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商店街で感じた、ローカルビジネスとブランディングの難しさ

こんにちは! ブランディングテクノロジーの和田(@hiroshiwada12
)です。ブランディングライターやってます。

今回は“ローカルビジネス”“ブランディング”についてお話ししてみます。この2つのキーワードをつなげるのが「商店街」です。東京の下町にある小さな商店街をテーマに、ローカルビジネスとブランディングを考えてみます。

じつは私、この商店街のブランディングを担当している真っ最中ですが、現段階で「一筋縄ではいかないな……」というのが率直な感想です。正直、苦戦中。

現在進行形のプロジェクトですが、実体験を振り返りながら苦戦しているワケを探ってみます。そこから、ローカルビジネスにおけるブランディングの難しさや反省点を洗い出してみたいと思います!

1:まずは商店街の現状把握から

東京の東部に位置するこの商店街は、まさに下町の名がふさわしい場所にあります。周辺環境はいいのですが、なんせ駅から遠い……。主要駅からは徒歩で20分もかかるなど、なかなか立地条件としては厳しい商店街です。

「商店街だから、遠方からの来客は必要ないでしょ? 地域の方が来てくれればいいじゃない」と思うかもしれませんが、商店街では定期的にイベントを開催しています。主要駅周辺は日本有数の観光スポットでもあるので、国内外の観光客がたくさんいます。

その方たちにイベント情報を伝えても、「遠いから……」と敬遠されてしまいます。「商店街の近く(徒歩20分かかってしまいますが)まではたくさんの人であふれている。来てもらう気になる理由をつくれないか?」というのがブランディングプロジェクトの発端。

この点は大きな議題です。

ほかにもマイナス点をザっとまとめてみると、

・商店街全体で20店舗しかない
・アーケードがなく、一目で商店街と分からない
・しかも、一店舗一店舗の距離が離れている
・商店主の方の高齢化が深刻
・近くに大型スーパーが進出
・予算・人員・ノウハウがない
・おまけに商店の仕事もあるので、時間がない

うーーーん、悩ましい……。頭を抱えてしまいます。気を取り直して、いい点もまとめてみます。

・近隣に集客力のある観光スポットがいくつもある
・大型マンションができるなど、近隣人口はわずかながら増えている
・古くから住んでいる方も多く、地域とのつながりは強い
・商店街には老舗も多い

いい点もたくさんあります!

ワークショップを通じて商店主の皆さまと現状把握を進めましたが、「意外といい点もあるよね」という声が聞こえてきました。そうなんです、人は悪い点にばかり意識が向きがちですが、必ずいい点(磨けば改善する点)があるはず。

そこを再認識・再確認して伝えていくのも、ブランディングの大切な要素かなと思っています。

それに駅から「遠い=ダメ」とは限りません。江東区にある砂町銀座商店も最寄駅から徒歩15分と、お世辞にも駅から近いわけではありません。でもめちゃくちゃ大賑わい! 

私も何度か訪ねたことがありますが、すごい活気でした! やはり、行きたい理由づくりが大切なんだなーと思わせてくれる事例ですね。

2:次々と立ちはだかる壁、そして壁……

経営には「ヒト・モノ・カネ」の三要素が必須ですが、これがしっかりと循環していないと、企業経営は立ち行かなくなります。この三要素を充実させていくかが経営のテーマですが、商店街に必要なのは「ヒト・カネ・トキ(時)」だと思いました。

・ヒト:個人経営もしくは家族経営なので、人を雇うのが困難。後継者もいない
・カネ:集客やブランディングに予算を投資できない。行政の補助金が頼みの綱
・トキ:個人経営の集合体なので、お店のことだけで手一杯。時間がとれない

きっと、日本中の商店街に共通する課題だと思います。この3つが不足しているために、シャッター商店街になっていく姿を指をくわえて見ていることしかできない。これが、商店街の現実なのかもしれません。なんとかしたい。

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特にお金に関しては、組合費を滞納してしまうケースも多いそうです。「自分のお店の経営だけでも大変なのに、組合費なんて出せない!」そうです。そこで頼りにするのが、行政からの補助金

ただ、補助金は使い道が限定されているケースがほとんどなので、思い切った施策に投資することが困難です。「最終的なアウトプットは、パンフレットやチラシなどの紙(有形物)でないとNG」というケースもあります。

3:みんなの気持ちをまとめるのが難しい

もしかすると、これが一番大きな壁かもしれません。商店主の方は経営者。商店街は経営者の集合体なので、その方たちの意見を取りまとめるのは一筋縄ではいきません。しかも、時間がないので一堂に会することが難しい。意見の集約は困難を極めました。

