エレファントマン10/30感想

本日観劇してきた感想と合わせてようやく買えたパンフレット(前回は現金を忘れて買えなかった)の感想と初日後ふせったーに書き留めておいたことも含めて殴り書きしていきます。

ネタバレ含みますのでご注意下さい。


ブリュッセルでのシーン。どんぐり頭3人に話しかけるメリックがやっぱり可愛い。「ベルギーで儲けるつもり。楽しみだな。楽しみっていうのは、幸せ。幸せって意味だよ。」の台詞で胸が締め付けられる。自らが見せ物になる苦しみが伴うのに楽しみ、幸せって言うメリック。新たな土地で上手くやっていこうとどんぐり頭たちに「どうやってるの?」って聞いたり一生懸命なのもまた切ない。

どんぐり頭たちが歌詞を覚えろって怒鳴られて泣くと「泣かないで、上手かったよ。大丈夫。」と声をかけるし、自分が警官に殴られてもそれを見て驚いて泣くどんぐり頭たちに「泣かないで。大丈夫。」って言うの。どうしてそんなに優しいんだろう。自分は殴られて出て行けって言われてるのに。強い人なんだろうな、という感想だったんだけどパンフレットを読んでみるとメリックの性格はどこかマイペースというかのんきなところがあるって森さんはおっしゃっていてなるほどなぁと。その後に立ち上がるとすぐ「ブリュッセルって嫌な思い出になるね」と割とあっけらかんと言うところにもその性格が現れているように思えるね。

それとここのシーンもそうだけど戯曲とのぞむちゃんが発する台詞では少し口調が違っていてそれも面白い。雑誌で稽古中に森さんから言いやすいように変えていいと言われたからしっかりと考えてやってると語っていて。若干戯曲よりも柔らかい印象を受けて、あの感じはのぞむちゃんならではの空気感だなと思った。


ロスがメリックから奪い取った48ポンド9シリング2ペンス、計算してみたら8,770円くらい?現代の価値に換算するとどれくらいのものなのかはまだちゃんと調べられてないけどざっくりあの時代の1ポンドは6.5~8万円程のようで。奇形のせいで職につけず貧窮院に入っていた時代からようやく何とか自分で稼げるようになって必死に貯めたお金を一瞬のうちにほぼ全部奪われたメリックの心情を思うと本当に辛い。細かく2ペンスまできっちり自分のお金を数えて覚えてるんだよ、なのに本当に辛い。


ロスに捨てられてロンドンに戻るまでの添乗員のおじさんの喋り口調が物凄い田中邦衛さんなの笑うしパンフレットに実際森さんがそうするよう演出されてたと書いてあって次回またあのおじさんを見るのが楽しみ。


ロンドンに戻ってきた時のメリックがボロボロで倒れて、なのに警官と添乗員はからかっているような態度で酷い。あのシーンのメリックは本当に可哀想で辛くて前回も今回も見てられなくて泣いてしまったんだけど、パンフレットを読むと稽古の時にはあのシーンで特に森さんに指導してもらったようで、「小瀧が元気だったから(笑)」って言われてるのおもろい。飄々としてマイペースなところと、ずっと一緒にいたロスに捨てられ裏切られボロボロになるところ、観客側としては演出も演者の表現もしっかりと作り込まれていてスッと受け取ることが出来たけど、戯曲には細かいことは書いていなくて想像して作っていかなくてはいけなかったと知ってまた驚いたし凄いなと。この作品はこつこつ作り上げたって森さんものぞむちゃんも言っていたけどここもそういったシーンのひとつなんだろうな。


サンドイッチさんのシーン、昼食を持とうとするサンドイッチさんを断って自ら持っていくトリーヴズ先生。ここのシーン前回はちゃんと見てなかったんだけどメリックが「お昼ごはん、今回は助かったね」ってちょっとクスっとなるシーンだったのね。自分を見て女性が恐怖のあまり悲鳴をあげて去っていくことに慣れすぎているメリックに悲しくもなるけど、本人がそれを気にしている素振りを全く出さないんだよね。だからこそ1幕最後の涙が余計にグッとくるのかな。


ウィルがクビになって、子供たちが貧窮院に行くことになるのか心配するメリックと理事長先生は慈悲深いことをしたと言うトリーヴズ先生のシーン。ここのトリーヴズ先生の倫理観が凄く嫌で嫌で、メリックの純粋な質問に言葉を詰まらせるのもまた。「慈悲深いことがこんなに残酷なら、じゃあ正義の為には、どんなことをするんです?」トリーヴズ先生とメリックの関係性が変わっていく大きなきっかけになる質問だったように思える。


ケンダル夫人との会話で「自分の頭がこんなに大きいのは、夢が詰まりすぎてるんじゃないかって思います。」って言うメリックの純粋さとロマンティストな一面が見られるシーンが好き。そしてお喋りするのが大好きなのがとてもよく分かるしお喋りが出来る相手が出来たことに喜びを感じているというのも凄く伝わってきて微笑ましい。その後トリーヴズ先生にメリックが載った新聞を渡されて一生懸命読んでいるところも、夫人に友人を連れてきていいか聞かれてトリーヴズ先生を振り返って確認するところも、まだこの頃はトリーヴズ先生が保護者な関係性だなということがよく分かる。


