ビジネスの相違と値下げやセールについて。

 2024年4月21日、米国の通信社ブルームバーグは、「テスラ、中国と米国でEV値下げ-販売低迷で在庫膨らむ」と題した記事を掲載した。米国の電気自動車メーカーのテスラが主要市場である米国と中国で価格を下げるという戦略を採用した。
 これは市場の競争力を保つため、また新しい顧客を引きつけるための一環だが、それぞれの国によってビジネスの方法は異なる。今回は電気自動車や企業間での性能についてではなく、日本と米国での商売の方法の違いを取り上げる。
 テスラは中国、欧州、米国で相次ぎ自社モデルの値段を引き下げたほか、自動運転支援システムのソフトウエアも値下げに踏み切った。販売の不振で在庫が積み上がっていることが背景にある。
 中国では販売価格を全面的に引き下げ、大きく改良された「モデル3」は23万1900元(約495万円)と、従来の24万5900元から値下げし、「モデルY」は26万3900元から24万9900元に値引きしたが、それほど大きな引き下げてはなかった。
 自動運転支援システム「FSD(フルセルフドライビング)」については、米国での価格を従来の1万2000ドル(約185万円)から8000ドル、三分の二に価格を大きく引き下げた。
 わが国では商品の売れ行きが悪くなると、利益を上げようとして値上げするか、あるいは生産を縮小する傾向があり、品薄にして、いかにも売れているように装う。このようなビジネスがどれほどの効果を上げるだろうか。
 日米間では法律の違いだけでなく、文化や消費者の行動パターンの相違にも起因し、セールの文化は両国で異なる。米国では「ブラックフライデー」や「サイバーマンデー」などの大規模なセールが行われ、大幅な値下げをする。
 こういったセールを待ちかねている消費者も多く、購買意欲を刺激し、大量の商品を販売する。一方、わが国のセールは一般に比較的控えめで、5~30%割引が一般的で、海外のように50~80%も値引きをすることは少ない。
 わが国では値段だけでなく、品質やサービスも重視し、単純な値下げよりも、価格と品質のバランスが重要と言われる。米国の消費者は新しい技術や製品に対してオープンで、新製品の導入にも積極的で、自分の個性やライフスタイルを表現できる製品を好む傾向がある。
 また消費者は価格に非常に敏感で、製品やサービスの価格が下がると、それが購入の決定打となる。例えば、為替相場の変動によって日本車が安かったり、あるいはドイツ車が安かったりする。そんな時は値打ちの車が大きく販売を伸ばし、大学の駐車場は日本車一色になり、時にはドイツ車一色となる。実際にはどの国の消費者の心理にはそれほど大きな違いはないだろうが、このような相違を理解することは、異なる市場でのビジネス戦略を立てる上で重要である。

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