広島G7について。

 2023年5月19日、広島市で開催された先進7カ国(G7)首脳会議は、核兵器廃絶への決意を世界に示す歴史的な場となった。議長を務める岸田首相はバイデン米大統領ら各国首脳を平和記念公園で出迎えた。
 全員が園内にある原爆資料館を見学し、被爆の惨状を目撃した後、原爆慰霊碑に献花し、黙祷を捧げた。その後首脳たちは原爆慰霊碑を背景に不動の姿勢で立ち並び、その光景は核兵器の使用を絶対に許さないという強いメッセージを発信した。
 被爆者や犠牲者への敬意と哀悼の念が込められたこのイベントによって、核兵器廃絶に向けて国際社会が協力する姿勢が示されている。献花式典の模様は世界中に生中継され、多くの人々の心に深く刻まれ、今後も世界の平和の象徴として残るだろう。
 出席した首脳は岸田首相のほか、米国・バイデン大統領、英国・スーナク首相、フランス・マクロン大統領、カナダ・トルドー首相、ドイツ・ショルツ首相、イタリア・メローニ首相、欧州連合(EU)のライエン・欧州委員会委員長とミシェル・欧州理事会議長の計9人だった。
 ロシアがウクライナへの侵攻を強め、核兵器の使用をちらつかせる中、世界は緊迫の度合いを高めている。今回のサミットは核戦争の可能性が現実的に迫っているという危機感を共有する場となった。21日に発表される首脳声明では、法の支配に基づく国際秩序を守ることを強調するとともに、「早期の核兵器廃絶」の決意を示すことが期待される。
 しかし、20日G7は広島首脳声明を発表し、「核軍縮の努力強化」で終わった。その他にはウクライナ和平はそっちのけで、支援の一点張りで、ロシアを追い詰め、またインド、ブラジル、インドネシアなどのグローバルサウスを引き込んで中国包囲網を構築するに終始した。
 一方、原爆の投下から78年が経過した今日、広島と長崎に住む被爆者の数は年々減少している。彼らの証言や遺品、遺構などは、あの日の悲惨な出来事を伝える貴重な資料であるが、時間の経過とともに風化していく。原爆の記憶を次世代にどう継承し、どう伝えるかという問題は、ますます重要になっているが、その活動も困難さを増している。
 しかも、世界では原子爆弾による被害を受けた国はない。そのため唯一の被爆国として核兵器による大量殺戮の残酷さを実感することはできない。逆に米国や中国など多くの国では、核エネルギーの開発は現代科学の偉大な成果として賞賛されている。しかし、核兵器は現実の脅威であり、拡散や誤発射のリスクは高まっている。
 米中など多くの核保有国は、自らの安全や抑止力を理由に核兵器を持ち続け、核軍縮に消極的である。わが国では「原爆反対」「核兵器反対」は常識でも、世界では戦争が起きれば、原爆や水爆など核兵器を使用するのは当然だと考える人々も少なくない。
 しかし、わが国は唯一の被爆国として、「核兵器の非人道性」を訴える立場を貫いている。多くの国から支持されているが、世界では珍しい国で、被爆の悲惨さを世界に伝えることが使命である。2023年に広島で開かれたサミットで、G7首脳が一堂に会して原爆犠牲者を追悼したのは歴史的な出来事だった。

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