物価高対策について。

 2023年10月26日、岸田首相は歴史的な物価高の対策として、与党に所得減税の具体化に向けた制度設計を指示した。所得減税と言うが、庶民が悲鳴をあげる中、過去2年間で3兆円を超える税収の増加があり、所得税を返還するという意味である。
 対策の第1段階は、年内から年明けにかけて、住民税の非課税の低所得世帯に対し、既に始めている1世帯3万円に加え、7万円をできる限り迅速に追加支給し、1世帯当たり計10万円を給付する。第二段階として来夏に所得税と住民税を合わせて1人4万円の定額減税を実施する予定である。
 しかし、恒久減税ならまだしも、たった1年間で給付金や定額減税は終了する。このような一時しのぎの対策では、経済効果は薄く、GDPの押し上げ効果もわずかに0.12%と算定され、批判が高まるのも当然である。
 岸田氏は片方で物価高を乗り越える国民への還元としながら、もう片方ではデフレ完全脱却のためと言い、矛盾もいいところで、支離滅裂な話を口にしている。物価高ならデフレではないはずだが、それなのに減税したら、さらに物価高が進んでしまうのではないだろうか。
 現状では手取りが増えているわけではない。一般の人には定額減税はわかりにくく、実感も盛り上がらない。また円安もインフレもどこまで進むのかわからず、本当に経済効果が出るかどうかも疑わしい。一時的なバラマキをやっても、経済は回復せず、国民も豊かにはならない。今、必要なのは政治体制や税制度の抜本的な改革に手をつけることである。
 一方、国民の間では所得減税をするくらいなら、消費税の減税の方が消費者の購買意欲を高めるという意見が強い。消費減税は所得減税よりも消費効果は2倍以上になると言われる。しかも、恒久的にこれを行えば消費者には大きなメリットとなる。
 しかし、国のために一生懸命働いている財務省は、消費税を下げると一気に消費が減り、経済が冷え込むという奇想天外な考えを持っており、現実とはかけ離れている。消費税を5%に減税すれば、家や車など高額商品を購入するリバウンド現象が起き、経済活性化に大きく寄与する。
 政府と財務省は、現在の10%の消費税に加えて、未曾有のインフレーションに直面していることから、国民の消費意欲を喚起する必要がある。この状況を改善するには、1.物価の安定、2.所得の増加、3.消費税の見直しの3点セットを活用する。

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