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『人の心などわかるはずがない』

臨床心理士の方は、よく他人の心がすぐにわかるのではないかと言われるらしい。自分の心の中を見すかされそうで怖いと、、、。
しかし、実際は人の心などわかるはずがないと言われている。
逆に一般の人は、他人の顔つきを見て「悪い人」とか「やさしそうな人」と思うが、専門家は、どれほどやさしそうに見える人でも、ひょっとしたら悪い人かもしれないとか、逆に怖い顔つきの人でも、あんがい優しい人かも知れないと思うらしい。簡単に判断を下さず、人の心というものは、どんな動きをするのか、わかるはずがないという態度で他人に接するそうだ。

なるほど、たしかにそうかも知れない。
私も、その人の顔つきや、特に第一印象からそこまで深くは判断できていないように思う。

たとえば非行少年を前にすると、たいていの人は「悪い少年」として見てしまう人のほうが多い。しかし大切なことは、この少年を取り巻くすべての人が回復不可能だと思っていても、そう、決めつけてかからないことだそうだ。
そう思って接すると、あんがいその少年は素直に話をしてくれるらしい。そして、その原因を話してくれる。たとえば母親が怖い人で、小さい頃から叱られてばかりだったと、、、。

そして、またそういう話を聞くと、こちらは母親が原因だと思いがちだが、すぐにそう判断しないで、母親に会う時も少年と会う時と同様に、そう簡単に決めつけられたのではないという態度で会うことが大切らしい。

このような態度で会い続けていると、それまで見えなかったものが見えてきて、思いもよらなかったことが生じて来るのだという。
たとえば母親が怖いとばかり訴えていた少年が、ふと幼い頃に母に優しくしてもらったことを思い出したり、自分の子どもを悪い子と決めつけてしまっていた父親が、ふと子どもに話しかけ、子どもがそれに応じるなどということもあるらしい。

なるほど決して見た目やその時に話している内容から、すぐに決めつけないで待つことは大切なのかもしれない。

速断せずに期待しながら見ることによって、今までわからなかった可能性が明らかになり、人間が変化してゆくことは素晴らしいことだと臨床心理士の方は話されていた。
しかし、これらの経験は随分と心のエネルギーのいることで、なかなか簡単にはできないらしい。

「心の処方箋」と「体の処方箋」は大分異なってくるらしい。
現状を分析し、原因を究明して、その対策として出てくるのではなく、未知の可能性に注目し、そこから生じてくるものを尊重しているうちに、心の処方箋は生まれてくるらしい。

河合隼雄先生の『こころの処方箋』
たましいに語りかけるエッセイ55篇を読みながら思うことをnoteに綴っていこうと思う。

#こころの処方箋
#河合隼雄
#たましい





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