見出し画像

「ダサいTシャツ」に本気で向き合った夏

大阪でインハウスデザイナーをしているみずかみです。
忙しかった制作会社を退職し、友人の会社で契約社員として働き始めた頃、時間が出来たので前田デザイン室というオンラインサロンに今年4月に入りました。それからサロン内で立ち上がる色んなプロジェクトにマイペースに参加させてもらっています。(最近は転職したばかりなのでそちらに注力しており、もっぱらROM専です)

そんな転職前に参加した一大プロジェクトが雑誌「マエボン」の制作。
フェイスブックで次は雑誌を作ろうという投稿を見た時、これは今まで出たどのプロジェクトよりずっとずっと大変になりそうや...と思いました。またこれから本格的に転職活動をしようと思ってた時期だったので、参加するかどうか、少し悩みました。もちろん雑誌の制作は一人でやるわけではないですが、企画、編集、デザイン、コピー、撮影など、色んな要素が何ページも渡ってあるので、やらなければならないこと、考えなければならないことがたくさんあります。もしかしたら他のメンバーに迷惑をかけるかもしれないことも考えました。

でも面白そうだったので手を挙げました。
参加しなくて後に完成された本を見たら、きっと後悔するだろうと思ったからです。

担当ページ数は16ページ

私がデザインを担当したのは、メンバーのデザインしたダサいTシャツ、通称「ダサT」を紹介するページでした。
なぜこのページ担当に手を挙げたのかというと、前職でアパレル関係の仕事を多くやっていたからです。なのでダサTを使って紙面を作るのは面白そうや....ぐふふと妄想を膨らませていました。
しかし蓋を開けば担当ページ数は16ページ。想定を上回るページ数でした。

何事もポジティブポジティブ!思った直後、これからやるべき段取りのことを考えてると、さっきまでのワクワクから一転、出来るんかこれ...どうしよう...と不安ばかりが募ってきました。

ここから、入稿までの格闘が始まります。

複数の企画でダサTを見せる

まず最初に取りかかったのは16ページをどう見せるか。
単純にダサTを並べるだけでは面白くないし、見せ方を工夫する必要があると考えました。なによりマエボンのコンセプトは「童心」
みんなが制作した童心たっぷりのダサTを眺めながら、どう生かせば面白く見せれるか、子供ではない、30歳の大人である自分ができる表現を考えました。

まず決めたのはダサTの見せ方を変えて複数の企画で分けること。
どのような企画にするか、すぐに草案を出して前田室長と浜田編集長に相談し、ダサTページ全体をファッション誌風に見せ、よりダサく見せるという企画の方向性がざっくりと決まりました。
そこから内容を詰めて、下記の5つの企画を暫定。

・夏の彼女とダサTと
ダサTを好んで着る彼女とデートしている設定の企画
・2018ダサTコーデ決定版
おすすめのダサTを使ったコーディネートの紹介
・ダサTスナップ
ダサTを着たかっこいい外人のスナップ
・サンドT特集
メンバーのサカガミさん作 色んなサンドイッチのダサT特集
・ダサTストリート
紙面で紹介したダサTを購入できるネットショップを紹介するページ

さらに人手が足りないためヘルプを募集し、同じく前デメンバーのかもさん関戸さんに半分の8ページを委ねました。これはもう正直めちゃくちゃ助かりました。2人は他のページも担当している(関戸さんはアートディレクター)のに手を挙げてくれたんです。神ですよね。誰も手を挙げなかったら腹をくくってすべてをやる予定でしたが、多分途中で悲鳴を上げてたと思います。笑

こうしてファッション誌風という方向性に合わせて、ラフを制作。
ファッション誌と一口に言っても様々な雑誌がありますが、「夏の彼女とダサTと」という企画ではカジュアル誌の代表格であるnon-noを参考に、分かりやすく、テイストの偏らない表現を目指しました。

そしてこの紙面の主役はなによりも「ダサT」
モデルの顔を思い切ってトリミングし、ダサTに自然と目が行くようにレイアウトしました。

よりファッション誌に近づけるためにロケ撮影を決行

ラフを元にデザインを詰めていくにあたり、一番悩んだのがロケ撮影をするかどうかでした。平日は会社で時間も予算もあまりない。カメラマンは誰がやるのか。モデルはどこで手配するのか。一番楽なフリー素材に頼るかどうか...。

ギリギリまで悩んだ結果、本物のファッション誌により近づけたい、童心を本気で表現したい!そう思い、ロケ撮影を決行することにしました。
また私自身、普段の仕事で撮影ディレクションが苦手というコンプレックスがあり、この機会に少しでも克服しようと思ったのです。

ロケ場所は一番最初に浮かんだ場所であった、大阪、中之島。
都会でありながら川と公園があり、夏らしい抜け感のある写真が撮れると思ったからです。それとカフェでの撮影も想定していたため、すぐ近くにいい感じのカフェがあるということも決め手の1つでした。

