見出し画像

ももた、目覚める

猫への御挨拶といえば、サワークリームとサーモンのペーストでしたっけ。
かのエリオットさんが書いていたのは。
礼儀正しく貢物をささげつつ、挨拶をして、信頼を得る努力をすべし。
猫に小判ならぬ、猫にクリーム。

きっかけは、家族の誕生日。
ショートケーキをホールで買ってきたので、生クリームをほんの少し、指ですくって、ももたに舐めさせてみたのです。
途端に、ももたの目が大きくなりました。
こちらの手を前足でおさえつけて、舐めようとする。
そんなに興味を示すことが初めてで、おかわりをもう少しだけ、あげました。

それからです。
食事時になると、ももたが隣にきちんと座って、じっとこちらを見つめるようになったのは。
このひたむきな眼差しを無視するのは、なかなか気力が必要です。
しかも、ずっと無視をしていると、ちょいちょいと手が伸びてくるのです。
更に無視していると、私の膝の上に前足をつき、テーブルの上をチェックしようとしてきます。
それ以上はお行儀が悪いので、アウトです。

ももたが寝ているときに撫でようとするだけでも、指先のにおいチェックが以前より念入りになりました。
というか、においチェックの前に舐めるし!
私の手、なにもついてないって!!
手を前足ですくいあげて自分の口元に持っていこうとしたり、押さえつけて舐めてきたり。
それを振り払おうとすると、なかなかの勢いで、ぱしこーんと力いっぱい叩き落そうするのもやめてほしいものです。
完全に、飼い主の手は獲物の扱いです。

我が家の猫たちには、にんげんの食べるものは極力、食べさせないようにしてきました。
そのせいか、にんげんが食事をしていても、猫たちは無関心。
それが数年続いていました。
いや、確かに思い起こせば、一度だけ、私だけ帰りが遅くて夕食が遅くなったときのこと。
家族がサイコロに切った牛肉を焼いてくれたのですが、4つと聞いていたのに、皿の上には3つしかないことがありました。
横には前足で顔を洗うももたが…。

事故から1年が経ち、ももたは軽快に家の中を走り回っています。
先日は数日の行方不明があり、こちらの肝が冷えましたが、それから一層、甘えたぶりに拍車がかかったような気がします。
そのくせ、隙あらば外に出ようとするのは、本当にやめてほしいのですが。
その甘えたももたに、家族もすっかり甘く、気づけば、クリームパンをももたにあげたりするから、ますますももたに狙われるという悪循環が起きています。
学習を強化させてどうするねーんと言いたいところですが、最初に生クリームをあげたのが自分なので、家族にも強く言えない…。

ももたは固いものは食べることが苦手で、舐めるだけで食べられるペースト状のウェットフードが主食です。
鶏肉なども食べさせてみたくても、塊のものは表面を舐めて、舐める勢いでどこかに飛ばしてしまうだけ。
視力も衰えた中で、味覚と嗅覚もかなり衰えているのではないかと思います。
その証拠に、白いご飯だろうが、ドレッシングのかかったサラダだろうが、ももたは鼻先をつっこみます。
鼻がべったりとくっつけて、舐めてみてから初めて、対象を判別しているような様子に見えます。

そんな風に生きているももたにとって、クリームは青天の霹靂だったようです。
ここまで何かに興味を示す、ほしがるのは、初めてのことです。
飼い主、ちょっと嬉しい。あと、ももた、かわいい。
一瞬で舐めちゃうから、味わっているのかどうかわからないけど。
すっかりクリームを舐めとった後でも、ずっと舐め続けるので、いつか指をかじられそうで本当に怖い。

あの大きな目で見つめられたり、ちょいちょいとされると、あげたくなっちゃうんだよなぁ。
その代わり、少し下痢気味になっちゃうのであげすぎ注意なんだけどなぁ。
肥満にさせたくないのもあるけど、あの事故のけがを生き延びたのだから、寿命は気にせずに生活させたい気もするし。
私があげなくても、家族があげちゃうしなぁ。
いつもいつもは無理だけど、また、口実があったら、ケーキを買って帰ろうと思うのです。

という、ももたがクリームに目覚めたという近況でした。
なお、ほかの猫たちは、そこまで気に入っていない様子です。


サポートありがとうございます。いただいたサポートは、お見舞いとしてありがたく大事に使わせていただきたいです。なによりも、お気持ちが嬉しいです。