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事例から振り返るブランディングのプロセス~歯科医院編~

こんにちは、ブランディングテクノロジーのコピーライター・和田裕史です(note初記事なのでいささか緊張しています……)。


中小企業様からブランディングに関するご相談をいただく機会が多いのですが、「具体的にどんなプロセスでブランドがつくられていくの?」という質問が多く寄せられます。

ムリもないと思います。「ブランド」「ブランディング」と一言で言ってみても、触ることも手に取ることもできないモノがどうやってつくられていくのかは、“???”だと思います。そんな得体の知れないモノやコトに投資することなんてできないですよね。

そこで今回は、私が担当したブランディング事例をご紹介させていただくことで、ブランディングの全体像を具体的にイメージできるようにしていきたいと思います!

1:「なぜブランディングをやるのか?」を明確にする

私が実際に担当させていただいたT歯科医院様を事例にプロセスを振り返っていきます。

まずはT歯科医院様の基本情報から
・スタッフ数:10名以下
・開業したばかり・集患は順調(具体的なレセプト枚数も教えていただきました)
・今後、分院展開や新しいコンセプトの歯科医院をつくりたい
・スタッフの結束力や人間としての成長を大切にしたい(インナーブランディング課題)
・リクルートも強化したい(アウターブランディング課題)
・中期の経営目標:20○○年までに分院数を○医院に拡大、売上○○円を達成する※○○の箇所は伏せさせていただきます

理事長とお話しをする中で、ザっとこんな課題が浮かび上がってきました。ブランディングプロジェクト走らせるうえで大切なのが、「なぜブランディングをやる必要があるのか?」を明確にすることです。これはブランディングだけに限りませんが、「とりあえず」「なんとなく」でプロジェクトを走らせても、上手くいくことはありません。ここ、肝心です。

そして、目的を明確にするためには下記の3つのポイントが大切かなと思います。

①:将来ビジョン(目指したい歯科医院像、ビジョンを達成するための経営戦略や採用戦略)
②:現在の課題(経営課題、人事課題、採用課題などを良い面と悪い面から深堀する)
③:将来ビジョンと現在の課題のギャップ(足りないモノやコトが見えてくる)

この①と②を明確にすることで、③の足りないモノやコトが見えてきます。③を具体的に形にしていくことで、事業推進の大きな力になります。

ブランディングはロゴやメッセージをつくることが目的(もちろんこれも大切ですが)ではなく、過去→現在→未来をつないで経営の力を最大化させることが本質だと思っています。そのために「未来を描き、現状を見つめ、足りないモノやコトを埋めていくことがブランディングのポイント」だと思います。

T歯科医院様では、「今後の分院展開や採用強化にあたり、T歯科医院ブランドをつくることで患者様や地域の方、採用希望の方に軸のあるメッセージを伝えていく。院内スタッフにも、医院理念や行動指針を明確にすることで、足並みをそろえていく。その結果として中期の経営目標を達成するために、ブランディングを行う」と明確にしました。

2:CI要素を抽出し、構築する

ブランディングを行う目的を明確にしたら、CI(コーポレート・アイデンティティ)を抽出し、構築していきます。「抽出」なんて大そうな言葉を使っていますが、インタビューやアンケートを通じて“ブランドの素”を集めていきます。

T歯科医院様では下記を実施しました。

・理事長インタビュー(1.5h)
・スタッフインタビュー(歯科医師、歯科衛生士、受付、助手、それぞれ0.5~1hづつ)
・患者様アンケート:約30名分

これだけインタビューやアンケートを行うと、まとめるのがひと苦労です。でも、言葉によって“T歯科医院様らしさ”がぼんやりとですが見えてきます。例えば、インタビューで必ず出てくるのが「人を大切にする」「人情味が強い」というキーワード。

理事長はもとより、スタッフの方からもこのキーワードが必ず出てきます。こういう共通するキーワードがとても大切です。もっと深く突っ込んで、「具体的にどう人を大切にしていますか?」「どんな時に人情味を感じますか?」など深掘りしていきます。

インタビューやアンケートの内容をまとめて、スタッフ全員でディスカッションを行ったりもしましたが、このキーワードが中心テーマとなりました。

ディスカッションのテーマ
・T歯科医院にとっての「人」「人情」って?
・T歯科医院が何よりも大切にする価値観や行動基準は?
・歯科治療を通じて叶えたいことって?→ただ治療するだけの歯科医院でいいの?それ以上の何かを届けたい!などなど……

理事長からスタッフまで、全員で意見や考えをぶつけ合うことで想いが集約されていきます。バラバラだった足並みがそろってくる過程でもあります。このインタビューからディスカッションの過程が、ブランディングの要と思うくらい。

抽出や衝突、集約を繰り返すことで“収斂”され、「ブランド=らしさ」が結晶化していきます。

3:ブランドを見える化する

ここまで来て、ようやくブランドが見えるようになってきます。具体的には、「医院理念」「ブランドストーリー」「ロゴマーク」などを作成することで、T歯科医院ブランドが見えてきます。

これらの過程を経て誕生した「医院理念」「ブランドストーリー」「ロゴマーク」などは、アウターブランディング(対患者様、対地域、対求職者など)にも、インナーブランディング(対スタッフ)にも大きな力を発揮していきます。詳しく解説します。

アウターブランディングへの効果
・歯科医院の目指す歯科医療を明確に伝えられる
・提供する歯科医療の特長や、人を大切にする姿勢や接遇などを訴求できる
・理事長やスタッフの人柄に触れられ、T歯科医院の人格を伝えられる
・求職者に対して明確なメッセージを発するので、ミスマッチを回避できる→集患や求人の強化につながるので、事業推進の大きな力になる
インナーブランディングへの効果
・スタッフの考えや行動に軸が通るので、足並みがそろう
・スタッフごとにバラバラだったブランド理解度が、均一化される
・ブランドに共感する人が入社し合わないスタッフが退社することで、ブランド純度が高まる→結束することで事業推進の大きな力になり、経営目標の達成の大きな力となる

ザっとこんな感じです。「ブランドの軸ができるので、ブレることなく真っすぐ成長していける」と
まとめられます。「ブランドづくりは経営の軸づくり」とも言えるかもしれません。

4:まとめ

かなり駆け足でブランディングの全体像を解説してみました(実際には、つくられたブランドを浸透させていく施策などもありますが、またの機会に解説してみたいと思います)。

残念ながら、「ブランディング=明日から売上UP!」という訳にはいきません。長期的な取り組みになりますし、数字の変化として現れるには時間がかかるかなとも思います。それでも経営に軸を通すことで、ムリ・ムラ・ムダをかなり省くことができますし、採用へのコストも抑えられるでしょう。トータルで見れば投資よりも得られるメリットが大きくなるはずです。


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