クリスマスプレゼントを貰うシーンで稽古中にのぞむちゃんが当たり前のことのように受け取ってしまっていて森さんに「ジャニーズの感覚でプレゼント受け取ってんじゃねー!」って厳しく言われたってエピソードめちゃくちゃ面白いんだけど。でもそのことがのぞむちゃん自身に大きく影響を与えたみたい。ひとつひとつのプレゼントに本当に驚いて嬉しそうにしているメリックの謙虚さがとてもよく表現されているよね。


ロスがメリックの部屋にやってくるシーン。前回は辛そうに泣きながらも強く拒絶しているイメージだったけど、今回はもっと激しく拒絶しているような印象を受けたな。ブリュッセルに行った時楽しみだ幸せだって言ってたけどやっぱり当然のことながら自分が動物のように扱われて暗闇に閉じ込められていたことは絶対に許し難いことだったんだよね。従順でいないと生きて行けない状況から抜け出してようやく本音が出たのかな。ある意味従順になる相手が変わっただけのような現状にメリックも気付いているのかもしれないけど。ロスを突き放して「それが世の中なんだよ」と言うメリックの台詞がトリーヴズ先生と出会ってから変わってしまった部分を露呈しているようだった。


トリーヴズ先生の夢のシーン。ここのメリック、やっぱり声がとてもいい。すっごくいい。初日の後に観劇された方のツイートで声を褒めているのをちらほら見かけてニヤニヤしちゃった。暗転して目が覚めた時にはもう普段のメリックに戻っていて、その切替にゾクっとする。のぞむちゃんの努力とポテンシャルの高さよ。

主教とトリーヴズ先生のシーン、最後に先生が「助けてください」って泣くの。この台詞で完全に最初の頃とはメリックと先生の関係性が逆転するほどに変わってしまったと感じた。最初に助けを求めていたのはメリックなのに。


模型を作り終わった時の「終わった」と言う台詞について、前回の感想で色んな意味が含まれているんじゃないかって書いたけど今回もやっぱりそう思った。それとパンフレットでのぞむちゃんが、今まで誰かに指示されることが多かった人生で何か一つ自分の手で完成させたいと思って作っているのかな、と語っていてそれを読んで尚更大きな意味のある台詞に思えてくる。


スノークが昼食を持ってくるシーン。ここで友人の妹が死んだって話、以前クビになったウィルの妹のことだってメリックも気付いたんだよねきっと。だからメリックもベッドに横になったの?はたまたメリックもまぐれ当たり?最後にぽつりと「まぐれ当たり?」って呟くのはそういう意味?どうして亡くなってしまったのか、故意なのか偶然なのか、考えても考えても分からない。

ベットに向かう前に模型の一部に優しく息をかけて布で拭うの、前回は布で拭うだけだったから少しだけ変えてきたんだなぁと。こういう変化が面白いよね。


最後に、カーテンコール。ここはもう普段ののぞむちゃん。一旦舞台袖にはける時におそらく袖にいたスタッフさんと目があったのかにっこり笑っていたし、再び舞台に戻ってくる時には向かいから出てくる高岡さんと目があってニコニコしていたり。愛嬌100点満点。今回も最後は地声で挨拶をしてきっちりお辞儀をするところまで大好き。


ここからはパンフレットの感想を書き足します。

近藤公園さんがのぞむちゃんの演じるメリックを「純粋で愛すべきメリック」と語っていてまさにその通りだなと。ぴったりな表現。

森さんはのぞむちゃんを紹介された時に「爽やかさと気品を目の当たりにした」とおっしゃっていて、まさに!!これものぞむちゃんを表すのにぴったりな表現。実際のメリックの気持ちは僕らにはほとんど窺い知ることが出来ないけど小瀧くんなら核となる部分に奇跡的に触れられるような気がしているともおっしゃっていて、この舞台を終えた時にのぞむちゃんに是非語ってもらいたいな。

それと今回のぞむちゃんがまだストレートプレイが2度目だから周りを芝居ができる人でガッチガチに固めたっていうところ、凄くいい環境でいい経験をさせてもらってるんだな〜と私も嬉しくなっちゃうね。

あとのぞむちゃんは時々真面目すぎて固めすぎるところがあるって指摘されていて、本人もコンプレックスだって言っていて。確かその癖は近キョリ恋愛に出た時もセカムズの時も言ってたんだよね。森さんが今回はライブの面白さを味わせたいっておっしゃってるからのぞむちゃんにとっても大きなきっかけとなるんだろうね。


森さんの演出だからもっとボロボロになるというかそれこそ死にそうになりながらやってきたのかと思いきや案外和やかにやってきたみたいで意外だった。締めるところは締めるけど雰囲気も優しい感じが伝わってきたしのぞむちゃん自身追い込まれているような感じはしないかな、私が見る限りでは。しっかりたくさんのことを吸収して努力していることはよく分かるし共演者のみなさんとも森さんともとてもいい関係性で上手くやっていっているようで、メリックのように「純粋で愛すべき」座長となっているんだろうな。