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小学校3年生までに身につけるデータ処理スキル

カバー写真は、UnsplashNick Fewingsが撮影した写真です。

前回までに、1年生から3年生までの、学習指導要領D領域「データの活用」を読み解いてきました。今回は、市販のドリル教材に掲載されている問題を参照しつつ、3年生までにどんなデータ処理スキルを身につけておくことが求められているのか、まとめておきます。
参照したのは、学研が出版している「毎日のドリル」という問題集です。掲載されている問題を参照しただけで、ここに掲載されている問題を引用するわけではありませんし、この問題集をお勧めしているわけでもありません。

カードに書かれたデータを整理する

1つめのスキルは、カードに書かれたデータを正しく数え上げて表やグラフに整理することです。たとえば、次のようなカードが問題として与えられます。

問題として与えられるカード(イメージ)

これらのカードが、縦横に整列していないところもポイントです。カードを1枚数え、あてはまるカテゴリに正の字の一画を付け足していく、という作業の練習をさせたいのでしょう。こうした機械的な作業を丁寧にできることが、学校でよい成績をとるために必要だとされているのです。

いったん正の字で数え上げた後、数字に直します。数字に直す際に、次のような作業が追加されることがあります。

  1. 度数の少ないカテゴリを「その他」としてまとめる。

  2. 度数の多い順に整列させ、なおかつ「その他」は最後に配置する。

とくに2番目のことは重要ですね。上記の例だと、好きな果物として「りんご」とか「みかん」とかがあるのですが、「その他」という果物があるわけではないからです。この表をもとに、棒グラフを作成します。次のようにできればOKです。

課題の遂行例

描かれている棒グラフを読み取る

2つめのスキルは、描かれている棒グラフを読み取ることです。子のスキルは次のような下位の技能に分けることができます。

  1. 一目盛りがいくらかを読み取る。(上の例では一目盛りが2です。一目盛りがが5とか10とかのグラフも問題として与えられることがあります)

  2. 度数が最も多い(少ない)カテゴリと度数を答える。(上の例では、リンゴが一番多くて12人です。)

  3. 特定の度数であるカテゴリを答える。(好きな人数が8人なのはどれですか? 「みかん」です。みたいな。)

  4. 2つのカテゴリの度数を比較する。(「バナナ」と「ぶどう」では、どちらがどれだけ多いですか。みたいな。)

見てわかるように、単にグラフを読むスキルというよりも、問題文を正しく読み取るスキルが求められているといえます。2の問題はできるのに3の問題で苦労する子どももいるかもしれません。

表から適切なグラフを作成する

3つ目のスキルは、グラフの作成に関して、次のような下位のスキルを含んでいます。

  1. 横軸にカテゴリを書く。(最初の例では、「りんご」「みかん」…などと書きます。)

  2. 縦軸に適切な目盛りを書く。

  3. 棒を描く。(2がクリアできれば、ここは比較的簡単です。)

  4. 表題を書く。(最初の例では「好きな果物調べ」としました。「りんご」や「みかん」の上位概念が「果物」であることを理解している必要があります。ここでは語彙力が求められています。)

問題は2です。グラフを作るべき表が与えられていて、グラフ用紙が与えられていて、一目盛りをいくつにすればよいかを考えなくてはいけないのです。
たとえば次のような表が与えられているとします。そして、縦が10マスのグラフ用紙が与えられているとします。グラフ用紙が「与えられている」ところがポイントです。
「好きな果物調べ」では、最大度数が18ですから、一目盛りを2にすれば、10マスのグラフ用紙で20までの度数を表現できます。一方、「好きな動物調べ」では、最大度数が40ですから、一目盛りを5にして、50までの度数を表現できるようにしないといけません。これは、けっこう難しい思考だと思います。(もちろん、一目盛りを4にしても表現できますが…)

一目盛りをいくつにすればよいか(なぜかグラフ用紙は縦に10マスしかない)

積み上げ・並列の棒グラフを読み書きする

最後に、積み上げや並列の棒グラフの読み書きです。好きな果物調べを男女別に集計すると、左端のような表ができます。これをグラフにするとき、男女の人数を縦に積み上げて表現する方法(中央)と、男女の人数を横に並べて表現する方法(右)があります。
全体の人数を確認するには積み上げが便利ですし、男女の比較には並列が便利です。

積み上げ(中央)、並列(右)の棒グラフ

下位のスキルとしては、

  1. カテゴリごとの人数を読み取る(みかんが好きな人は全部で何人か、等)

  2. 属性別に人数を比較してその結果を答える(好きな人数が男女で同じなのはどの果物か、等)

  3. 男女別の表が与えられて、それを1つの表にまとめ、カテゴリごとの合計や全体の合計を計算する。

  4. 男女を並べた表をもとに、積み上げまたは並列のグラフをつくる。

演習問題

(1)単純集計課題

ある面接授業で、受講者に現在の居住地を答えてもらいました。回答は次のようになりました。集計して、グラフにしてください。

一宮市/名古屋市/名古屋市/岐阜県/三重県/小牧市/春日井市/名古屋市
名古屋市/岐阜県/春日井市/豊田市/名古屋市/一宮市/名古屋市/名古屋市
豊田市/名古屋市/岡崎市/岡崎市/岡崎市/岡崎市/一宮市/名古屋市
岡崎市/みよし市/名古屋市/岡崎市/岡崎市/春日井市/東海市/豊田市
名古屋市/豊田市/岡崎市/岡崎市/豊田市/豊田市/一宮市/春日井市
名古屋市/小牧市/豊田市/春日井市/豊田市/岡崎市/名古屋市/春日井市
豊田市/名古屋市/一宮市/東海市/名古屋市/春日井市/名古屋市/東海市
岡崎市/名古屋市

(2)2次元集計課題

学習センターで、20年度から22年度までの放送大学入学生を対象として交流会を開きました。入学年度別に、参加者に所属コースを尋ねたところ、次のようになりました。
これを1つの表にまとめたうえで、積み上げ棒グラフに表してください。適切な表題もつけてください。

交流会に参加した人は、今、どのコースに所属しているでしょうか?
「20年度」は2020年度に入学した学生であることを意味します。

いずれも、ExcelあるいはRを使って作成してください。少々難易度は上がっていますが、用いるデータ処理のスキルは、基本的には小学校3年生で学習するものです。解答例は示していません。