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あいみょんの歌詞は映画的、だと思う

先日、あいみょんファンクラブツアー「PINKY PROMISE YOU」に行ってきました。
ライブは全部応募しているし、一人でも行くファンなのですが、今日はそんなあいみょんの魅力を語りたいと思います。

メロディとかコードとか、そういう音楽的なことは分からないので、彼女の書く歌詞についての話が中心になります。

私が思うに、彼女の書く曲はとても映画的です。
ひとつひとつの曲にストーリーがあり、その曲を通してどんな人を描いているのかが見えます。

映画はカットの積み重ねでできています。一見バラバラに見えるカットを繋ぎ合わせることでそこに意味が生まれます。
楽しそうにしている男女のカットの後に、それを見てポツンと佇む女性のカットがあれば、きっと失恋を想像するでしょう。
何を写すか、どう組み合わせるかは監督の個性の見せ所ですが、曲でいうと何を描写するか、どんな言葉を組み合わせるかになるかと思います。

あいみょんは、この言葉の組み合わせ方とカットの選択が巧みです。

例えば有名な『君はロックを聞かない』には

埃まみれ ドーナツ盤には あの日の夢が踊る

という歌詞があります。
夢が叶う、夢がある、などという使い方はしますが「夢が踊る」という使い方は普通しません。
でもこの「踊る」という言葉によって、古き良きドーナツ盤への憧れや弾むような気持ちが伝わってくる気がします。
単なる情景の描写を超えて、意味が生まれました。

「夢が踊る」に見られるような定型表現からの逸脱はあいみょんの歌詞でよく見られるのですが、語感が良いのはもちろん、そこに新しい意味をもたらしてくれるのが新鮮です。

同じ曲の

真面目に針を落とす
息を止めすぎたぜ
さあ腰を下ろしてよ

という部分は「はり」「いき」「こし」とふた文字の単語が主語になる文が続いており、読むだけでも気持ちが良いです。
一応説明すると、この『君はロックを聞かない』という曲は、ロックを聞かない女の子を好きになった、ロックが好きな男の子を描いた歌です。
先ほどの歌詞は、ロックを聞かない君に、今、ロックを聞かせようとする僕の姿を 手元から 口元から 姿勢から アングルを変えて切り取っているような感覚があります。
そして、これらの言葉が組み合わさることで聞き手が感じるのは「緊張」です。ここでは文章の組み合わせによって新たな意味が生まれたように思います。

カットの選択ということでいうと、私が好きな曲は『ハルノヒ』です。
「映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~」の主題歌ということもあり、この曲は野原ひろしのストーリーなのです。

冒頭が

北千住駅のプラットホーム 銀色の改札
思い出話と想い出ふかし 腰掛けたベンチで

という歌詞。

北千住駅はひろしがみさえにプロポーズした場所であり、春日部が通る東武伊勢崎線の主要駅でもあります。
最後まで曲を聞くと分かりますが、この曲はひろしとみさえの出会いから現在までのストーリーが描かれています。
彼らの出会いを描くのに、まず駅のプラットホームのカットを持ってくる。改札を抜けて、外のベンチへ移動していく。まるでカメラが動いていくようで、情景が浮かびます。

この曲の最後は、こんな歌詞で終わります。

住み慣れた駅のプラットホーム 水色に挨拶
「お帰りなさい」と 小さく揺れる影を踏む幸せ

この“「お帰りなさい」と 小さく揺れる影”はもちろん、しんのすけやひまわりのことですが、彼らのことを”小さく揺れる影”と表現するのも面白い言葉の選択です。ひろしの帰宅を足元から切り取ります。

子供とも家族とも言わない、間接的な言葉を使っているにも関わらず、私たちの目の前には、ひろしの帰宅に合わせてひょっこりと玄関前に出てくるしんちゃんの姿、それに気づき、小さな影を踏むくらいに近づいて抱き上げるひろしの姿がありありと浮かんで見えます。

あいみょんの曲は、ぼんやり聴くだけでも良いと感じるものばかりですが、歌詞を詳しく見ていくと、あるべくしてそこにあるような、素敵な言葉の組み合わせに気付かされます。
ぜひ昔の曲も含めて聴いてみてほしいです。

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