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イベント担当者がまず決めることを5,000字で説明します


こんにちは。おーいわさんです。皆様いかがお過ごしでしょうか。暑かったり寒かったり雨が降ったり花粉が飛んだり、忙しい毎日ですよね。

ここ数日で最大のトピックスはやはり東京2020大会の延期について。東京ビッグサイトのメディアセンターは、幕張メッセの競技会場はどうするんでしょう.......。
嗚呼、やんぬる哉。イベント業界は、展示会産業はどうなってしまうのでしょう。

さて!

そんな混迷の渦中にある「イベント」に携わる皆様。イベントを行う際、必ずと言ってもいいほど直面するのが「何をコンセプトに開催(出展)するの?」という問いではないでしょうか。
「コンセプト」と一言でまとめられても、よく分かりませんよね。そもそも日本語訳が「概念」ですから、漠然としてしまうのも無理からぬことです。

たぶん皆さんの周りでも
「このイベントのコンセプトは“調和”です」とか、
「白と青を基調に抜け感があって開放的なブースをコンセプトに出展します」とか、
「ブレストで次回のプライベートショーのコンセプトをフィックスしました。我々のコアコンピタンスをトゥギャザーすることでシナジーを生み出し、ペルソナでセグメントされたポジショニングのステークホルダーにファクトベースのナレッジとバリューをメイクセンスさせることにフルコミットします。バジェットはバッファを見て3,000万円でチームのオーソライズは得ています。アグリー?」とか、

まぁこんな感じの「コンセプト」を耳にしているのではないでしょうか。
何と言うか、よく分かんないですよね。僕にも分かりません。やんぬる哉!

と、言うことで。
本日はイベントを成功に導くために決めねばならぬことについてお話いたします。規模の大小や対象のBかCか、主催側か出展側か、といった属性にとらわれず使えるようになっています。是非とも、ご自分の扱うイベントに置き換えてみてください。


「コンセプト」を日本語訳する

先ずは言葉から。ぼんやりした「コンセプト=概念」では実務に落とし込めませんからね。

僕はこれを 【開催指針】 と定義しました。

担当者が初めに考えるのは開催指針です!

つい会場とか演者(講師)とか造作とか集客とかデザインとかに気を取られてしまうかもしれませんが、思いついたままに決めていくのは、
ダメ。ゼッタイ。
個別最適×いっぱいに手足を拘束されて後々どうにもならなくなります。


開催指針って何?

一言でまとめると、全関係者の共通言語になるゴールです。8つの指針で成り立っています。

これを決めるだけで
「何をすればいいのか分からない」
「何を基準に考えればいいのか分からない」
という関係者の苦悩がきれいさっぱり解消されます!素敵!

① 意義目標
② 顧客ターゲティング
③ 成果目標
④ 行動目標
⑤ 組織体制
⑥ 開催テーマ(※公開)
⑦ キャッチコピー(※公開)
⑧ 展示テーマ(※公開)

この8つが開催指針です。イベントの担当者になったら、一丁目一番地で決めてください。
順番は①②が最上流工程、③④⑤と⑥⑦⑧の2ブロックは並行して進めていくとスムーズです。

ちなみに。ウェブサイトやアプリ、チラシ、メルマガなどで一般公開しプロモーションに活用するのは⑥⑦⑧です。

なので一般には非公開項目である①から⑤までは必ずしも綺麗な言葉でなくても構いません。
しかし、全関係者の共通言語として誤解を招かない表現が求められるのでご注意ください。

なお、ここからはペルソナサンプルで架空の会社・イベントを例文に挙げながらご説明していきます。

会社名 :株式会社タットエヴァ
業  種:キッチンウェア(調理器具など)の専門商社
企業理念:食卓を豊かに。人生を豊かに。
イベント:自社イベントとして「タットエヴァ Exhibition 2020 Autumn&Winter」を企画


それぞれの意味と例文

① 意義目標

何のためにイベントを開催するのか?への解であり、イベントでなければ実現できないこと。
そのイベントに特化した中短期的な目標なので、会社であればマーケティング施策全体の目的に紐づいたものになります。

例文:
キッチンウェアの専門商社として、サステナブル社会の構築に貢献する。
いま、消費者に届けたい製品・技術・サービスを国内外から仕入れ、ライフスタイルを提案する。