そしてもう一つの壁が。皆さまの話を聞いていくうちに気が付いたのですが、必ずしも商店街を活性化させたい人ばかりはありません。この事実は、ちょっと(かなり)衝撃的でした。

理由を紐解いていくと……、

①:家族だけで経営しているので、お客様が増えると困る。今がちょうどいい
②:事業継承する意思がないので、このまま徐々に縮小させていきたい

この2つに集約されます。特に②ですが、ご年配の商店主の方にこの傾向が強いかもしれません。「お店を畳む方向で考えている」ということです。

ただ、そこで困るのが若手の商店主の方。「いやいや! 自分たちはまだまだこの先があるから、商店街が元気じゃないと困る!」と、世代間でのギャップが顕在化する場面です。

「ご年配商店主と若手商店主」という対立構造が生まれてしまい、一時的に悪い空気が流れました。こういう問題、日本中の商店街で起こりえることだと思います。

・商店街の活性化に対するモチベーションはさまざま→
・「ガンガンやろうぜ!」と「今のままでいいじゃん」に分かれる→
・意見の集約が難しくなる→
・「ガンガンやろうぜ!」派にとっては、商店街に加入していることが足かせになりかねない→
・「商店街から離脱する!」「独自でやる!」となる→
・ますますバラバラに

こんなマイナスのスパイラルが形成されてしまいます。もう、こうなるとお手上げ状態。

4:円頓寺商店街のケーススタディ

ここでちょっと視点を変えて、成功している商店街のケーススタディにして考えてみます。ご紹介するのは、名古屋の円頓寺商店街(えんどうじ、と読みます)。

詳しくはこちらの記事を読んでいただきたいのですが、ガラガラだった典型的なシャッター通り商店街が、人であふれる商店街へと再生しています。

立地条件も名古屋駅から徒歩15分と、似ている。記事の中では、建築家の方が行った商店街(街)との関わり合い方にポイントがあるとまとめられています。

「コンサルタントとして商店街を再生させよう!」というスタンスでなく、あくまで街の一員としてちょっとづつ馴染んでいったそうです。そして、空き家対策の切り口で、「ここでしか出会えない」を基準にゆっくりと空き店舗を埋めていったそうです。

ゆっくりと変化させていくスタンス、すごく大切だと思います。共感できます。

5:ここまで振り返ってみて(まとめ)

■デメリット=ダメとは限らない →砂町銀座商店街は駅から遠くても、大賑わい
■商店街には「ヒト・カネ・トキ(時)」が足りない
■補助金はありがたい反面、活用の仕方や成果の出し方が難しい
■集客に意欲的な商店主ばかりではない →世代間の思惑がぶつかりがち
■関わり方とゆっくりとした変化が大切(円頓寺商店街の例)

まだまだ進行中のプロジェクトなので振り返るのは早いかもしれませんが、商店街のブランディングには、「ていねいな話し合い」「十分な時間」が必要だなと実感しています(商店街のブランディングだけに限った話ではありませんが)。

円頓寺商店街の記事でも紹介されていますが、「街の常連になることから始める」「変化はゆっくりと」といったように、「じっくりていねいに」進めていくことが必要なんでしょうね。

ブランディングうんぬんよりも、「コミュニケーション(話し合い)」にリソースのほとんどを当てたのがここまでの過程です。短期的な施策でなんらかの効果をあげるのは、かなり厳しいかなとも思っています。

反対に「Webサイトの制作のみ」「パンフレットの制作のみ」など、単発の施策には補助金は使い勝手がいいかもしれませんね。「ブランディング」「活性化」などと中長期のプロジェクトと補助金は相性があまりよくないのかなーとも実感します。

関わり方のスタンスがかなり難しいです。

下町の観光スポットに近いという利点を活かして、外国人観光客を上手く取り込むのも一つのアイデアかもしれません。Airbnbのホームシェアリングのように。老舗店舗が多い利点を活かして、「職人体験ができる商店街」というコンセプトを考えたりしています。和菓子屋さんで和菓子職人体験したり。


具体的なアウトプットをお見せできなくて心苦しいですが、まだそこまでの状態ではありません。商店街にとってのシンボル的なキャラクターをつくりましたが決まらなかったり、定期イベントを新しいコンセプトで行おうとしても温度差があったり。

でも、ご縁ができた以上は何かしらの結果は残さなくちゃです。年度ごとに中期的な施策を打っていくので、途中途中でこちらの記事をあげていきたいと思います。じっくりと腰を据えてのスタンスですね。

今後にご期待ください!

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