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ふつうの暮らし

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2018年8月の記事一覧

最初のひとりになれないのなら、最後のひとりになりたい。

 

高校生の頃、誰かの誕生日の0時ちょうどにお祝いのメールを送るのが仲間内での恒例だった。

それが何人から来たとか、お気に入りのあの子から来たとかいうのが一種のステータスにもなっていた。

内容はシンプルな一言だったり、この1年であった出来事に対する感謝の気持ちだったり、人によってさまざま。

年に一度自分と相手との関係性を言葉にして確かめあうような、そんな意味を持っていた。

その日は、当時

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アニエスベーのTシャツを着た女の子。

アニエスベーのTシャツを着た女の子。

 

「アニエスベーのTシャツ」と言えば、高校の頃に読んでいた雑誌のスナップに毎回と言っていいほどそれを着た女性が登場していた。

セミロングの茶色い髪に真っ白な肌、麦わら帽、袖が少し短めに作られたTシャツにアーペーセーのデニム、ハーフムーンバッグ。

毎回同じ人というわけではもちろんなかったけれど、どの人もフレンチカジュアルを意識したシンプルなコーディネートだった。

当時のファッションスナップ

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最低と最高を知る意味。

最低と最高を知る意味。

 

上京して間もない頃、尊敬する先輩からこう言われたことがある。

「最低のものと最高のものを知りなさい。東京にはそれがどちらもある。

最低のものしか知らないのも、最高のものだけ知っているのも、どちらも良くない。

両方を知ってはじめて本当のものを生み出せるようになる。

だから、それを知るためにお金や時間を惜しみなくつかいなさい。」

それを聞いて僕は、コムデギャルソンでラックにかかっている

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僕が紺色の服ばかり着る理由。

 

僕と会ったことのある人は知っていると思うけど、僕はほとんど毎日、なにかしら紺色のものを身につけている。

持っている服は紺と黒、少しだけ白、その3色だけ。決めているというより、自然とそうなってしまった、という方が正しいかもしれない。

 

服やおしゃれをするのは好きだけど、毎日のコーディネートを考えたり鏡の前で服をいろいろ合わせてみたりすることは、面倒だと思ってしまう。

だからできるだけ

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できるだけ身軽にいたい。

できるだけ身軽にいたい。

 

去年の夏から普段から持ち運ぶものをできるだけ減らすようにしている。

心配性な性格もあって、「もしかしたらこれも使うかもしれない」と、なんでもかんでも持ち歩いていた僕は、身軽になるためにポーター・ハイブリッドのサコッシュを買うことにした。

中身は小さい財布とスマートフォン、メモ帳とペン、最低限のケア用品だけ。

それから1年ほどが経ってはっきりと変わったのは、「ついでに、せっかくだし、あそ

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ほぼの違いがすべて。

 

ある有名ブランドのものとほとんど同じデザインのシューズが売られているのを渋谷の量販店で見かけた。値段は0がひとつ少ない。

ちょうどそれを見ていた女性二人組のひとりが「ほぼ一緒だしこれでいいんじゃない?」と話している声が聞こえてきて、僕はなぜだか少し苛立ってしまった。

 

その後、青山へ向かうために乗った銀座線の車内で「そういえば、なんであの時いらっとしてしまったのだろうか。」と、スマー

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一足先に次の季節を想像してみる。

一足先に次の季節を想像してみる。

秋に着るために買っていたニットが届いた。毎年この時期になると春に注文していた洋服が届き始める。

洋服に関わる仕事を始めてからというもの、いつも半年以上先のことを頭の片隅におきながら暮らすことが当たり前になっているけれど、それと同時に

「半年後の自分はどうしているんだろう」

と、漠然としていて頭がかゆくなるようなことを考えてしまう。

半年後の自分はどんなものをクールだと思っているのだろうか、

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正しい道具を使って、正しい方法で練習をする。

もともと髪の毛のくせが強いこともあって、それをなんとかうまく撫でつける方法だけはこれまでの人生で培ってきたつもりだった。

引っ越してからというのも、お気に入りの美容院を探している。

家から駅までの道のり、大通りから1本入ったところにある小さなお店に次は行こうと決めていた。
 
 

かなり昔からその場所にお店をかまえていただろうと思われるそこは、気をつけて歩かないと見つからないほど街の景色に溶

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「その時」にしか味わえない体験を逃さない。

「その時」にしか味わえない体験を逃さない。

「映画館で映画を観ること」を意識的にしないといけないと思うのは、映画というのは公開されている限られた時期にたくさんの人々に混ざってあの閉じられた空間で観るのと、数年後の再放送をテレビで観るのとでは感じとれる情報量がまったく違うからだ。

『スターウォーズ』は最新作を待ち焦がれていた人々と映画館で観るからこそ面白いし、『カメラを止めるな!』は今のブームの中で観るからこそ緻密に仕立てられた笑いの中に感

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「100年なくならずに生き残ったもの」にふれること。

「松尾さんにとって良いものってなんですか?」と聞かれた時、僕は

「100年なくならずに生き残ったもの、もしくはこれから100年生き残るであろうもの」

と答えることにしている。

これまでにいろんなものに趣味として、時に仕事として見てきた中で、自分にとっての「良い」の基準はやっぱりそこにある。

どれだけ今もてはやされているものでも、1年後には忘れ去られてしまうようなことはたくさんある。それは音

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