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元初まりの話4

しやち

神さまが乾(西北)の方をご覧になると、しやちがいました。呼び寄せて、承知させて、食べて心味わいをごらんになる。

よろづつっぱりの道具
月よみのみこと

しやちは、威勢のよいものである。それで男一の道具、骨つっぱりの道具とお定めになった。
そして、これをうをにお仕込みになった。
男というものは常に威勢がよい、というのが天分です。威勢の悪いしやちというものは、芸をすることもできません。かめの下にでも敷いてもらうよりほかにしようがない。
しやちというものは、威勢のよいのが身上だ。

しやちは、肉はまずいし油も少ないのです。だから人間は食べようとしません。捕まえてきて芸をさすくらいです。しやちは一列横隊の陣で海岸へありとあらゆる魚を包んで攻め寄せて行くのです。
鰤でも鱶でも、鮫でも、どんな魚でも逃げられない。その間しやちは全部断食しているのです。ものを食べていたら隙ができるでしょう。だから断食して、ずうっと押し寄せて行く。

人間も、いよいよ大事なご用をするという時は、断食をするというだけの真剣味がなければいけません。一日一遍断食しただけでも、大分ご用ははかどるでしょう。

神さまは、こんな、海で一番暴れ者を、八つしかお使いにならぬ道具の中にお加えになったのでしょうか。
これは男というものは常に威勢がよくなければならん。とともに、女でも男でも、いよいよ理を立てる、親を立てる、教会を建てるというような時などには、しやちよりももっと元気を出せ、ということだと思います。

けれども、人間というものは、理を立てる時には案外元気がない。理を立てよ、話をせねばならん時に、へなへなとなってしまう。腰が抜けてしまう。そのくせに、腹を立てる時には、しやちよりもっと元気を出す人もあるので困ったものです。けれども、そんなことをやっていたら、いつまで経っても泥海の中でしょう。だから、しやちのような元気は、理を立てる時にだけ出すことが肝心です。

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