見出し画像

枯れないバラ

30年くらい前のことです。

当時、未婚の女性ばかり150人近くいる職場で働いていました。25歳を過ぎた頃からあの人もこの人もなんとあの人までいやもうどうしよう圧力のすごいこと、というふうに毎月結婚式があり、時には2ヶ月続けてひと月に2回披露宴という時もありました。
私はご祝儀のために働いているのかもしれないと思っていたある日、海辺のホテルで披露宴。花嫁花婿が出口で小さなお菓子と真っ赤な一本のバラの花を帰る人たちに配っています。

普段はジャージに砂だらけになることもある仕事だったので、ハレの日である人様の結婚式は、今思い出すと穴に入りたいくらい気合が入った化粧に装飾過多のドレスを着、慣れないヒールで靴擦れ痛いけれど期待で胸が高鳴るから平気、という頃でした。

隔世の感があるねえ。

それはともかく、ここで私は初めて植物には何かあるのかもしれないという経験をしました。もらったバラの花が2ヶ月咲いていたのです。

帰ってきて一輪挿しにさして水も変えずに忘れて1週間。そういえばピンピンしたままだな。2週間目、すご〜いきれいなまま。そのうち全く枯れないので気になるようになり毎日見て、水も替えるようになりました。きれいだねーと葉っぱも触るようになりました。するとますますツヤツヤしているような…。2ヶ月後さすがに花はハサミで切りましたが、まだ葉っぱが生き生きしているので家族が挿木しました。挿木は見事に育ち、その後10年近く深紅の大きな花をパーゴラいっぱい咲かせました。

その頃から、美味しくなあれと言えばお茶は美味しくなること、かわいいねと言えば金魚も芋虫もヒヨドリもなつくこと、壊れかけた洗濯機によろしく頼みますよと言うと長持ちしてくれること。
人間でなくても生きていてもいなくても心は通じる時があるんだなと
こっそり思ったものです。

植物にも物にも心がある。かもしれないし、自分の心が鏡のように跳ね返ってきているのかもしれない。親しみが湧く、大切にする、大事にする、尊重する、話しかける。
すると相手も返してくれるときもある。そんな希望はバラの花が最初に教えてくれました。

昔、『秘密のアッコちゃん』というテレビアニメがありました。たしかアッコちゃんは割れた鏡を捨てないで大事に土に埋めたんだっけ?するとそのお礼に鏡が魔法を使えるようにしてくれた話だったような…。ロミパスロミパスルルルルル〜♫
四半世紀前でよく覚えていませんが、そういうことです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?