視座

書いても気づかれないくらいに間が空いてしまった。
けれども書く。


なんだか、ここ数年はほとんど新しい音楽に心が動かない。

前から好んで聴いていたミュージシャンの新譜であれば多少は聴くけれど、それでも旧譜ほどではない。まるっきり新しい音楽を好むことはほとんどなくなってしまったと言っても差し支えない。
こんなにつまらないことはない。

本当なら、新しい音楽にときめくべきだと思ってる。
古い音楽の価値を軽んじてるわけでも、流行りの音楽に同調するべきだと言ってるわけでもない。


ただ、自分の中では少し新しいパターンとして、何年か前に聴いて、その時は「うーんようわからん」と何度か聴いた後にぽーいとしていた音楽が急に良く感じることはある。
最近ではSZAがそうだ。
SZAと言えば、昨年末に出したアルバム『SOS』がBillboardの一位になったり、今でもストリーミングサービスのグローバルチャートではランキング上位に入り続けている大人気シンガーである。が、私がピンときたのは2017年に彼女が出した『Ctrl』である。

『Ctrl』はこれもこれで当時十分話題になっていて、当然リアルタイムで知ってはいたのだけど、特に好んで聴くようにはならず。このアルバムに入っている『The Weekend』という曲をCalvin Harrisがリミックスしたもののはよく聴いてたけど、それは当時のCalvin Harrisがリリースした『Funk Wav Bounces Vol.1』への興味からくるものだった。(なにしろ『The Weekend』のリミックスは(Funk Wav Remix)と名付けられ、当時の彼のモードが盛り込まれていた)。

SZA自体にハマることはなかった。


今になって『Ctrl』を聴くことがある。
正直今でもそこまで好みではないんだけど、急に思い出したように聴く。『The Weekend』もリミックスされたものじゃなく原曲も聴くようになった。

書きながらすっかり抜け落ちていた記憶が戻ってきた。
過去にピンと来なかった楽曲群が急にふと良く響くようになるのは事実、最近あることなのだけれど、SZAはそれとは違った。理由があった。
SZAがLizzoの楽曲に参加した『Special』があまりにも良かったのだ。それで、その曲を補助線にするように他の曲も聴き始めたわけだ。

しっかりと、理由はあった。

過去にピンと来なかったけど、急に響き始めた楽曲群という最初に向かおうとしたテーマからは大きく逸れるがこのまま進めたい。

……LizzoはLizzoで、2017年頃に出た『Boys』や『Juice』という楽曲は好んだものの、その後に出たアルバム2019年の『Cuz I Love You』がピンと来ず遠のいていたシンガーであり、感じるところ思うところはあるけれど、それも今は割愛。


改めてSZAを聴く。

結局のところ唯一の引っかかりとなっていた『The Weekend』が1番良く感じるのは仕方のないことかもしれない。最初のインパクトを上回るのは難しい。
改めて歌詞を読んでみると、変わったことをテーマにしていると思う。SZAの今1番のヒット曲は昨年のアルバム『SOS』に収録されている『Kill Bill』だが、歌詞だけ取れ『The Weekend』と正反対のようなことを歌っている。正反対でなければ、延長線かもしれない。なんにせよ違う地点に立っている。対局とも取れるし、時間の経過による変化の結果とも取れる。ざっくりと言ってしまえば、面白い。
ただ『Ctrl』にせよ『SOS』にせよ、やっぱりアルバムごと好きになることはなくて、曲ごとにアンテナが立つ。海外の作品でアルバムごと好きになる新譜ってあんまりないかもしれない。音楽は言語を介さずとも、良さがわかるものだとは思うけれど、どんな歌詞なのか、それがどんなメロディに乗ってるのかはポップスに置いて間違いなく大切だから、母語でないのは思いのほか大きな理由かもしれない。

言葉がわかること。わからないこと。
日本語話者であることの良し悪し。
…言葉について考えられることはある意味、東端の島国に生まれたことによる特権かもしれない。

それでは、また。
あなただけを愛しています。

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