② 顧客ターゲティング

意義目標を届ける相手です。
ここで注意して欲しいのは、必ずしもイベントの来場者そのものを示さない点です。イベントに来場するのはユーザー業界で、メッセージを伝えたいのはその向こうの消費者。というBtoBforCのケースもありますよね。

例文:
1)小売流通業界および外食産業
  全国の百貨店、専門店、CVS、EC店舗など小売流通業界や、
  レストランなど外食産業に対して、
  国内外から仕入れたキッチンウェアの紹介、
  および売り場づくりを提案する。
2)消費者
  サステナブル社会の実現へ向けて
  キッチンウェアの果たす役割を発信および宣言。
  消費者への啓発を図ると同時に、
  食品ロスや海洋プラスチックごみなど食卓に関わる課題への
  考えを明示する。
3)キッチンに携わる一人ひとり
  上記に加え、農産物やキッチンウェアの生産者、
  プロユーザー、教育機関、内装デザインなど、
  キッチン(食)に携わる一人ひとりを顧客とする。

③ 成果目標

何がどうなったらイベントは成功なのか?への解。
KGI・KPIと言った方が分かりやすいかもしれませんね。来場者数だったり、成約数だったり、メディア露出だったり、内容は様々。数値や形になるものなど、基本的には目に見える指標で制定することが重要です。

例文:
(KGI)
来場者数●●人、参加メーカー(出展者)数●●社、会期中商談成約●●万円

(KPI)
百貨店の来場●●人、専門店の来場●●人、VIP来場者●●人、
包丁商談成約●●万円、コーヒーメーカー商談成約●●万円、
専門紙の取材●●件、SNSへのUGC●●件

④ 行動目標

成果目標を実現するために必要と想定される行動および施策です。
「担当部署全員でSWOT分析」「企画展示コーナー」「同業他社と連携」等々、成果目標に紐づけて行動を決めていきます。これで「何のためにやるのか分からない」を回避できますね!

例文:
百貨店担当者との事前商談アポ●●件、専門店担当者との事前商談アポ●●件、LPサイトとDM・E-Mailを連携した来場勧誘、有名バリスタの実演ステージ、体験コーナー

⑤ 組織体制

行動目標を実行および検証、そして実現するうえで必要な人員や組織です。
会場や時期、出演者(講師)、連動するマーケティングツールなんかもここに含まれます。
いきなりこれらを決めようと考えてしまいがちかもですが、ダメ。ゼッタイ。です。
「虎ノ門ヒルズフォーラムがいい」「ベルサール秋葉原がいい」との希望はあるかもしれませんが、先ずは①から④までを決めてから、色々なものを手配していきましょう。

例文:
全体統括A部長、事務局担当B係長、アドバイザーC課長、制作統括D社デザイナーE氏、百貨店営業●●名(担当・F部長)、専門店営業●●名(担当・G部長)、会場Hホール(●●㎡・●●駅徒歩●●分)、テーブルコーディネートI氏・J氏、セミナー講師K氏・L氏、バリスタN氏、料理研究家M氏、インスタグラマーO氏、司会P氏、会場施工Q社、映像制作R社、PR会社S社、フォトグラファーT氏...etc

⑥ 開催テーマ(公開)

「意義目標」「顧客ターゲティング」を基に分かりやすく文章化して、対外的に公開する項目です。イベントの価値は何なのか、どういったものが見られるのか、体験できるのか、を明らかに。

例文:
私たちの生活に欠かすことのできない食。
“タットエヴァ Exhibition 2020 Autumn&Winter”では、
食卓から地球を豊かにする3つのチカラを提案します。
1) ●●●● ~●●を●●する●●の魅力~
2) ●●●● ~●●に●●する●●の影響力~
3) ●●●● ~●●は●●する●●の活力~
持続可能な社会の実現に向けた第一歩は、我が家の食卓から。

⑦ キャッチコピー(公開)

開催テーマを更にブレイクダウンして、インパクトのある言葉で表現したものです。
世の中のイベントが「開催テーマ」と謳っているものは、大抵これですね。これだけ聞いても深く内容が理解できるわけではないけど、心惹かれる言葉です。
もののけ姫「生きろ。」や松屋「みんなの食卓でありたい」、大成建設「地図に残る仕事。」あたりが有名な例ですね。
ここで注意していただきたいのは、キャッチコピーは「(会場に・ブースに)来てもらう」ための言葉だということです。
言葉の綺麗さや力強さはもちろん重要です。しかしそれ以上に大切なのはUX基点でのコピーライティング。読み手がどう感じるか、を考えましょう!

