福島県沿岸部の帰還率は18%。

 関連死を含めて2万2000人を超える死者・行方不明者を出した東日本大震災から2023年3月11日で12年が経過した。被災地では交通網の整備や住宅の高台への移転などの復興事業が進んでも、想定以上の人口減少が大きな課題となる。
 20年の国勢調査によると、岩手県は118万人、宮城県は228万人、福島県は179万人の人口を示した。10年間の人口減少率は岩手8.9%、宮城1.9%、福島9.6%で、いずれも全国の1.4%を上回った。
 3県の沿岸部と東京電力福島第一原発事故の影響を受けた計42市町村では、震災前(2010年)の約257万人から10年間で約14万人減少し、復興の足かせとなっている。被災3県に最大約12万戸あった仮設住宅は約420戸まで減ったが、原発事故の影響や風評被害が続く福島を中心に3万884人が今も避難している。
 当然、急激な人口減少は原発事故で被災した福島県沿岸部で一段と深刻である。避難指示が出された市町村は11から7に減少したが、約8万8千人いた人口は18%の約1万6千人に止まる。21年の復興庁などが行った住民意向調査では、10~40歳代の若い世代で、「帰らないと決めている」と回答した人は双葉、大熊など4町で5割を超えた。
 報道によると、震災後の復興マネー、原発マネーと公民合わせた莫大な金が動き、これに伴い、様々な利権が発生した。本当に苦しかったのは震災から僅かな期間であったにもかかわらず、未だに復興マネーに頼り、群がる原発避難民や企業がある。被災地を必要以上に再整備する必要はないが、巨費が無駄に費消され、10年間で約31兆5千億円の復興予算が使われた。
 現実的かつ合理的に考えると、将来の災害リスク、経済や仕事、地域社会の高齢化、復興支援など、若い世代にとって自分たちの未来が描けない将来を託すには難しい地域になっている。
 そもそも健康障害や放射能汚染の風評被害などによる人口減少を無視して、災害以前に完全に戻すことを復興とするならば、あまりにも能がない。地元に戻った人はデメリットが少なく、意欲が高い高齢者が多いが、地元に帰った人が少ないから復興は失敗という訳ではないが、それなりに地方の特質や災害に強い復興計画を立てる必要がある。
 人口の増減は別にして、災害リスクを踏まえて、東北地方は農業、酪農、林業を中心とする大規模産業、風力発電、太陽光発電の大拠点、地の利を活かした観光業を主な産業とする復興計画を加えるのも一つの方法である。
 今さら若い世代が積極的に地元に戻るという選択はかなり難しい。残された人や新しく来た人でどんな街を作っていくのか、これが大切な問題で、政府は防災整備をして宅地を用意すれば元の街に戻るかのような政策ばかり並べても埒はあかない。本当の意味での復興を目指すなら、再度新しい発展への道筋を立てるべきである。

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