毛皮のマリーズ『毛皮のマリーズ』

毛皮のマリーズ『毛皮のマリーズ』

M14.人間不信にてアルバム全体に言及してみたところ、何か自分の中で新たな発見があったような気になったので、他のアルバムも同じ体裁で触れてみようかと思います。

今回は『Gloomy』の次作『毛皮のマリーズ』に触れようと思います。
『毛皮のマリーズ』はセルフタイトルのメジャーデビューアルバムです(自らの名前をタイトルにすることをセルフタイトルと言います)。


1.ボニーとクライドは今夜も夢中
ボニーとクライドは1930年代のアメリカで強盗や殺人を繰り返した実在のカップルです。事実だけを取ればなかなかに禍々しい2人ですが、周りに理解されない恋や逃避行の象徴として映画や舞台そして沢山の音楽に引用されています。この曲もその一つと言うことができるでしょう。曲はライブハウスの暗闇から出たくない気持ちが歌われています。「このまま朝まで」という気持ち、とてもわかります。そしてこのまま朝が来なければいいのに、と思うのです。永遠に終わりが来なければ、と。
タイトルのボニーとクライドは志磨さんの元に届いたファンレターに「私と、ボニーとクライドになってください」というような文面があったことに由来します。このエピソードをロマンチックに感じる時とピンとこない時があります。

2.DIG IT
元々は毛皮のマリーズとは別のバンドで志磨さんがやっていた曲のセルフカヴァーのようなものです。こういう遅いロックンロール、好みです。

3.COWGIRL
70年代ローリングストーンズ 風ロックンロール。引き続き好みの部類であります。ちなみにこのアルバムは2010年頭にリリースされ、製作されたのは2009年のものですが、「「マサチューセッツの暴れ馬」と歌詞に入れたけど今もカウボーイなんているのか?」と志磨さんはネットで調べたそうです。ちょうどその前日にマサチューセッツの高速で横転した車から牛が逃げ出したのも束の間、現役カウボーイが瞬く間に捕まえ、名も伝えずに立ち去った、という出来事が起きていたそうです。2009年もカウボーイは現役。
ちなみに2020年代も数は少なくてもいるらしいです。

4.悲しい男
黒人差別的な意味合いでメジャー作品には入れられないんじゃないか、と思っていたところレコ倫(正式名称はレコード制作基準倫理委員会。歌詞等に倫理的にアウトなものがないか審査する組織)にOKを出されただけじゃなく、「良い歌詞です」と言われた名曲。「少なくとも差別だといってくるやつよりは黒人文化を愛してきたはずです」と言っていてカッコ良いと思いました。(そもそもロックンロールとは黒人に憧れた白人の音楽です)(ものすごくざっくりまとめた)

5.BABYDOLL
チープトリック風ロックンロール。歌詞自体はお母さんを亡くした女の子の歌です。このアルバムは物語性の高い曲が多いことも特色かも知れません。ただし、歌詞の受け取り方はそこまで限定的ではないと思っています。どういう物語の曲かと知っていても汎用性がある歌詞のような。
R.I.Pツアーという、ライブツアーがかつてありました。それは志磨さんが「今までたくさん曲作ったのに全然演奏してない曲めちゃくちゃあんじゃん」と思い立ち、演奏頻度の低い曲を中心にパフォーマンスされたライブです。せっかく作られたのにパフォーマンスされない浮かばれない曲たちに「R.I.P.」(Rest in peace、安らかに眠れ)という皮肉なタイトルです。その時に、演奏された『BABYDOLL』、とても良かった。そしてこの曲をめぐって曲中に長めの茶番があるのですが(褒め言葉)、DVDで改めて見直した時観客席で爆笑してる自分が見切れててすごく恥ずかしかった思い出があります。YouTubeでも観れます。物好きな人は探してください。ホントに一瞬です。チープトリック、好きで良かった(好きじゃなかったら爆笑どころかちんぷんかんぷんだった。)。

6.バンドワゴン
RCサクセションの『ドカドカうるさいR&Rバンド』風の爽快なロックンロール。『ドカドカ〜』と並んでとても好きな曲です。爽快。

7.サンデーモーニング
元々のタイトルは『桜の花の満開の下』。坂口安吾っぽくていいですね。毛皮のマリーズのごく初期のアルバム(ライブ会場だけで売っていたような代物で高額転売されるようなレア物)にはそのタイトルで入っていましたが、メジャー盤で再度演奏し直すにあたり世の中に桜と入った曲が多過ぎるために変えた経緯があります。来年も見ようと言った桜の下に思い出を埋める歌です。歌詞が若いというか青いというか、甘酸っぺぇ。

8.それすらできない
歌詞に出てくる「知らない街に降りしきる5月の雨」は志磨さんが上京時あまりにお金がなくて嫌々工事現場の警備員のバイトをした際に、大雨で運休の現場に配置され、何時間も立ち尽くした経験からきています。「これ以上悪くなることは何もない」と本気で思ったようです。また、近い時期に亡くなった忌野清志郎の影響が大きく出ています。このアルバム、思えばとても清志郎っぽい(前述したRCサクセションも忌野清志郎のバンドです)
『それすらできない』、あらためて聴くととても良いこと歌ってます。

9.金がなけりゃ
志磨さん曰く「シリアスなムードに耐えきれず作ってしまった。」という曲。シンプルに「お金が欲しい」という歌です。

10.すてきなモリー
ベースの栗本ヒロコ、通称ヒロTがボーカル。モリーちゃんは悪い男に騙される純朴な田舎の女の子です。作っている間は木村カエラの声をイメージしていたそうです。………めっちゃ想像しやすいくらいハマってます。木村カエラカバーしないかな。(当然ながらヒロTの声もばっちしです)

11.晩年
メジャーデビューアルバムなのに晩年です。
太宰治にあやかっています。春の夕暮れの歌です。
前作『Gloomy』と同様に弾き語りテイストの曲となっています。ドカドカうるさいロックンロールの締めの曲としてとてもコントラストです。うるさいロックンロール(わざと語弊のある言い方をしています)が好きな私ですが、『Gloomy』と言い、『毛皮のマリーズ』と言い、締めの弾き語り曲がとても好きです。


以上『毛皮のマリーズ』でした。

それでは、また。あなたを愛しています。

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