府公式越境受講推奨キャンペーンをやっていたのでさらにお得に移動できました。
※お金に余裕があれば節約せずに近くの温泉旅館に泊まって優雅に過ごしたりもできそう(したい)ですがいったん置いておきます。

八戸で出張パックを使って泊まったホテルから。目の前に見えるのが八戸サテライト。

単純に学割ではそれほど安くならないという点に加え、放送大学では学割発行証をもらうために所属の学習センターまで出向いて(または所属学習センターによっては郵送で)手続きをする必要があり、社会人学生で忙しいようであればこれも負担になります。

また始発で自宅を出発して1限に間に合うか?というのも結構重要なポイントで、間に合わないとなると前泊するなどしてさらにコストが嵩みますので、履修登録の前に確認することをお勧めします。普段所属の学習センターにしか行っていないと忘れがちですが、実は学習センターによって1限の開始時刻が異なりますのでこちらも注意が必要です。

②場所をちゃんと見よう

授業によっては会場や集合場所が学習センターの講義室ではないケースがあります。私は山形学習センター(山形駅前)で登録した科目の会場が山形大学工学部(米沢駅からバス/タクシー)であることに受講前日に気づいてパニックになりかけました。越境の場合は土地勘がないことが多いと思いますのでGoogle Map等でしっかり見ておきましょう。山形市と米沢市があんなに離れてると思いませんでした。

全然山形学習センターじゃなかった

③保険に入っておこう

これは任意ですが、先ほど検索の小技で出てきた「学生教育研究災害傷害保険(学研災)」という保険に入っておくといいと思います。実験系であれば加入必須ですが、ベース100円+通学特約40円(6年間有効)を付けておくと通学中(=越境受講への移動中)に怪我をしても保障がされるようですので、越境受講で長距離「通学」する場合は缶コーヒー1本買うお金で安心を買っておくのもよいと思います。

実際12月に八戸サテライトに行った際には積雪がそこそこあり、慣れないこともあって何かの拍子にズッコケてもおかしくないなと思いました。
※前日までに所属学習センターまたは郵送で手続きが必要です。

④追加登録を戦略的に使おう

放送大学の科目登録は基本的に学期開始前に実施するわけですが、社会人学生で忙しい方は特に、面接授業の登録にあたって
・数ヶ月も後の予定なんてまだ分からない!
・抽選で当選し過ぎちゃったらどうしよう!
という懸念があると思います。そんな時は学期開始後に空席がある場合に学習センターごとに受付が行われる「追加登録」を活用すると良いです。科目数もコントロールできますし、空席状況と自分のスケジュールを勘案して開講日がある程度近づいてから登録することもできます。上手く使えると便利です。
※当たり前ですがそもそも空席が出ないような人気科目だと使えないのでこれはこれでリスクはありますが。

まとめにかえて

ここまで読んでいただきありがとうございました。最後に、2023年度1学期開講の面接授業の中から私のチョイスでこれはイチオシ!という越境受講したすぎる科目を勝手に選んで掲載します。

鹿児島大学の練習船に1泊して海洋観測・航海実習
リトルワールドを設立者と周る機会なんてそうないです
身延山の宿坊に1泊して4:30から朝勤するらしい

以上です。越境受講してみたい!という気持ちになっていただけたら幸いです。重ねてになりますが、越境受講の可否含めて未だに新型コロナウイルスを巡る情勢が流動的かと思いますので、大学からの公式アナウンスに従っていただくようにだけよろしくお願いします。

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