省庁再編について。

 兵庫県明石市の前市長の泉氏は、少子化対策に増税が必要だという政府の考え方は根本的に誤っていると批判する。明石市では、子育て支援を充実させることで、経済や地域が活性化し、人口も増加したという実績がある。
 同氏の意見を参考にして省庁再編について考える。わが国の政治は官僚が主導しており、民主主義ではなく官僚主義と言える。彼らは国民のための政策を考えているのではなく、自分たちの保身や利益を優先する。経済も同様で、官僚主導の社会主義経済すなわち緩やかな統制経済である。
 とくに1990年のバブル崩壊以降の長期にわたる経済低迷は、この体制がわが国の構造改革や新しい経済・産業の構築を阻害している最大の要因となっている。また官僚と大手メディアが癒着して、政府や官邸に都合のいい情報しか伝えない。官僚主義をメディアが補強し、与党あるいは野党の一部の政治家は官僚に操られている。
 中央省庁の中でも最も力を持っているのは、国の財布を握る財務省である。財務省の官僚は国民のための政策を考えているとは思えない。もし本当に彼らが有能なら、国民に負担をかける税制や増税ではなく、予算の効率化で新しい政策が実現できるはずだ。
 財務省は自分たちで国を動かしていると思っているなら、大きな間違いである。国民を幸せにするのは財務省の役割ではなく、政治の役割である。国民が豊かに幸せになれば、自ずと国や経済は活性化する。
 官僚主義を打破するには、本来の政治主導の体制に戻すのが良い。実際に支持率70%を超えた民主党(1998-2016年)政権(09-11年)は、これを目指して挑戦した。首相官邸に国家戦略局や内閣人事局を設置して、重要な政策や人事に関する権限を内閣に集中させようとしたが、官僚から強い反発を受けて挫折した。今の野党ではこれを望めないので、中央省庁の再編を試みるのも一法である。
 2001年に自公保連立政権時代に省庁再編が行われたが、名前を変えただけで本質的な改革ではなかった。23年4月に新設されたこども家庭庁は、縦割り行政の弊害を解消するという目的で設置されたが、文科省と厚労省の連携が強化されたとは言えない。
 厚労労働省は厚生省と労働省が統合されたが、労働省は経済産業省と統合した方が合理的だったかもしれない。他にも必要性が疑われる省庁や部門が多く、再編や合理化を進めれば、かなりの予算や人員を削減できる。とくに財務省は解体を含めて再編を検討する必要がある。
 官僚組織は放置すれば、仕事もしないで人数を増やすだけで、聖域とされている中央省庁は、第三者による組織全体の点検が必要である。全国の市役所も必要のない部課があり、都道府県に至っては半分は無駄な仕事をしていると言っても過言ではない。
 最終的には政治主導しかない。

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