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「なぜ?」という問いかけはブレる

仕事柄、ユーザーインタビューをする機会が多いのですが、そこでの気付きを。

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インタビューでは被験者から自社サービスを使ってやっていることや日常での行動や考えについて聞き出します。インタビュー目的にもよりますが、なぜインタビューをするのか?と言われると一言「ユーザーのホンネに迫るため」に集約されるでしょう。

ユーザーの行動や考えは表層の一部でしかなく、その背景にある本質的なニーズ、サービスを使って実現したいと思っていることやその人の自己実現的な欲求まで多層にありますが、それを探りたいのです。

よって、インタビューの際には被験者に「なぜ?」を頻繁に投げかけます(もちろん直接「なぜ?」とは聞かず言葉尻はもっと柔らかくしますが)。ただ、単に理由を聞くだけではうまくホンネに迫れないのです。

インタビューは言葉のやりとりです。被験者は質問に対してその時に一番答えやすいことを発話してしまう傾向があります。インタビューのコンテキストを読んで直前の質問の流れに沿った答えたりすることもあります。そのようなインタビューから得られる示唆は浅くなりがちで、「この被験者は時間がないから○○をやっているのだ」みたいな一意のそれっぽい「みんな知ってるよ」的な課題に集約されてしまう可能性も。

また、被験者にとって「そうあるべき」という行動の裏を取るのも難しいです。他の人もそうしてるから・会社でそうすることになってるから・誰かに言われてるから、などなど。「そうあるべき」も本人の意思でやっている場合とそうでない場合があるので切り分けて捉えないと被験者のホンネを読み間違えます。

これらのアンチパターンを攻略するには、インタビューする側がその場に適した「なぜ」を言い換えて聞く必要があります。

・それはどこでやっているのですか?
・それはいつやっていることですか?
・それは誰かと一緒にやっていることですか?
・その行動はあなたにとってどんな意味がありますか?
・もし時間やお金が無限にあるとしたら、その行動は何か変わったりしますか?
....などなど

でもこれって難しいですよね。インタビューによっては質問項目の事前準備が難しいこともありますし、予め用意しておくのは現実的でないかもしれません(用意していてもその場ですぐ取り出せるかどうか?という観点もあります)。

このようなインタビューする側の課題に対して「ティンバーゲンの4つのなぜ」ぐらいに抽象化されたパターンは持っておくのは有用でしょう。

例えば「なぜテストの後、解き直しを生徒に課すのか?」という行為の裏を取るために以下のような聞き方パターンが考えられます。

・テスト直後の反復はどのような点で効果的なのですか(定着のメカニズムを問う)
・テスト直後の反復は生徒にどのような変化をもたらすのですか(生徒の成長を問う)
・テスト直後の反復はもともとはどのようなやりかただったのですか(方法の系統発生を問う)
・テスト直後の反復はどのような要求に応じて行っているのですか(教育の適応を問う)

これらのパターンを聞いた後「これらの中であなたにとって一番意味があると感じているものはどれですか」と重ねると、その人の行為の裏にある本当の背景を取ることができるかもしれません。

もちろんこのパターンも一例でしかなく、ある程度は汎用できるかもしれませんが、あらゆる場面で活用できるわけではありません。ですが、こういうケースを準備しておくこと・蓄積しておくことがUXリサーチャーとして財産になると思います。


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