見出し画像

【建築・インテリアを考える前に読むブログ】第9回 Arch Design Award 2023受賞作品解説シリーズ~Bronze award「Li aile」~

今回のテーマは前回に引き続き先日受賞したArch Design Award 2023の受賞作品についての第4弾です。

Bronze 「Li aile」


動画で解説していますので下の画像をクリックしてご覧ください。


https://youtu.be/rNaEXScwFyo

以下から書き起こし文章でもお読みいただけます。

クライアントの要望・現場の状態

この案件はネイルとまつげエクステンションのサロンの
2号店にあたる物件としてオファーを頂きました。

1号店がどんなデザインのテイストなのか見せていただきながら、
また違った世界観を出したいなという想いがあってデザインしました。

物件は築年数も40〜50年ぐらい立つような、
真四角の昔ながらの物件で、天井の高さもそんなに高くない。
サッシにも時代を感じるようなテナントでした。

ただ、テナントの広さとクライアントから依頼された予算を照らし合わせると、
あと2倍3倍ぐらいの予算がないとなかなか厳しいなという条件だったんですね。

デザインコンセプト

信じてデザインの依頼をくださっているわけですから
なんとか期待に応えたいということで
解決方法としては何がいいのか考えていたのですが、
現場を見に行ったときにすぐに思ったのが壁を全部隠してしまおうと。

これは例えば壁の素材・仕上げを変えてとか、
時代を感じるようなサッシなどをあれこれ隠しても、
結局はお金ばかりかかって
効果的なデザインの処理はできないなと思ったんですね。

それならば壁という壁を全部ドレーブカーテンで包めばいいんじゃないかと。
そして、角という角は全部R曲線を描いたら
柔らかい雰囲気ができるのではないかと考えました。

そのドレープカーテンもいろいろあるんです。
半透明であったり、透過性がないもの、
あとはツヤがあったりなかったりという中で私が考えたのは
少しゴールドがかった煌びやかなドレープカーテンというものが
イメージで浮かんできて、
実際にその素材の選定に入って、
クライアントにも何種類かのサンプルを見てもらった中から、
これがいいんじゃないかという話の中で決まったんですね。

デザインワーク 

天井は希望としては全部一度解体して新たに天井を組み直したかったのですが、
予算の問題があるので、それができない。

ただ、既存の昔ながらの蛍光灯が沢山付いている。
天井は潰さないけれども、照明器具は絶対に取らないと
話にならない。
照明器具を取したら、配線穴が空いていたり、色焼けしていた為、穴埋めしたり塗装して色むらをなくし、
その状態でややレトロな雰囲気のあるガラスシェードのシーリング照明を取り付けました。
シェードには縦方向に切り込みが何本も入っており、独特の光り方をし、天井を華やかに演出してくれています。

お客様ゾーンにおける間仕切りは壁ではなく、やや透過性のあるシアーカーテンとしました。
壁を設けないことで空間全体に圧迫感を感じず、そして女性のお客様にとって安心できるようにしました。

全体的な印象としてラグジュアリーな雰囲気を感じる空間にしたかったので、床は大理石調の塩ビタイルとしたり、
オリジナルデザインのカウンターも石を貼っているように見せつつ、メラミンで仕上げたりとコストを意識しながら工夫してつくりました。

LEDネオンサイン

カウンターのすぐ後ろにネオンサインを入れてるのですが、
ネオンサインというものはイメージとしては結構高い。

でも最近はLEDネオンサインというのが登場しており、
既存のネオンサインよりも安く採用できる。
これもメーカーによっていろいろあるのですが、
その中でコストと納期などいろいろなもののバランスの取れたものを
採用しました。

限られた予算の中でも、職人の皆さんがきちんと責任感を持って上手に仕上げてもらったなという物件です。

クライアントの評価

仕上がった時、やはりお客さんは当然に
「これぐらいの予算だったらこれ位の出来だろうな」
みたいな想像をもたれていたと思いますが、
実際の出来上がりとイメージしていたそれとを比べたら、良い意味で乖離していたのか非常に喜んでもらえました。

私にとってもこれぐらいの空間の仕上がりだろうなと思っていたイメージよりも
もっと上のものが出来たので、すごく良かったなと思います。

それらの工夫や努力がこうして賞を頂くことが出来、報われたという気持ちですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?