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モリトくん


あなたに出逢ったその日から
友達だなんて思ったこと、一度もないよ。

私だけかもしれないけど。





雨の日だった。

そのうち晴れるだろう、
雨が上がるまで待っていよう、と

夕方遅くまで教室に残って勉強をしていたら、降っていた雨が強くなっていた。


昇降口でぼーっとしていると、足音が聞こえた。

後ろで誰かが小走りしている。

振り向くと、隣のクラスのモリトくん。

モリトくんは「じゃあ」と、目の前で傘を刺して帰っていった。


濡れて帰るか、、と諦めたとき、帰ったであろうさっきのモリトくんが戻ってきた。

土砂降りの中、走ってやってきて

「傘ないの?」と聞いた。

「ない、です」

「じゃあ俺の入ってく?」

隣を指差したモリトくんに吸い込まれるようにして「うん」と答えると、傘に入れてくれた。


「あのさ、さっきの、急に「入ってく?」とか嫌だったよな、、」

「、、今更?」

「そうだよな、〜、、ごめん、、」

少し気まずい時間が流れるが、

「嫌、じゃなかったよ。今も、嫌じゃない」

私がそう言うと、ほろっとほぐれたように笑顔になって安堵した。

「うわぁ、、よかったぁ〜」

そこから他愛のない話をして笑った。



同じ傘に入って笑う、そんな横顔を見て、好きになった。


好きになって、友達になって、何度も目を合わせて何度も言葉を交わして、笑った。

それでも言えなかった。


ゼロからの友情を築いて、二人で話す機会も増えて、それなりに成功しそうだった。

でも、言わなかった。


関係が変わらないほうがよかったから。

言ってしまったら、聞こえなくなる声、見えなくなる顔があるから。


今でも言えないまま、過ごしている。

あなたに一生かけて投げつけたい言葉は
ずっと、ずーっと奥に

















みいつけた!

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