そしてモデルは経験のある大学時代の私の友達。カメラマンは前デメンバーのはちぼーくん。お会いした時に彼の写真を見させていただき、すぐにお願いしてスケジュールをおさえました。
そうして諸々の手配やスケジュールを決め、お盆に撮影をすることに。

暑い暑い暑い...とにかく暑すぎる撮影

当日スムーズに撮影を行うため、カメラマンはちぼーくん、モデル代役に同じく前デメンバーの松本さんに休日の朝早くから中之島に来ていただき、ロケハンを本番前に行いました。

(余談ですが、この日の気温は38度。湿度も高く、たった1時間半のロケハンでへとへと&真っ黒になりました...。)

このロケハンで、本番時に撮影する場所を大まかに決めました。
また日が昇ると光の調子が変わり、表現にも影響がでるため、集合時間も一時間早めることに。あと暑い。

そして2週間後、本番撮影。

(余談ですが、この日も気温は38度。湿度も高く、持参した大きめの保冷剤が撮影前に全部溶けました...。)

本番では撮影補助に前デ運営のけーらんさんにも来ていただきました。
この時、コーディネートの小物として持ってくるのを忘れていたリュックをけーらんさんが持っていたので、急遽借りることに。ラッキーでした!

モデルの友達にはその場で着替えてもらいながら、太陽が昇りきる前にサクサクと撮影を進めます。そして最後のカットであるカフェでの撮影。
11時オープンと同時にお店に入り、撮影許可をもらう時にあらかじめ取っておいた席で最後の撮影を行いました。

やっっっっと終わった...

一番不安だった撮影を乗り越え、ひとつの山を越えた気分でした。

コピーの神、爆誕

こうして少しずつ各ページのラフが出来上がり、次はダサTの担当ライターであるこっとんさんに向けて、紙面のコピーについて浜田編集長とzoomで会議を行うことに。
各企画の説明をするのですが、大まかな方向性はあるものの、細かい設定をうまく伝えられず、言葉に詰まってしまいます。しかしこっとんさんの汲み取り力、対応力は凄まじく、ダサTを見せてその場で大体のコピーを大喜利感覚で決めてくれたのです。

その後、上がってきたコピーはどれも面白く、そうそうこれこれ!こういうのを求めてた!!と1人興奮しました。
ダサTページでは、ビジュアルとコピーの両方でお互いを引き立てあう構成にしているため、コピーはかなり大事な要素でした。なのでどうなるのか実はかなり不安でしたが、完全に杞憂でした。

コピーを見た前デメンバーも絶賛の嵐。隠れていた才能の発掘でした。

入稿直前、新しい企画に変更

順調に進んでいた制作でしたが、新たな問題が浮上します。
4回ある入稿のうち2回目が終わったところで、企画の一つであるサンドT特集がダサくないという指摘がありました。
しかしもう3回目の入稿が翌週にせまっており、時間がありません。デザインを何度も修正しましたが、どうやってもおしゃれになってしまう...。

そんな時、あるフリー素材に出会いました。

これや!これで新しい企画を作るしかない!!

マエボンの企画からメンバーのダサTを見まくっていたので、もう頭の中は熟しきってました。このダサTハンターは魅力的なダサTを数多く制作していた横山さんしかいない。瞬時にそう思い、横山さんの妄想インタビュー企画を入れることに。
この時次の入稿が二日後に迫ってきていましたが、こっとんさんのコピーを書く速さと質を信頼しきっていたので、思い切ってこの企画に変更することにしました。(実際1日でコピーを上げてもらえました)

それから各紙面のダサくないダサTをよりダサいものに変更したりと、細かいブラッシュアップを行い、無事に最終入稿を終えました。

取り戻した情熱

振り返ると制作中は本当に苦しんだし悩みました。
最終着地点が思い描けず、ダサTを見ながら思考停止した日は何日もありました。思いっきり失敗するかもしれない。何度も思いました。
ロケハンの時は、不安な気持ちを松本さんに二時間近く吐露してしまいました。(その節は申し訳ございません!!)
でも制作しながら思ったんです。

熱いサウナの後の水風呂って気持ちいいじゃないですか。

マエボンが完成したら、きっと気持ちよくなる。
これまでの苦悩は、その気持ち良さのためにあると信じました。
(実際、完成された時は感無量でした)

忙しかった制作会社の頃、仕事の仕方が刹那的になってきて、デザイナーとしての危機感を覚えました。前田デザイン室に入ってマエボンを制作し、創作に対する情熱がまだ自分にはあったんだと、再確認させてもらいました。この雑誌に関われたことに本当に感謝しています。

ダサT特集の二つの企画について今回書かせていただきましたが、他の企画はもちろん、全ページ見ていただきたいです。

前田デザイン室の情熱が詰まっています。

クラファンのほかに、東京は青山ブックセンター、銀座蔦屋で売られています。(大阪はとある秘密のバーに置かれているようです…)
他の実店舗でも販売することが決定しているので、ぜひ公式notetwitterもチェックしてください!

ではでは〜


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?