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編集長の推薦図書「炎上とクチコミの経済学」 #今週のマーケ本

皆さんいかがお過ごしでしょうか。靴磨くマーケターの小東です。

気付けば8週連続、どうにか本を紹介できました。最初の頃はボツ本を引いたときの穴埋めや、TOP画像の選定など苦労しました。

工夫した甲斐あって少しずつ読者さんが増えてくれて嬉しく思います。

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noteで書いてTwitterで発表しているのですが、私のTwitterにはマーケティング界隈の人が集まっているので相性が良いです。

特に話題になっている本だと反応していただけやすいため「これがマーケティング勉強クラスタか~」と体感します。

こうしたクラスタ(集団)は、クチコミを発生させてブームのもとになったり、ネガティブな方向では「炎上」の温床になったりします。

今回はそうした領域の本「炎上とクチコミの経済学(山口真一)」をご紹介します。

※URLが読み込まれなかったので、関連ページを。

SNSやクチコミサイトなどソーシャルメディアは消費の押し上げ効果が年間1兆円あり企業のマーケティングには欠かせない存在。

その一方、企業の炎上騒ぎは年間1000件以上発生。また増加傾向にあります。炎上リスクを理解して、いかに上手く回避するかが重要になるわけです。


■本の概要やポイント

本のポイントを私なりにまとめるとこうなります。

・ ソーシャルアカウント運用の価値は大きいものの炎上も発生する昨今、炎上リスクを理解していかに上手く回避するかが重要

・人は見たい・知りたい情報だけを集めて偏った集団になりがち

・中庸な立場があっても、極端な主張が目立って見えがち

・少数の炎上ユーザーが炎上投稿を大量にしているために、メジャーな意見に受け取られがち

今回は、そもそも炎上を起こすユーザーの属性や心理にフォーカスして、みていきます。


■ポイント:人は見たい・知りたい情報だけを集めて偏った集団になりがち

・人は同意見の情報を取りに行き極端化する傾向がある(集団極性化)
・そうしたネット上の集団化を「サイバーカスケード」という
・アルゴリズムにより偏った情報が集まりやすい(フィルターバブル)

真偽は分かりませんが先の米国大統領選のトランプ氏当選には、こうしたネット世論の操作が実は貢献していた?なんて説も聞きます。それも同陣営がこうした人の集団心理を深く理解していたからでしょう。

企業や個人のマーケティングにおいても同じことが起こっているはず。例えばオンラインサロン(私は現在「田端大学」に入っております)。

どっぷり漬かった後に別コミュニティに「はしご」してみると良く分かりますが、集まった人たちの嗜好の偏りとSNSのアルゴリズムによって流通する話題がだいぶ固定化するんです。

ただ、アカウントを切り替えれば違う常識の世界に。インターネットには「世界の中心」が何個もある感覚を大事にしたいし、どの「世界の中心」に対して働きかけるかを我々マーケターは考えていく必要があります。


■ポイント:中庸な立場があっても、極端な主張が目立って見えがち

・賛成派と反対派集団のあいだに「中間意見」集団のボリュームが多いケースがあったとする
・その中間意見の集団には発信するインセンティブがなく、極端な集団の議論に不意に巻き込まれたくない心理が働く
・結果として、賛成派と反対派の極端な意見がぶつかり合い目立って見えるため、最もボリュームのある中間意見は無いように見えてしまう

データとともに紹介されていた上記の現象は、個人的にとても興味深かったです。リアルでも起こり得るし、Webの世界だとますます起こりそうに思います。

突然ですが昔ばなしをします。私は数年前、町田にある私立の大学付属高校に通っていました。地元の進学校の受験に落っこちたためです。

そこでは中学から内部進学する「内進生」と有名校に落ちた「外進生」が混ぜこぜにされます。内進生はエスカレーターで大学進学したく、外進生は大学受験でリベンジしたいと燃え上がっています。

私は後者の受験組でした。大学進学だけが全てと思い人間関係を遮断していました(笑)。特に前者のエスカレーター進学マインドに毒されたくなかったからです。

そうなると受験組が仲間で、エスカレーター進学組が敵。「お前はどっちだ?」というレンズで人を見がちでした。でも現実は違いますよね? 例えば下記。

・ギターが好きでコンクールに出場し、そのまま専門学校から推薦が来る人
・受験したかったけど、病でどうしても付属大に進学せざるを得なかった人

こういう、自分の熱中している領域以外の(中間的な)人が想像以上にもっと居たと思います。自分の所属意識はほどほどに、社会を広く見る重要性を再確認しました。


■ポイント:少数の炎上ユーザーが炎上投稿を大量にしているために、メジャーな意見に受け取られがち

・炎上に参加するユーザーはインターネットユーザーの0.5~1%で、複数回投稿者はさらにごく一部
・またソーシャル上にクチコミ書き込みしたことがある人は全ネットユーザーの46%(過半数以下)で上位5%から一気に発信数が増える(べき分布)
・ちなみに高学歴かつ社会的地位の
比較的高い、正義感の強い人が炎上に参加する傾向あり

これは有り体にいってしまいますと、私ふくめ、ITに慣れ親しんで毎日Twitterやブログをやっている人が既にマイナーであるということじゃないでしょうか。

それなのにWebの書き込みがリアルであればあるほど、目に見えない「みんな」の意見を信じてしまう。

企業のキャンペーンが炎上被害に遭うことがたまにありますが、ノイジーマイノリティが騒いでいるだけのケースがしばしば見受けられます。その背後にはもっと大勢のサイレントマジョリティがいるはず。

本書に紹介されていた事例ですが「本を読みながら歩いている二宮金次郎は危険だから、座らせた像に作り直せ」という主張に屈した学校があったそうです。ただその意見は23%で、そう思わない意見は64%もあったんです。

そもそも炎上しない情報発信にこだわるのは大前提ですが、炎上を気にし過ぎないスタンスも必要ではと常々思います。


■まとめ

参考になりましたか? 本書の内容に対して私の見解です。

・人は同じ意見の人を探して群れたがるし、周りからは極端な意見が目立ちがちである 

・ただし、インターネットでは炎上やクチコミする積極的な利用者は全体のうちごくわずかである。それがメジャーではない

・そのため、企業も個人もおおげさに受け取りすぎず、冷静に観察して対応すべきだ(※言うまでもなく、そもそも炎上しない運用がベストである)

私もSNS運用のリスクについて聞かれることが多いので、よくこの手の話をします。

同書はデータをもとに丁寧に解説しているので、説得力が増すから引用できて嬉しい。

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今週は中古で買った英国靴のグレンソンを磨きました。キャップトゥはガンガン光らせて良いかなと個人的に思っています。


■ゆるく、ランチ・お茶できれば


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