文言噺『止まらない一日』

 ある日の休日、私は散歩に行きたかった。

 朝方。身なりを整え、靴を履き、外へでる。
 いつもならばこんな思いつきで行動すると少々バタつくのだが、この日は何一つつまずくことなく滑るように家を出ることが出来た。今思えばこの時から一日の流れが始まったのかもしれない。

 駅までの道をテクテク歩く。朝方は人が少ないから歩いていて気分がいい。人混みはないし、なにより前に歩く人に合わせて歩行スピードを落とす必要がない。とても晴々とした気分だ。

 それからしばらく歩き、交差点へ差し掛かる。この交差点、ちょいと特殊な通行方法なのでうっかり逃すとまぁ~長いこと待たされるのだが…今日は運がいいことにちょうど青。待たされることなく渡ることが出来た。これまたいい気分だ。

 駅に到着。まぁ思いつきで来たものだから当然時刻表なんぞ見ていない。が、ホームに入ったタイミングでお目当ての場所へ行く列車が到着。電車内もガラリとしていて座り放題。ここまで上手くいくと一周回って身構えそうなくらいとんとん拍子に事が進む。

 目的地に到着。早朝に出発したのが功を奏したのかここも人が少ない。広々とした場所に自分一人。ああ…なんて満たされる…天気もいい…まるで夢のようだ…








 …と、ここで目が覚める。時計を見ると朝の5時。
これはもしや…とカーテンを開けてみる。豪雨。初手からつまづく。
ああ、こんなことなら寝ていればよかった…