例文:
食卓を変える。地球も変わる。

⑧ 展示テーマ(公開)

意義目標を実体化した空間づくりを実現するためのテーマです。
出展者や講師など、参加者に訴求してもらうポイントですね。このイベントに来れば、具体的にどんな製品が見られるのか?話が聞けるのか?への解。

出展検討者にとっては、自社のマーケティング施策とイベントが合致するか判断する基準になるもの。
来場検討者にとっては、キャッチコピーを見た後で訪問価値をより現実的に検討するための基準です。

例文:
1)新しい価値
  キッチンに新しい価値を創出する製品・技術・サービス
2)伝統
  時代を超えた技術や想いを届ける製品・技術・サービス
3)環境
  地球の限りある資源を有効活用する製品・技術・サービス
4)便利
  誰にとってもわかりやすい使いやすさを追求した製品・技術・サービス
5)楽しさ
  調理や食事の楽しみを演出する製品・技術・サービス

以上です!
これら8つの指針がしっかり決まっていれば、準備を進めていても「ブレる」ことがなくなりますね!


「意義目標」「顧客ターゲティング」を決めるために

意味と例文でお分かりいただけたかもしれませんが、何よりも「意義目標」「顧客ターゲティング」が決まらないと以降が何も決まりません。逆にこの2つが決まれば、以降は肉付けしていけば比較的スムーズに策定できる、とも言えます。

では、最上流工程の2指針はどう決めるのか?
これは「そのイベントが会社(事業/製品)にとってどのような意味を持つのか」から組み立てていくものになります。
下記のツリーをご覧ください。

“イベントの位置付け”ツリー


会社組織の構成はそれぞれ違いがありますが、おおまかな概念としては似たような構造になっているかと思います。


まとめ

イベント(展示会)は、会社のあるひとつの事業(製品)をマーケティングする施策の中の選択肢です。
先ほどのペルソナサンプル「株式会社タットエヴァ」で言えば、

・事業目的/製品目的
フランスの伝統ある工房が製造している素晴らしいフライパンがある。
性能は●●で見た目も美しく、高級志向のレストランや富裕層向けの百貨店で需要が見込まれる。
仕入れて日本の小売に販売したい。

・部門目的/4P
来年の販売開始に向けて価格設定やニーズの調査が急務。
日本の市場特性にあわせたサイズや重さを把握して開発に乗せる必要もある。

・媒体目的
今年は展示会への参考出品などアナログチャネルで感触を掴みつつ、バイヤーへの認知を広げよう。
そこから1年間かけて個別セミナーやDMで興味を高める。
そして来年の展示会で一気に受注を獲得。
さらにデジタルチャネルやマスと一体化したキャンペーンを大々的に実施。
消費者への購買行動を認知から興味関心まで引き上げ、販売開始タイミングでOOHを活用し販売に繋げよう。

と、まぁ、こんな感じで川上から順に戦略が決まってきますね。展示会と、それ以外のプロモーションの位置付けや役割も明確です。
このフランス製フライパンに対して展示会の位置付けは、

・展示会は2回(2年間)必要。
・1回目は参考出品なのでバイヤーのワクワク感を刺激する。
・2回目は受注に直結させるので、フライパンを前面に押し出す。
 使い方や利点など実践的に。

が大きなポイントですね。

と言うことは、少なくとも2回目(来年)の展示会はフライパンの持つメッセージと合致するような開催テーマやキャッチコピーを掲げて開催するのが望ましいでしょう。
会場は高級感やヨーロッパの歴史を伝えやすい立地や装飾が好ましいですし、実演ステージに本場の一流シェフを呼べば集客やメディア映えも期待できます。

つまり。
イベントの開催指針(コンセプト)を定めるには、会社の事業全体から考え始めなければいけません。
オンライン・オフラインの垣根を取っ払ったうえでそれぞれの位置付けや役割を確認し、統一されたメッセージ(ストーリー)が必要なのです!


いかがでしたでしょうか。今回のお話はここまでです。長い時間ご清聴いただき、ありがとうございました。
まだまだ勉強途中の身ですので、不十分な点が多々あるかと思います。
是非ともご指摘いただきながらブラッシュアップしていきまして、これがイベントに携わる皆様にとって少しでも助けになることができれば幸いです。

それでは、またの機会にお会いしましょう。でわでわ。おーいわさんでした。


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