世界人口は増加から減少へ。

 人口の話題はその性質が時代と共に変化した。かつては増加が主題でしたが、近年では減少が主要なテーマとなっている。だから言って、地球が滅亡するとか、日本が沈没するという大それた話にはならない。
 約9ヶ月前の2022年7月の国際連合の「世界人口推計2022年改訂版」によると、22年11月15日に世界人口は80億人に到達した。30年に85億人、50年に97億人に増えると予想される。その増加率は1963年に2.27%の最大を示したが、それ以降は一貫して低下基調を辿っており、20年には1%を割っている。
 かつて「人口爆発」と呼ばれた急激な人口増加にはすでに歯止めがかかり、2086年に世界人口は104億人に達するが、そこが頂点で、それ以上は増加しない見込みとなっている。
 18世紀後半に始まった地球の歴史的な人口の増加は、21世紀の終わり頃に終焉を迎えることになる。食料の増産が可能となったために人口が増え、食料が不足すれば、制限がかかると言われている。また人口は戦争の武器として利用され、大人口は大国の象徴でもある。しかし、世界の出生率は低下しつつあることから、自然に増加にブレーキがかかり、86年以降地球の人口は減少すると予測される。
 人口の増減は出生率と死亡率によって決まる。この二つが均衡すると、増減はゼロとなり、これを境に人口は増加から減少に転じるような人口動態の変化を人口転換と呼ぶ。出生率は医療や衛生の改善、教育の普及、女性の社会進出、政府による家族計画の推進などによって影響を受けるが、現在は世界的に低下の傾向にある。他方、1920年代後半以降、人口の高齢化の進展に伴って死亡率は緩やかに上昇している。
 人口転換理論によれば、人口動態は多産多死型、多産少死型、少産少死型の3タイプに区分する。近年の日本は少子高齢化の進行に伴い、どの段階にも当てはまらない少産多死型の状態と考えられる。
 わが国の人口の推移に対して、大まかにこの4段階を当てはめることができる。江戸時代までは多産多死社会で子どもの半数は成人までに死亡し、人口3000万人程度で一定していた。明治時代に入って多産少死社会が始まり、とくに第二次世界大戦後は生活水準と医療の向上によって、子どもの死亡数が著しく減少し、人口が急速に増加した。
 75年に合計特殊出生率は2を割り込み、現在も低下傾向が続いているが、この時点から少産少死社会を迎えた。その後平均寿命が延びて、07年以降は死亡数が出生数を超える少産多死社会に突入し、09年から人口が減少しいる。
 世界人口について、86年以降の具体的な予測は少ないが、一部の研究によると、104億人でピークに達した後、減少に転じると予測されている。しかし、これらの予測はあくまで現在のトレンドと科学的な理解に基づいているため、未来の著しい社会経済的な変化や技術的な進歩によって、実際は推計と異なる可能性がある。

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